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東京高裁で「同性同士の婚姻を認めないのは違憲」──アジアのアクティビストらに訊く各国の実情

  • 2024.11.13

2019年2月14日に始まった「結婚の自由をすべての人に」訴訟。それから6年弱が経過した2024年10月31日、東京高裁は同性同士の結婚を認めないことは憲法14条1項と24条2項に違反するとし、違憲判決を下した。

現行の憲法制定当時は、同性カップルの結婚の可否が議論にも登っていなかったとし、異性愛規範が浸透していた過去と、差別は許されないとされる現在の社会通念の違いを強調。さらに、同性カップルの結婚について否定的な考えを持つ人は減少しつつあること、諸外国の動向や日本が批准している国際人権規約、パートナーシップ制度の利用数などに触れ、国会に制度の構築を求めたという。また、異性間でも生殖の可否が結婚の要件になっていないため、それは同性間にも当てはまらないとした。

原告団からは、「画期的かつ歴史的な判決だった」「笑顔があふれる」などと歓喜の声が上がり、これによって法改正が進むことが願われている。

今回の判決に際し、タイと韓国から結婚の平等を求めて活動するアクティビストらが来日。タイでは2023年に同性婚を合法化するための法案を可決、2025年1月に施行されるほか、韓国でも10月に同性婚訴訟が始まるなど、アジア各国でも変革が起きつつある。各国の現状と今後、そしてどのようにアジアは連帯していけるのか、それぞれ話を訊いた。

法的な保障が変化を生む──ショドラ・きょうか(タイ)

Photo_ Annie Noelker for TIME
Photo: Annie Noelker for TIME

タイのクィア活動家・作家のショドラきょうかは、前タイ上下院結婚の平等検討委員会のメンバー。現在はバンコク・プライドに参画し、2024年米TIME誌の「未来のヒーロー100人」にも選出された。

今回の判決について、「日本でも少しずつ進歩が見えてきていて、今回違憲判決が出たことは貴重な瞬間だった。個人的にもすごくうれしかった」と笑みを浮かべる。

さらに、2025年1月に同性婚の法制化が施行されるタイでの現状について、「ほかのアジアの国と比較すると、タイの社会で同性愛者は認められているほうだと思う。一方で、学校や会社などの組織では未だに差別がある」と話す。「法的な保障のない状況が続き、当事者たちは家族、組織、そして法的にも居場所がなかった。一方で、タイは“ゲイ・パラダイス”と宣伝されていて、そこにはギャップがありました」と率直に語った。

同時に、「法の変化とともに、それも変わってくるのではないか」と期待を寄せる。「同性婚に関する話が始まったのが約23年前。コミュニティとして闘ってきた結果、やっと同性婚が実現するので、これを足掛かりに社会全体を変えていきたい」と希望的な声も聞かれた。タイでは特に若者を中心に、結婚の平等を求める動きがあったという。

政治家に届けるには、ここに当事者がいると表明することが重要。当事者の生きるストーリーを届けていくことに注力し、強制するのではなく人々を運動に誘う形で声を大きくしていきたい」と今後についても述べた。

「“時間がない”という言葉が最も印象に残った」──イ・ホリム(韓国)

「マリッジ・イコーリティ・コリア」エグゼグティブ・ディレクターとして、10年前に行われた韓国初の「結婚の平等」訴訟から、長年尽力を続けるイ・ホリム。昨年には「マリッジフォーオールコリア」を立ち上げるなど、韓国における活動の第一人者だ。

ホリムは東京高裁での判決について、「札幌高裁での違憲判決を見守っていた日を思い出します。今日は直接、日本の裁判所でみなさんがよろこぶ様子を見られてうれしかったです。そして今回、“時間がない”という言葉が印象に残りました。韓国でも同様の訴訟が始まりました。結果が出るまで時間がかかりすぎないよう、韓国でも日本でもいい結末が訪れることを願います」と、判決前に亡くなった原告の存在や原告団の高齢化に想いを馳せつつ語った。さらに、「韓国で運動が始まってから数十年が経過し、社会に変革をもたらしつつも法的な変化はない状況です。そこを訴訟を通じて変えていきたい」と決意の表情。

韓国では保守クリスチャンの存在を大きな理由とし、当事者らが自分らしく生きるのが困難な状況だという。一方で、若い世代を中心に変化も。その一例として、テレビや映像作品などでの表象は増加傾向にあり、以前は“滑稽”で“悲しい”存在として描かれていたが、その雰囲気も変わりつつあるという。韓国の社会、そして文化は確実に進歩を遂げているにもかかわらず、法的に享受できるものがない。そんななかで権利を勝ち取るために、今回10年ぶりに「結婚の平等」訴訟を再開することにしたそうだ。

「10年前に同様の訴訟を開始した際には、社会的な条件が整っておらず訴訟を取り止めざるを得なかった」「未だに反発は厳しいが、1つ1つ権利を勝ち取っていると時間がかかるので、結婚の権利を勝ち取ることにした」とし、2024年10月に11組のカップルを原告に訴訟を開始。「区役所では、不受理なのに『おめでとうございます』と声をかけてもらえたんです」という実体験も語られ、そこからは社会と法律が大きく乖離してきている現実も垣間見えた。

みんなで勝つまで生き残ること──ソ・サング&キム・ヨンミン(韓国)

韓国での「結婚の自由をすべての人に」訴訟、原告のソ・サングとキム・ヨンミン。これまでに同性カップルのパートナーに健康保険の被保険者資格を認めるよう求める訴訟も行うなど、運動の中核となって活動をしてきている。この訴訟で最高裁は、「『事実上婚姻関係にある人』と違いはない」として、権利を認めた。

今回の判決についてサングは、「朝の判決から夜の記者会見まで、見届けました。私たちが勝訴をしたとき同様、たくさんの人々が集まり、メディアが取材をしてくれたことに力を感じます。そして私も“時間がない”という言葉が記憶に残りました。時間がないという切迫さを韓国の政治家は理解していない」とその緊急性に警笛を鳴らす。

そして、「どこの国にも先頭に立って闘い続けている人がいて、それを支えるコミュニティがあります。私たちの準備はできていて、あとは政治が変わるだけ。日本、タイ、そして韓国でも、マイノリティ当事者と人権を大切にする人々にとっては毎日が闘いであり、なんとかサバイブしている状況です。私たちは勝利に向かっています、みんなで勝つまで生き残りましょう」とコミュニティを勇気づけた。

ヨンミンは、「まずは、おめでとうございます。アクティビスト、そして原告の方がどれほど大変か、私たちも経験からわかります。今日は世界のすべてのマイノリティにとって、力になった日でした。韓国の憲法にも日本同様『両性』という言葉が入っていて、今回の判決は韓国での訴訟においてもいい影響を与えるものだったと思います」と韓国と日本の共通点と双方が与え合う影響に言及。

そして原告となって訴えた健康保険の被保険者資格について、「実は公団への申請当初、同性カップルでも事実婚であれば被保険者の資格があるとして受理されたんです。しかしそれについてメディアで話すと資格を却下されました」と当時を振り返る。それを受け、訴訟を起こしたそうだ。

結果的に訴えが認められた際の次の判決文も紹介。「何人とも、いかなる関係、いかなる面においてもマイノリティでありうる。マイノリティに属すということはマジョリティと異なることであるに過ぎず、それそのもので間違っていたりするものではない。多数決の原則に支配される社会であるが、そうであればあるほどマイノリティの権利についての認識とこれを保護するための努力が必要であり、これは人権の最後の砦である裁判所の最も大きな仕事である」

これを最高裁が述べたことは、韓国での大きな発展だったと語り、最後に、「3つの国のこれまでを見ていると、結婚の平等は止められないものであって私たちは勝つしかないのだと思います。勝ってきたし勝っている、そしてこれからも勝ち続けていく。結婚の平等が実現したその日にまたお会いしましょう」と締め括った。

世論の70%以上が賛成し、世界では37の国と地域で可能であるにもかかわらず、日本での同性婚は未だに認められていない。現在アジアで同性婚が可能なのが台湾のみ、それにタイが続く見込みだ。当然の権利である結婚の平等が日本を含めアジア各国で認められるよう、連帯によるバトンを受け取りながら小さな勝利を積み重ねていきたい。

URL/https://www.marriageforall.jp/

Photo: Courtesy of Marriage for All Japan Text: Nanami Kobayashi

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