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主流になりつつある“アーカイブセール”。作り手の私たちがファッション業界のためにできること

  • 2024.11.11
ジマーマン 2025年春夏コレクションより。
ジマーマン 2025年春夏コレクションより。

ほぼ毎日、インスタグラムで「アーカイブセール開催」という広告を目にする。こういったセールの開催頻度が増加している一因は、昨今のヴィンテージやリセールブームだろう。長年大切にしてきたピースをオークションに出すコレクターやクローゼットの断捨離をする人が増え、ひと昔前のシーズンに発表されたアイテムの需要が高まっている。しかし、なかには名ばかりのアーカイブセールもあり、再燃しているヴィンテージの人気に便乗して、単に季節ごとに行われる一般的なクリアランスセールを開催するブランドもいる。

「本当にアーカイブピースをセール価格で売りに出すデザイナーがいる一方で、最新シーズンのコレクションを値下げしているだけのデザイナーもいます」とマラ・ホフマンは言う。彼女は今年、24年間続けてきた自身の名を冠したブランドをたたみ、セカンドハンドのラグジュアリーファッションに特化したECサイトのヴェスティエール コレクティブ(VESTIAIRE COLLECTIVE)と共同で文字通り、在庫を一掃する“アーカイブセール”を行った。

「自分が抱えている在庫がゴミとして埋め立てられないように責任を持って処分するのは、私にとって大事なことです」とホフマン。「また、お客様にとっては以前買いそびれたもの、あるいは発売当初は手の届かない値段だったアイテムを手に入れるチャンスなのです」

シーズンが終わっても、アイテムの価値は下がらない

マラ ホフマン 2023年春夏コレクションより。
マラ ホフマン 2023年春夏コレクションより。

現在、小売業界は厳しい状況にあり、若手デザイナーは特に大きな打撃を受けている。今年初め、ECサイトのマッチズファッション(MATCHES FASHION)の閉鎖を受けて負債を抱えたデザイナーも多く、アーカイブセール(別名サンプルセール)の普及はある意味、業界の現状を反映すると同時に、私たちの購買行動が変化していることを示している。シーズンごとにアイテムを新調する人は減り、今や多くの人が長く愛用できるものに投資しているのだ。

もちろん、コナー・アイヴスのようにアップサイクル素材を常に積極的に使用するデザイナーにとって、アーカイブに長く残すことを前提に制作に取り組むのは理にかなっている。ヴィンテージピースを再解釈したデザインで知られるアイヴスの場合は特にそうだ。「猛スピードで変化していくファッション業界に反発する意味で“アーカイブセール”という言葉を使っています」と彼は説明する。「シーズンが終わってもアイテムの価値は全く下がらないので、過去シーズンの在庫を売るのは何ら恥ずかしいことではありません」

そもそもアイヴスはコレクションを過剰に生産することはないが、アーカイブセールは目に見えない欠陥があるアイテムの買い手を見つける方法のひとつだ。「製作過程でわずかに損傷してしまうピースは多いです。そういったピースを主にアーカイブセールに回します」と続けた。「ヴィンテージのTシャツについた微小な傷や着用による小さな穴があるものをリテールパートナーに送ることはできませんが、廃棄するのももったいないです」

年間150億から450億もの服が余剰在庫として役目を終える

コナー アイヴス 2024年春夏コレクションより。
コナー アイヴス 2024年春夏コレクションより。

しかし大まかに言えば、ファッション業界では過剰生産が依然として大きな問題だ。トレンド予測会社WGSNが発表した報告書によると、毎年生産される服のうち、150億から450億着という衝撃的な数の服がそもそも販売されないとのこと。「ファッション業界はいまだにものすごく時代遅れの経営手法をブランドに強いていて、過剰生産という害悪な慣習に囚われ続けています。そのため、多くのブランドがシーズン終了時に大量の売れ残り在庫を抱えることになり、その事実にこそ目を向けるべきです」とホフマンは語る。

問題の根本的な解決にはなっていないものの、アーカイブセールの広まりは、私たちの買い物習慣を見直すいいきっかけとなっている。たとえそれが名ばかりのシーズン終了セールであったとしても。「結局、いずれすべてはアーカイブ品になります。ですから、最旬シーズンではなく過去のコレクションを買っても、見劣りしないはずですよね」。ホフマンの言うとおりかもしれない。

Text: Emily Chan Adaptation: Anzu Kawano

From VOGUE.CO.UK

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