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ラジオDJが明かす、インタビューの裏側「苦手意識があるからこそ準備を怠らない」

  • 2024.11.13

苦手は克服するべきか

♪you can get it if you really want / Jimmy Clif

これまでどれくらいの数のインタビューをしただろうか? それすら分からないくらい多くの方にお会いしてお話しを伺ってきたのに、未だインタビューの極意というものがわからない。

平日のお昼の番組を担当するようになって番組にゲストを迎えることが多くなった。生放送内でミュージシャンを迎えるとして20分ほどの時間で2曲の楽曲とお話しパートがあると言う感じ。ミュージシャンが音源やライブのプロモーションで出演して下さることがほとんどだが、時に舞台や映画のプロモーションで俳優さんをお迎えしたり、芸人さん、作家さんもいらっしゃる。

生放送に限らず、イベントや収録で国内外のアーティストやスポーツ選手など多くの方にインタビューする機会もある。こんなに何度も経験していてもインタビューは一向に上手くならないし、どちらかというと苦手だ。長年この仕事をしていてインタビューが苦手だなんて大きな声では言えないし、言わない方がいいに決まっている。でも言いたい!『難しい〜!』

何がそんなに難しいのか。ビッグネームや人気アーティストに直接会えて嬉しいという気持ちだけでは成立しない。何かの宣伝のためにアーティスト本人だけでなく所属事務所やレコード会社もスケジュールを組んでのゲスト出演。大前提として宣伝のお手伝いをする役目がある。新しいアルバムを作ったアーティスト本人の気持ち、売りたい人達の気持ち、番組を作っている私達の都合。三方よしでなくてはならない。

でも、そんな話は他のメディアですでに出ていたり、ファンクラブのなかでは今更聞きたい訳でもない常識だったりするのだ。じゃあどうする? その人のお人柄が滲み出るような楽しい雰囲気を作ることだったり、ふとしたきっかけを掴んでプライベートを垣間見るようなお話しが聞けるようにしよう。聞いて下さった後にファンクラブの間で『こんなこと言ってたよ!』『笑ってる声が可愛かった〜!』と情報が回れば私のなかでは大成功! もしくは『初めて知りましたが素敵な人ですね!』『早速アルバム買ってみます!』はさらに嬉しい反応。

けれど、アーティストの周囲のスタッフの皆さんが良かったと思うか、宣伝ができたと思うか否かの方が重要なときもあって、毎回の準備はどの範囲、どの方向性でどこまで調べるべきか…テスト勉強さながらに苦悩する。そして本番前の緊張たるや言わずもがな。

もうこれはインタビューすることが難しいという以前に、私の性格、やや人見知りということに原因がある。

池田なみ子のお仕事エッセイ
私のインタビュー準備はアナログ。“書くこと”で頭に情報をインプット。

インタビュー自体がいつも大変で難しいばかりではない。終わった後に楽しかった余韻が満ちていたり、思わぬ展開に空気が和んだり、みんなで良い宣伝ができたと思える達成感があったりもする。海外アーティストのインタビューは来日時の貴重な時間を振り分けてもらっているので特に念入りに流れをイメージして質問の準備をするのだが、アーティストが疲れているとか機嫌が悪いと言ったどうしようもない試練もある。

1999年に日本でも「THONG SONG」がヒットしたSISQO。この年にプロモーションで来日しているSISQOにインタビューの機会を得た。ホテルの一室をインタビュールームにして各メディアが順番に20分ほどの時間で入れ替わり立ち替わりインタビューしていく。朝からずっと同じような質問に答え続けていただろう彼は、よりによって私の番でゴネ始めた。『もう今日はインタビューに答えない』『しばらくゲームをする』と言い放ちテレビ画面の前に鎮座。

海外からのスタッフも日本のスタッフもなすすべなく呆然としていたが、彼のハマっていたゲームは鉄拳・TEKKEN。私も好きなゲームだと声を掛けた。『じゃあ一緒にやろう!!』と2人で持ち時間の20分いっぱい鉄拳をした。コントローラーを叩く音と叫び声しかないのでラジオ番組としての録れ高はゼロ。ゲームはSISQOの大勝でご機嫌復活! ま、こんなこともある。

池田なみ子のお仕事エッセイ
来局したアーティストの皆さんのサイン入りのポラロイ゛ト写真。
池田なみ子のお仕事エッセイ
局内にある膨大な資料のレコード室。こちらでほんの一部。

苦手意識の消えないインタビューはまだまだいろいろな失敗談や面白いエピソードがある。苦手は克服するべきだろうか? 苦手意識があるからこそ準備を怠らないのは仕事には活きてくるけれど、人と会うということに“こうすれば上手くいく”という技巧的な法則はないように思う。

心掛けと対応。私のなかではこれこそが真髄。

これからも番組で多くのゲストをお迎えしインタビューをする機会はまだまだありそうです。アーティストご本人だけでなく関係者、スタッフにも喜んでもらえる『三方よし』とはいいながら、ファンの方が喜んでくれればヨシ!と言うのが本心。ゲストの方のファン目線で架け橋となるようなインタビューができるよう。引き続き精進いたします!

池田なみ子(いけだなみこ)

大阪生まれ東京在住。東西の感覚の違いを肌で感じながらラジオDJ、ナレーター、イベントMCなどで東奔西走。好きなものはROCKスピリットを感じる物。和装や茶道の所作、器など日本の美しい物。フレンチブルドック。ヒールの高い靴。現在、関西のfmcocoloで月曜日から木曜まで週4日、14時からの3時間番組「Wonder Garden」を担当。

Instagram @nami.7369

X @namirock1017

TEXT=池田なみ子

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