ステレオタイプも打破。ゼンデイヤ＆トム・ホランドがカップルとして支持される理由

今月、UK版『VOGUE』のソーシャルメディアで興味深いことが起きた。トム・ホランドがプロデュースするノンアルコールビールブランド、ビーロー（BERO）のローンチイベントにリンクコーデで出席したゼンデイヤとホランドの2ショットの投稿が、瞬く間に『VOGUE』史上最も「いいね」がついたポストになったのだ。どんなセレブの独占取材よりも反響を呼んだのは、傍から見ても波長が合うことがわかる2人をカップルとして推す人が多いからだろう。トレンドカラーのバーガンディーで揃えたコーデを評価するコメントが圧倒的に目立ったが、その次に多かったのが2人の身長差をものともしない姿勢を絶賛するコメントだった。

ゼンデイヤと言えば、クリスチャン ルブタン（CHRISTIAN LOUBOUTIN）の「So Kate」パンプスだ。14歳の頃からあらゆる場で着用し続けている高さ12センチのヒールで、履くとホランドよりも20センチ弱背が高くなる。だがらといって、彼女がシグネチャーシューズを封印するわけではない。男性の方が女性よりも身長が高くあるべきだという偏見を「バカげている」と、ホランドはかつて一蹴し、ゼンデイヤも2021年に『スパイダーマン：ノー・ウェイ・ホーム』のプロモーションイベントで「（私がトムよりも背が高いことは）別に普通のことです」と語っている。「私の母は父よりも背が高いですし。彼女より大きい人の方が少ないです」とも。

彼女とホランドの身長差を揶揄することは、そもそも時代遅れなのだ。しかし、ニコール・キッドマンとキース・アーバン、ソフィー・ダールとジェイミー・カラム、ヘレン・ラシチャンとファレル・ウィリアムスといった、女性の方が身長が高いカップルを見ると、世間はどうも黙っていられないらしい。

高ぶらず、親しみやすいイットカップル

2人がカップルとして注目されている理由は、おそらくジェンダー規範を打破している以外にもある。ゼンデイヤもホランドも、高い知名度を誇るにもかからわず振る舞いはどこか慎ましく、それが新鮮に映る。「みんな、ゼンデイヤのことを『すごくパワフル』と評します。たしかにそうで、もちろん、内なる炎のようなものはあるけれど、どちらかというとヘアもメイクもせずに愛犬のヌーンと家にこもって、『ハリー・ポッター』とか映画を観るのが好きなタイプです」と長年彼女のスタイリストを務めているロー・ローチは『VOGUE』に語っている。

大の『ハリー・ポッター』シリーズ好きで、ロンドンに滞在しているときはスーパーやカフェに行くなど、なんてことのない日々の営みにもささやかな楽しみを見出すゼンデイヤと、行きつけのデリ兼レストラン「オットレンギ」を訪れるのが好きなホランドは、普段のコーデも着飾らない。例えばゼンデイヤはアバクロンビー＆フィッチ（ABERCROMBIE & FITCH）のワイドレッグパンツ、アリュード（ALLUDE）のセーター、オン（ON）の「ザ ロジャー センターコート」メンズスニーカーといったシンプルなルックでお馴染みだ。ルイ・ヴィトン（LOUIS VUITTON）のアンバサダーを務め、ミュグレー（MUGLER）のロボットスーツをはじめとする斬新なレッドカーペットルックを難なく着こなす人とは思えないほど、親しみやすいオフデューティスタイルを披露する。

ロー・ローチのアシスタント、クリスタル・コックスをスタイリストに持つホランドはというと、ストライプのTシャツにデニム、白スニーカーなどから作る奇をてらわないコーデが鉄板だ。時折カーディガンを羽織るくらいで、ほとんどこのスタイルからブレない。19歳のときにスパイダーマンに抜擢され、一気にその名を世界に広めてからはゼニア（ZEGNA）などが手がけるテーラードアイテムをワードローブに迎え入れているが、メソッドドレッシングや話題作りのためのファッションとは無縁。2016年に撮影現場で出会い、2021年に付き合い始めたゼンデイヤとレッドカーペットに登場するときは、彼女にスポットライトを譲るようなクラシックなルックに身を包む。

「この2人は悪い噂がなくて好き」「表裏のない唯一のカップル」「お願いだから別れないで。私たちの心が耐えられない」。『VOGUE』のインスタグラム投稿に寄せられたフォロワーたちのそんなコメントの数々を読むと、嫌味がなく、親しみやすいイットカップルとして、ゼンデイヤとトム・ホランドは愛されていることがわかる。

Text: Alice Newbold Adaptation: Anzu Kawano

From VOGUE.CO.UK

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