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絵画が伝える異才の生き様とは?“画家”の伝記映画4選~芸術の秋に観たい映画②~

  • 2024.11.11

『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』
©2016 Small Shack Productions Inc./ Painted House Films Inc./ Parallel Films (Maudie) Ltd.

山粧う季節、「芸術の秋に観たい映画」シリーズの2回目は、画家の伝記映画をお届けします。第1回では作家の映画を紹介しましたが、作家も画家も己の生を注ぎ込んで表現をしているがゆえ、その創作物は長い年月がたってもなお人々の心に何かを訴えかけます。

豊かに広がる美しい世界! 病を抱えながら描き続けた画家の生涯 『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』

カナダに実在した女性の画家と夫の真実の物語。幼い頃から重いリウマチを患い厄介者扱いされてきたモードは、小さな港町で叔母と暮らしていました。自分の生きる場所を見つけたい、そう思っていた彼女は、家政婦を探していたエベレットと出会います。孤児院育ちで学もないエベレットは、わずか4メートル四方の小さな家に住み、魚の行商を営んでいました。

主従関係から始まった二人の関係ですが、はみ出し者同士、どこか気が合ったのでしょう。「家を掃除しろ」と言われたモードは、殺風景な壁に愛らしい絵を描き、「家をきれいにした」と言います。呆気にとられながらも室内に絵を描くことを許すエベレット。家はまるで命を宿したかのように、明るく生き生きと変化していきます。

『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』©2016 Small Shack Productions Inc./ Painted House Films Inc./ Parallel Films (Maudie) Ltd.

ある日、魚のことでエベレットの家を訪ねてきた女性がモードの絵の才能を見抜きます。いつしかモードの絵は評判を呼び、メディアで取り上げられ、アメリカのニクソン大統領からも依頼が来るように。そんなモードをエベレットは支えますが、病状は次第に悪化してきて……。

リウマチを抱えながら絵筆を離さず自由な心で描き続けたモードを、サリー・ホーキンスが熱演。妻の才能を認めながらも葛藤を抱えるエベレット役はイーサン・ホークで、家政婦を雇ったはずが絵に没頭する妻に代わって家事をする姿には思わず笑ってしまいます。モードの描く絵のように素朴で優しく力強さもある、そんな二人の愛に心打たれます。

『しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス』

2016年製作

DVD ¥4,180
発売・販売元:松竹
©2016 Small Shack Productions Inc./ Painted House Films Inc./ Parallel Films (Maudie) Ltd.

エロスを描いた夭逝の画家と女たちの愛の物語 『エゴン・シーレ 死と乙女』

『エゴン・シーレ 死と乙女』©Novotny & Novotny Filmproduktion GmbH

20世紀初頭、ウィーンの美術界に彗星のごとく現れ、わずか28年という短い人生を駆け抜けた画家エゴン・シーレ。代表作「死と乙女」で知られる夭逝の画家のスキャンダラスな生涯を描いた映画です。

『エゴン・シーレ 死と乙女』©Novotny & Novotny Filmproduktion GmbH

1918年、第一次世界大戦下のオーストリア・ウィーンのアパートで、瀕死のシーレを看病する妹のゲルティ。ゲルティは部屋に残された絵画を見つけ、彼のモデルとなっていた若き日々を回想します。8年前、美術アカデミーを退学したシーレは、アトリエで裸体画を描き続けていました。モデルは16歳になる妹で、その絵はパトロンに好評でした。まもなく、21歳のシーレは、17歳の少女ヴァリと恋に落ちて同棲を始めますが、幸せな日々は長く続かず。さまざまな女性をモデルにした彼は、13歳の少女とホテルに泊まったことで幼児性愛者として訴えられてしまい……。

『エゴン・シーレ 死と乙女』©Novotny & Novotny Filmproduktion GmbH

自画像などからもハンサムだったと思われるモテ男のシーレを、風貌の似ている美男俳優ノア・サーベトラが好演。挑発的な絵画を残したシーレの芸術活動とそれを支えた女性たちとの日々を美しい映像で描き出しています。

『エゴン・シーレ 死と乙女』

2016年製作

DVD ¥4,180
発売元:ニューセレクト
販売元:アルバトロス
©Novotny & Novotny Filmproduktion GmbH

27歳でこの世を去った天才画家を盟友が映画化 『バスキア』

『バスキア』© 2006 PONYCANYON INC.

1980年代のニューヨーク。有名になることを夢見ていた若きストリート・アーティストのジャン=ミシェル・バスキアは、美術評論家ルネに注目されたことから、アンディ・ウォーホルをはじめとするアーティストにその才能を認められます。時代の寵児としてもてはやされたバスキアですが、彼の人気が上がるにつれ、古くからの友や恋人、ルネの心は離れていき……。

『バスキア』© 2006 PONYCANYON INC.

ゴッホへの言及から始まる本作。ゴッホは絵がまったく売れずに貧困のまま生涯を終えましたが、バスキアは絵が売れて人気者となった一方で彼の心も消費され、蝕まれていきます。バスキアはヘロインを常習し、それが原因で27歳にして他界したのです。

『バスキア』© 2006 PONYCANYON INC.

バスキアの生涯とその背景にある80年代のニューヨークのアートシーンを描き出したのは、バスキアの友人でありアーティストのジュリアン・シュナーベルで、本作が映画初監督作。バスキアの死から10年経たずに映画化され、バスキア役をジェフリー・ライト、アンディ・ウォーホル役をデヴィッド・ボウイが演じたことも当時大きな話題となりました。

『バスキア』

1996年製作

Blu-ray ¥4,180/DVD ¥3,080
発売元:ポニーキャニオン
販売元:ポニーキャニオン
© 2006 PONYCANYON INC.

ゴッホが描こうとしたものと死の謎を解き明かす名作 『永遠の門 ゴッホの見た未来』

『永遠の門 ゴッホの見た未来』© Walk Home Productions LLC 2018

「ひまわり」などの名画で知られる画家フィンセント=ファン・ゴッホといえば、耳を切り落としたエキセントリックな逸話や、生前には才能を認められず貧しいままで亡くなったことなどで知られています。その生涯を映画化したのは、『潜水服は蝶の夢を見る』でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞したアーティストのジュリアン・シュナーベル。先に紹介した『バスキア』と同じ監督です。

ゴッホは南フランスの大自然の中を歩き回り、ひたすらに絵を描いていました。キャンバスに絵の具を厚く塗り重ねた独特の描き方は、友人のゴーギャンいわく「絵というより彫刻」。そんな個性あふれる油絵はまったく評価されず、1枚も売れない日々。ゴーギャンが去ったショックもあり、ゴッホは自らの片耳を切り落とすなど、自制心を失っていきます。それでも樹木や草木など豊かな風景を前にすると、彼の心は自然と対話をし、そこに本当に描きたいものを見出すのでした。精神を病みながらも描き続けるゴッホですが……。彼の死には諸説ありますが、本作では新たな解釈で死の謎に迫っています。

ゴッホを演じたのは、ウィレム・デフォー。芸術家の神聖なまなざしと狂気を静かに表現し、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされました。ゴーギャン役にオスカー・アイザック、聖職者役でマッツ・ミケルセンも共演。美しい映像と素晴らしい演技で見応えのある作品です。

『永遠の門 ゴッホの見た未来』

2018年製作

デジタル配信中
提供:ギャガ/松竹
© Walk Home Productions LLC 2018

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※この記事の内容および、掲載商品の販売有無・価格などは2024年11月時点の情報です。販売が終了している場合や、価格改定が行われている場合があります。ご了承ください

構成・文

ライター 中山恵子

中山恵子

ライター。2000年頃から映画雑誌やウェブサイトを中心にコラムやインタビュー記事を執筆。好きな作品は、ラブコメ、ラブストーリー系が多い。趣味は、お菓子作り、海水浴。

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