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自転車“ながらスマホ”で懲役刑「酒気帯び運転」、提供者も罰則対象に 弁護士が教える道交法“改正”のポイント

  • 2024.11.10
道路交通法の改正で自転車の「ながらスマホ」の罰則が強化された
道路交通法の改正で自転車の「ながらスマホ」の罰則が強化された

道路交通法が11月1日に改正され、自転車を運転しながらスマホを操作する、いわゆる「ながらスマホ」の罰則が強化されたほか、「自転車の酒気帯び運転・ほう助」が新たに罰則の対象となりました。もしこれらの行為をした場合、どのような刑罰を科される可能性があるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

6カ月以下の懲役の可能性

Q.道路交通法の改正により、「自転車の運転中のながらスマホ」の罰則が強化されたほか、「自転車の酒気帯び運転・ほう助」が新たに罰則の対象となりました。どのような原因が考えられるのでしょうか。

牧野さん「自転車の運転中のスマホの使用が原因の交通事故が増加傾向にあることのほか、酒気を帯びた状態で自転車を運転したことが原因で死亡事故や重傷事故につながった事例が多いからです。そこで、自転車運転中のながらスマホの厳罰化のほか、自転車の酒気帯び運転および手助けする行為(ほう助)を対象に、罰則付きの禁止規定が設けられました」

Q.では、自転車の運転中のながらスマホや自転車の酒気帯び運転などを行った場合、どのような刑罰を科される可能性があるのでしょうか。

牧野さん「スマホなどを手で持った状態で自転車に乗りながら通話をしたり、画面を注視したりした場合(スマホ操作行為)、6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金に処される可能性があります。

また、スマホの操作行為により交通の危険を生じさせた場合は、1年以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性があります。ただし、自転車の停止時にスマホを操作する行為は罰則の対象外です。

自転車の酒気帯び運転をした場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処される可能性があります。また、飲酒した人に自転車を提供した場合は3年以下の懲役または50万円以下の罰金、酒類の提供者や自転車の同乗者についても、2年以下の懲役または30万円以下の罰金にそれぞれ処される可能性があります。

事故を起こしてしまった場合は、事故を起こさなかった場合に比べて、一般には、法定刑の枠の中で行われる量刑が厳しくなるでしょう」

Q.自転車のハンドル部分にスマホを設置している人を見掛けることがあります。ハンドル部分に設置したスマホを見ながら運転した場合も、罰則の対象になるのでしょうか。

牧野さん「今回の道路交通法の改正では、先述のように、自転車に乗りながら画面を注視することが新たに禁止されました。道路交通法71条5号の5では『当該自動車等(自動車、原動機付自転車、自転車)に取り付けられもしくは持ち込まれた画像表示用装置に表示された画像を注視しないこと』と定められています。そのため、ハンドルに設置したスマホを見ながらの運転は、罰則がありませんが、禁止行為に該当すると思われます」

Q.自転車の運転中のながらスマホや自転車の酒気帯び運転などを1回でも行った場合、「自転車運転者講習制度」に基づき、自転車の運転による交通の危険を防止するための講習を受講しなければならないのでしょうか。

牧野さん「自転車運転中のながらスマホや自転車の酒気帯び運転は、自転車運転者講習制度の対象になりますが、1回の違反ですぐに講習の対象になるわけではありません。自転車の運転に関して、一定の違反行為(危険行為)を3年以内に2回以上行った場合が講習制度の対象となります。

危険行為は信号無視、指定場所一時不停止、遮断踏切立ち入り、安全運転義務違反などが該当します。もし講習を受けるよう、命じられたにもかかわらず従わなかった場合、5万円以下の罰金を科される可能性があります」

歩行者にぶつかったらどうなる?

Q.自転車の運転中のながらスマホや自転車の酒気帯び運転などが原因で歩行者にぶつかってしまった場合、どのような法的責任を問われる可能性があるのでしょうか。

牧野さん「自転車の運転中に歩行者にぶつかってしまい、けがをさせてしまった場合には、道路状況や歩行者過失にもよりますが、民法709条の不法行為責任に基づき、歩行者に発生した損害を賠償する責任が発生します。自転車と歩行者を比較した場合、歩行者の方が交通弱者となるため、歩道上においては、基本的に自転車側が100%の責任を負うことになります。

また、自転車と歩行者の事故の場合、自転車側には民事上の責任のほか、刑事上の責任が問われることになります。刑事上の責任として、不注意により相手にけがを負わせた場合は『過失傷害罪』(刑法209条、30万円以下の罰金または科料)、不注意により相手を死亡させた場合は『過失致死罪』(刑法210条、50万円以下の罰金)にそれぞれ問われる可能性があります。

また、重大な不注意により相手を死傷させた場合は『業務上過失致死傷罪もしくは重過失致死傷罪』(刑法211条、5年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金)に問われる可能性があります」

Q.このほか、自転車の運転中のながらスマホや自転車の酒気帯び運転などを行い、自転車の通行が原則として禁止されている歩道を自転車で走行したとします。もし歩行者をはねてしまった場合、法的責任が重くなる可能性はあるのでしょうか。

牧野さん「歩道を通行できる例外に当たる理由がないのに、普通自転車が歩道を通行した場合、道路交通法63条の3に違反したとして、3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金を科される可能性があります。普通自転車とは、道路交通法と関連法令の用語で、自転車のうち、大きさと構造が基準を満たし、『自転車および歩行者専用(325の3)』の道路標識が設置された歩道を通行することができるものを指します。

普通自転車は、歩車道の区分のある道路では、道路(車道)の左側端に寄って車道を通行しなければならず、標識などによる自転車専用通行帯があるときはその部分を通行しなければなりません。普通自転車が歩道を通行する場合、道路標識などにより普通自転車が通行すべき部分として指定された部分または歩道の中央から車道寄りの部分を徐行しなければなりませんが、通行指定部分に歩行者がいない場合などはこの限りではありません。

また、普通自転車の進行が歩行者の通行を妨げることになるときは、一時停止しなければなりません。当然ですが、自転車は、信号機が表示する信号または警察官などの手信号に従わなければなりません」

オトナンサー編集部

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