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牛乳を出せない牛“まめちゃん”の新たな生き方「牛たちのかくれ家」が目指すもの

  • 2024.11.9

牛乳やバターなど、私たちの食生活を支える乳牛のお話です。
ある不幸な理由から酪農の世界で生きられない乳牛がいることを知っていますか?

牛舎の外にある小屋で飼育されている1頭の子牛。
2024年5月に生まれた「まめちゃん」です。大好物はバナナ!

Sitakke

元気に走り回る普通の子牛に見えますが、実はちょっと事情があります。

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飛び跳ねるように走るまめちゃん

まめちゃんが暮らす「牛たちのかくれ家」の関口晴実さん(28)が教えてくれました。

「まめちゃんはフリーマーチンといって、メスだけど妊娠できない体で生まれてしまって」

フリーマーチンとは、オスとメスの双子で生まれ、90%以上の確率で妊娠できない体になるメスのことです。
大きくなっても、乳牛にはなれません。

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さらに、まめちゃんは体も小さく食肉としても買い手がつきませんでした。

関口さんは、ある決断をします。

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「引き取らせてもらえないかと話したときに、上長が『やってみよう』と言ってくれて、引き取りが決まった」

この子牛が向かう先は、日本では珍しい、牛たちの新たな終の住みかとなる牧場でした。

乳牛たちの現実

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当別町の森の中にできた、小さな牛の牧場。それが「牛たちのかくれ家」です。
とはいっても、まだ牛は1頭もいません。

牧場主の関口晴実さんは「牛がいっぱい来てもらって、何か新しく畜産ではない形で、活躍できるところを見るのが楽しみ」と話します。

「畜産以外」で活躍する牛とは…。

江別市にある乳業メーカーの農場です。
関口さんは、従業員として、牛たちの世話をしています。

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名古屋の大学に通っていたころ、実習で出会った「牛」に興味を持ち、関わる仕事を求めて北海道で就職しました。
ただ「命」を扱う現場は、楽しいだけではありません。

「酪農の乳牛としては生きていけない子たちが、目の前で安楽死という形で一生を終える姿を見て心を痛めたというのがあって。畜産をやる側としては割り切らなければいけないところなのだけど…」

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通常、乳牛は2歳ごろから搾乳が始まります。その後、5~6年ほどでその役目を終えると、食肉などにまわされます。

しかし、けがをしたり足をいためたりした牛は、自分の足で歩いて搾乳にいけなくなると「寿命を終わらせてしまうという形になる」といいます。

「酪農のサイクルから外れてしまった子たち、行き場を失ってしまった子たちを助けたい」

こうした”行き場を失った牛”は毎年、何百頭、何千頭と出るわけではありません。でも、その命を救い、酪農とは別の生き方で全うさせる…。

そんな牛たちのための牧場が「牛たちのかくれ家」なんです。

牛たちに癒しの力を発揮してもらう

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関口さんの思いに、職場の上司である町村農場の町村均社長は「応援しがいがある」と話します。

「すべてを救えるわけではないが、人間の生活の役に立てていくような発想を持ってやっているから、それはそれで1つのあり方なんだろうな」

「牛たちのかくれ家」は築30年以上の牛舎。
雨漏りもするほど老朽化していて、電気や水も確保できていない状態でした。
手持ちの資金も、あまりなかったため、自分たちで修理を始めました。

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関口さんに共感し、協力してくれる仲間もいます。
村上玲央さんもその一人。

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「本気なんだというのが分かって、自分も協力したいなと」

関口さんは、引き取った牛たちとともに、日本では珍しいあることを始めようと考えていました。

それが「セラピーCOW」。牛のアニマルセラピーです。

「COW HUG(カウ・ハグ)」といって、オランダやアメリカなどではイヌやネコ同様、牛たちと触れ合える牧場があるんです。

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ニューヨーク大学の動物による心理療法に詳しいキャサリン・コンピタス博士によると、その起源はオランダにあるといい、「ずっと前から行われていた」そう。

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キャサリン・コンピタス博士

「人々は都会から田舎に行き、牛とハグをして過ごすことでストレスを軽減していた。アメリカでも広まってきていて、不安やうつ病にも効果がある」といいます。

「もし日本でやるなら、とても素晴らしいことだと思う」と話してくれました。

余生を「牛らしく生活」」

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そして9月、まめちゃんが牛たちのかくれ家へと無事お引っ越し。
関口さんたちが目指す牧場が、歩き始めました。

「行き場を失った子たちはたくさんいるので、そういう子たちを少しでも多く、ここに連れてきて、牛らしい生活をしてもらえるような場所にできたらいいなと思う」

牛たちのかくれ家は、酪農・畜産としては飼育せず、基本余生を過ごすのみです。
まめちゃんはここで走り回ったり、大好物のバナナを頬張ったり。ゆったりと暮らしています。

まめちゃんにお友だちが!動き出す牛たちのかくれ家

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そして、まめちゃんがきてから2か月…2頭目の牛もやってきました!

道東から雪の中やってきたのは「すけみん」。
もうすぐ1歳の「すけみん」はまめちゃんと同じフリーマーチン。

ほかの牧場に引き取られる予定でしたがタイミングを失い、行き場を失った状態に。
そんな中、元の牧場の人たちが関口さんの活動を知って引き取り先として決まったのです。

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元の牧場でもとてもかわいがられていた「すけみん」はとっても人懐っこい性格!
今後、セラピーCOWとしての活躍も期待できそうです。

まめちゃんと同じく、バナナも大好きなんですって!

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左がまめちゃん 積極的に近づくすけみん

まめちゃんは新しいおともだちに、まだちょっと緊張気味ですが、すけみんはまめちゃんにも興味津々で積極的にふれあいにいく場面もみられました。

すけみんのお出迎えには熱心な「サポーター」が駆けつけ、本州からやってきた人もいたほどです。

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牛たちのかくれ家では、運営費は現在、自己資金とサポーターからの寄付でまかなっていて、入場料を徴収するなどの営利行為をしないことを目指しています。

そのため、牧場を支えてくれる「サポーター」を募集しています。
支援金は月1000円から。まめちゃん・すけみんの近況とともにInstagramをご覧ください。

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年10月23日)に基づき、一部情報を更新しています。

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