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突然の上京の誘いに伝えた「いいよ」。まだ知らないあの選択の正解

  • 2024.11.13

私、宇良西千尋は28年間深い人間関係というものは持ってこなかった。友達はいたが
卒業すればそれまでだし、恋愛などもってのほか。

そんな枯れた人生を送っていたある日、彼と出会った。

◎ ◎

彼とは私の唯一の趣味である朗読会の集まりで初めて出会った。
初めは年齢層高めな朗読会で年の近い男の子という物珍しさしかなく、特別意識することはなかった。

彼が朗読会に参加してしばらくしたある日、私たちの関係が変化する転機が起きた。
彼から突然一通のメールが来た。

「今から飲まない?」。

一応同会のよしみとして連絡先は交換していたがメッセージのやり取りなど一度もしたことがなかった。

そんな中の突然のお誘い。
普段なら絶対断るはずなのにその時私は何を思ったのか「いいよ」と即答してしまった。

私はあの時の選択を今でも誇りに思うときもあれば、後悔に押しつぶされそうになる時もある。

◎ ◎

あの選択の正解を私はまだ知らない。

彼との飲みは意外にもとても楽しく彼も楽しそうだった。そこから意気投合し何度も飲みに行くようになり、私たちはそれぞれ居心地のいい存在として交流を続けた。男女の垣根なくともにいれる存在、そんな関係を手放したくないと思った。彼と交流を深めるようになってしばらくたったある日、私たちの関係が変化する転機がまたまた起きた。
私は実家で暮らしていたのだが、そろそろ一人暮らしかなと考えていたとき、彼が突然私に言った。

「なあ、上京したいから一緒に行かねえ?」

私はまたまた何を思ったか今回も「いいよ」と即答した。

そして私たちはとんとん拍子で住まいを探し引っ越すことになった。

◎ ◎

彼といるととても楽しくて自分がどんどん前に進めてる気がして、彼とならどこまでも進める気がした。でもそうはならなかった。
彼と住み始めたしばらくしていつも楽しそうにわたしと話す彼がだんだん話さなくなり、目も合わなくなった。

彼に「何かあった?」と聞いても「別に、何にもないよ」と返され話は終わり。私は言葉にできない不安を抱えたまま彼との生活を送っていた。

そしてその時はやってきた。

「女の子と朝までいるから今日は帰らない」

そのメッセージを見たとき私は目の前が真っ暗になり息ができなくなった。
私の中で悲しみなのか戸惑いなのか怒りなのかわからない何かが渦巻き続け、私は動けなくなった。

その時、私たちの関係はただお互い居心地がよかったから傍にいただけということに気が付いた。彼はきっと私以外に居心地のいい共に進んでいける相手を見つけたのだろう。でも私は彼とずっと一緒に進んでいけると思ってた。

◎ ◎

私は自分の中で彼がとても大きな存在だったことに失くしてから気づいてしまった。
これが恋愛感情なのかは分からない。
でも彼の中にあった私は他の何かに塗りつぶされて私の中にあった彼は彼の形を綺麗に残したまま跡形もなくくりぬかれてしまった。

私は何も言ってくれなかった彼に怒って。
彼が隣にいるのが自分ではなくなったことに泣いて。
それでもどうしようもなく彼のことが大切で。

彼と出会うまでは一人で進んでいたはずの道が彼と出会って一人では進めなくなってしまった。
私は今も前に進めないでいる。

そんな私もきっと彼の形にくりぬかれた穴を何かが埋めてくれるのだろう。
それが時間なのか他の人なのかは私にはまだわからない。

だから今は私の中の彼の形を眺めて休みたい。こんな形で終わってしまったけど彼との時間は本当に楽しくて、愛しくて、かけがえのないものだったのだから。この気持ちを否定したらここまで進んでくれた彼に失礼だから。

だから私はこの気持ちに
「ありがとう」と伝えて少しだけ目をつむる。

■宇良西 千尋のプロフィール
京都出身4月から東京に上京

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