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綾瀬はるかさん×メイクアップアーティスト UDAさんインタビュー「普段メディアでは見せない一面にスポットを当てたものになりました」

  • 2024.11.12

ここでは連載のディレクションを務めるメイクアップアーティストのUDAさんと綾瀬さんにインタビュー。本企画立ち上げのきっかけから今回の撮影の裏テーマまで、「IN THE BACK」を皆さまにお届けします。

いろんな側面を知っているUDAさんの視点がなければ実現しなかったもの

20年以上一緒にお仕事をしてきたなかで、UDAさんはいつも世の中を俯瞰して先を見ている人だと感じることが多くて。言葉にできないモヤっとしたこともいつも明確に言語化してくれるから、お話をいただいたときも、きっとUDAさんに見えているものがあるんだろうなと思いました。
 
UDAさんと一緒に仕事をするようになった当時は、初めてお会いするスタッフの方がまだまだ多いときで、不安に思っていることや相談したいことも、誰にも話せずに口をつぐんでいることが多くて。だから、そのときの私はすごく暗いというか、大人っぽく、憂いのある子のように映っていたのかもしれません。

トップス¥31,900(エムエーエスユー)、スカート¥93,500(マーガレット・ハウエル)、人さし指のリング¥63,800、中指のリング¥71,500(共にバイレード/バイレード ジャパン)

今回の撮影は、事前にあるモチーフを提案してくださっていました。それは、ずっと好きだとおっしゃって下さっていた、私が出演していた作品のひとつでした。今思い返してみると、確かにその作品に出演できたきっかけも、脚本家の方が私の写真を見て「目が笑ってないから、絶対彼女(※綾瀬さんが演じたある役)のような一面がある」と言ってオファーしてくださったんですよね。UDAさんは今回、そのモチーフのフィルターを介して出会った当時の憂いのあるような一面を引き出してくれたんじゃないかなって思っています。

ジャケット¥143,000(ヨウジヤマモト)

また、撮影のイメージを話していくなかで“亡霊”というキーワードもでていたので、裏の世界から残された人たちを見ているような感覚で撮影に挑みました。年齢のせいなのか最近死についてもよく考えるようになって。自分の力ではどうすることもできないものごとに対して、諦念のようなものを感じさせる見え方を意識しました。

ドレス¥66,000(PERVERZE)、シューズ¥104,500(ジア スタジオ/ザ・ウォール ショールーム)、チュール、グローブはスタイリスト私物

この撮影は普段メディアでは見せることがない、影にあたるような一面にスポットを当てたものになりました。これは昔から近くで私のことをすごく見てくれていて、仕事もプライベートも、いろんな側面を知っているUDAさんの視点がなければ実現しなかったものだったように思います。

根底にある個性とファッションがもう一歩繋がって、より魅力的なものになるように

この連載を構想し始めたきっかけは、今の俳優さんとファッションの関係が、出演されているその方自身の根底にある個性ともう一歩繋がっていると、さらに魅力的なものになるんじゃないかと感じていたことでした。それをオトナミューズ編集長の渡辺さんにお話ししたところ共感いただいて、こういったことを実現する機会を得ることになりました。
 
撮影前に俳優さん自身と直接お話をして、おひとりおひとりとファッションとが繋がる「何か」を見つけられたうえでイメージを作っていくことができたら、ご本人にとっての新しい発見や、一面を引き出すきっかけにもなるんじゃないかなって。この連載は普段とはまた少し違う、でも彼らの自身の奥のほうにある部分と何かしら繋がった、一歩踏み込んだものにしたかったんです。そこで、タイトルは「IN THE BACK」に。お節介な企画です……。

ジャケット¥139,700(ピリングス/リトルリーグ インク)、スカート¥61,600(フェティコ/ザ・ウォール ショールーム)、シューズ、ベルト、タイツはスタイリスト私物

初回は20年ほど前から交流のある綾瀬はるかさんに出演いただきました。タイトルの「IN THE BACK」が指す、彼女の奥に秘められたものは何かと考えたとき、僕たちが見えている太陽のような天真爛漫な部分の裏には、憂いを含んだ静けさだったり、直感的に深いところを見抜く鋭さだったりと、A面ではあまり見せないB面的な綾瀬さんもいるように感じていたので、それをネガティブなものではなくポジティブな面として、その一面を含んだコントラストのある彼女を見せられたらいいなと思いました。

ニットベスト¥33,000、トップスとして着たミニスカート¥37,400(共にオーラリー)

そう思案したとき、太陽が全面ではなく、月のような、夜に沈まない太陽とでも言うようなB面のイメージとなりました。
 
そのアイデアが浮かんですぐ、このモチーフをどうクリエイティブに落とし込もうかスタッフの皆さんと話し合いました。そのなかでスタイリストの(小川クラーク)麗菜さんがスタイリングを通して人物像の輪郭を見事にはっきりさせてくれた。人物像がはっきりしたことで、フォトグラファーの守本(勝英)さんから「実態があるのか、ないのか? みたいに綾瀬さんがいろいろなところにふわふわと現れたら、面白いんじゃないか」というアイデアが出て。普段撮られているような“綾瀬はるか”という部分は極力奥にしまって、意識が浮遊するように遊んでいたり、ぼんやり何かを見ていたり「実はそこにいないんじゃないか?」「もしかしたら亡霊?(笑)」、でも、やはり強い存在感があるというイメージの全体像が固まりました。

トップス¥39,600(PERVERZE)、スカート¥30,800(アモーメント)

ご本人には、モデルとして被写体になっていただくのではなく、意識のない自分を演じていただくような、俳優としての表現をお願いしました。麗菜さんの鋭いスタイリングと守本さんの絶妙な写真によって今まで見たことのないような綾瀬さんの表情になったのではないでしょうか。
 
僕たちとしては、それが読者の皆さんにとって「かつて見たことがあるような、実は知っていたような、でも見たことがない新しい綾瀬さんの魅力」として伝わるものになっていたらとても嬉しいです。

Profile_綾瀬はるか/2000年に第25回ホリプロスカウトキャラバンで審査員特別賞を受賞しデビュー。映画、ドラマ、舞台などで活躍。映画『レジェンド& バタフライ』『リボルバー・リリー』(共に23年)にて、第48回報知映画賞主演女優賞を受賞。写真集『原色 綾瀬はるか2013-2024』(文藝春秋刊)が好評発売中。主演映画『ルート29』が11月8日より全国公開。

Profile_UDA/大手化粧品会社にてPRやマーケティング、教育、店頭プロモーション等さまざまな業務に携わり、その後独立。現在は国内外のエディトリアル、コスメティック、ファッションのキャンペーン広告、ショーなどのメイクアップを担当。2021年に日本の季節にフォーカスした初の著書『kesho:化粧』(NORMAL)を刊行するなど、常に新しいアプローチを試みている。

direction & make-up:UDA[mekashi project] photograph:KATSUHIDE MORIMOTO styling:REINA OGAWA CLARKE hair:YUSUKE MORIOKA[eight peace] model:HARUKA AYASE interview & text:MIYU SUGIMORI, MASAMICHI YOSHIHIRO

otona MUSE 2024年12月号より

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