お話を伺ったのは
日本橋いろどり皮ふ科 クリニック院長
横井 彩先生
皮膚科専門医、医学博士。自身がニキビに悩んだ経験からスキンケア指導をしたくて皮膚科医になり、化粧品検定1級も取得。アレルギーや敏感肌治療に多くの知見を持ち、スキンケアに悩む人のために化粧品トラブル外来を開設。
“顔がかゆい”症状に悩んでいない?
これってアトピー性皮膚炎? 顔ダニ? アレルギー? 花粉症? 何かの病気?
その『顔のかゆみ』、実は肌荒れです
治らない顔のかゆみは肌荒れを疑え!
化粧品を替えても顔がかゆいのはアレルギー? 皮膚の病気?
「顔がかゆくなると多くの人はアレルギーなど直接の原因を探します。でも皮膚科に行っても、直接の原因がすぐにわかることは少ないのです」と、皮膚科医の横井彩先生。ではこのかゆみの正体は?
「ほとんどの場合、肌そのものが健康をそこねている、つまり肌荒れによるかゆみです。肌のバリア機能が低下し、外部刺激が肌へ侵入しやすくなると、かゆみを感じやすくなります。肌荒れが起きている場合、原因が何であれ、早く治さないと皮膚のダメージが蓄積され、色素沈着などの後遺症も起こりやすくなります。まず、顔がかゆいときには敏感肌用のシンプルケアに切り替えて。使用中の化粧品はかゆみが治まって1ヵ月ほど経ってから使い始めるのがよいでしょう。かゆみのない健康な肌に戻ってから、化粧品を楽しんで」
肌荒れで顔がかゆくなるメカニズム
肌荒れで外部刺激に弱くなり、かゆくなる
横井 彩先生
皮膚の角層部分に備わった肌のバリア機能が整っている健康な肌は、外部刺激から肌を守り、内部のうるおいを保っています。一方で角層の細胞にすき間ができ、外部の刺激に敏感になるのが荒れた肌。健康な肌では通さないような花粉などの外部刺激が肌に入り込み、かゆみや炎症に。健康な肌になれば、外部刺激から肌が守られてかゆみを感じにくくなります
“顔がかゆい”ときの対処法
【生活習慣】急激に血流がよくなることを避ける
横井 彩先生
血流がよくなるとかゆみが強くなります。そのため顔がかゆいときには、急激に血流を促す長風呂やサウナ、ホットヨガ、辛い食事やお酒は避けましょう。また適度な湿度は肌の乾燥を防ぐので、加湿器を活用して40~60%にするのがおすすめです
【NG】 長風呂&サウナ
過度に体を温めて血流がよくなりすぎると、汗として必要以上の水分が出ていくので、乾燥がすすんでかゆみが増すことに。またお湯に長くつかると皮膚がふやけて肌トラブルになることも。
【NG】 スパイシーな食事&お酒
辛いカレーや韓国料理などの、スパイシーな料理やお酒は血流が急激によくなるので、かゆみが強くなる原因に。顔にかゆみがあるときは、辛い食べ物とお酒は避けて。
【ケア】かゆみのある期間は敏感肌用のシンプルケアを
横井 彩先生
かゆみがあるときは、肌によい成分が入っているかよりも、ノンアルコール、無香料、無着色など、刺激やアレルギーの原因になるものを極力控えている敏感肌用化粧品を選びましょう。オーガニック系コスメは意外に刺激の強いものが多く、この期間は避けるのが無難です
横井先生オススメ!
\ トライアルキットで肌に合うかをチェック /
敏感肌用の化粧品はいろいろあるが、トライアルキットで肌に合うかを確認してから購入が◎。
独自のアミノ酸処方で低刺激性と高保湿を実現
ミノン アミノモイスト 敏感肌・乾燥肌ライン トライアルセット
¥880(編集部調べ)/第一三共ヘルスケア
保湿化粧水Ⅱ、保湿乳液、UV化粧下地のセット。
バリア皮膚科学にこだわった敏感肌用スキンケア
イニクス センシティブ トライアルセット
¥1050/マルホ
乾燥を感じやすい敏感肌の肌荒れを防いで、角層までうるおいで満たす。7日間試せる。
【薬・治療】市販のかゆみ止めを使うなら3日まで。治らないなら皮膚科へ
横井 彩先生
市販のかゆみ止めには非ステロイド系とステロイド系があります。一見優しそうな非ステロイド系にはかゆみを鈍らせる麻酔成分が含まれていることがあり、敏感肌では合わないことも。応急手当てでステロイド系の市販薬を使う場合は2~3日まで。それで治らない、悪化する場合は皮膚科へ
\顔のかゆみがひどい場合はこんな可能性も!/
◆アトピー性皮膚炎
かゆみをともなう湿疹がよくなったり悪くなったりする慢性の皮膚疾患。大人になって症状が改善していても、体質的に乾燥しやすく刺激を受けやすい敏感肌のため、かゆみが出やすい。
◆かぶれ
金属や化粧品など、何らかの物質に触れることで起こるかゆみをともなう赤みなどの発疹。アレルギー性と刺激性に分類され、自然に治ることもあるが、長引くと色素沈着などの痕が残りやすい。
◆顔ダニ
毛穴にすむ非常に小さなダニで、ほとんどの人の皮膚に存在していて、皮脂の多い部分を好む。その数が増えすぎると、ニキビや赤み、かゆみなどの症状を引き起こすことがある。
◆脂漏性皮膚炎
額、眉、眉間、鼻やほうれい線の周囲など、皮脂分泌が多い場所にできる湿疹で、かゆみをともなうことも。皮膚に常在するマラセチアというカビが増えることが主な原因。
◆じんましん
かゆみをともなう赤くふくらんだ皮疹が現れる。食べ物などのアレルギー反応や、寒暖差や発汗などの特定の刺激が原因で起こることもあるが、原因がはっきりわからない場合も多い。
かゆみと永遠にさよならしたい“顔かゆさん”のお悩み一問一答
こんなとき、あんなとき、顔がかゆくなるのはどうして? “顔かゆさん”の悩みや疑問を横井先生に直撃。知識と対策法を身につけ、二度とかゆくならない肌を目指そう。
横井彩先生
正しい知識でケアしましょう
Q.肌の調子が悪いからターンオーバーを促すレチノール入りコスメを使うべき?
A.NO! 高機能コスメは、かゆみのない健康な肌にこそ効果を発揮します
横井彩先生
肌を元気にしようとして高機能コスメを使う方がいますが、それはNG。レチノールやビタミンCのほか、美白やシワ改善、シミ対策など明確な目的をうたった高機能コスメは、健康な肌でこそ効果を発揮します。肌が荒れているときに使用すると、高機能成分によって強い刺激を感じたり予期せぬ反応が出ることも。かゆみが出ている期間は高機能成分入りコスメを避け敏感肌用に。この期間はピーリング系やふきとり化粧水も肌への刺激になるので避けて
Q.いったん治ってもまたかゆくなります
A.かゆみをくり返すなら、きちんと皮膚科で治しましょう
横井彩先生
敏感肌用コスメを使ったり保湿することでかゆみが落ち着くなら問題ありません。でもかゆみがくり返すなら、早めに皮膚科医に相談を。皮膚科で薬を処方されていても、塗る量が少なすぎたり、指示通りの期間塗らないことでかゆみをくり返すケースもあるので注意しましょう
Q.生理前にかゆくなるのはなぜ?
A.ホルモンの影響でかゆくなることも
横井彩先生
女性は生理前や更年期など、ホルモンの影響で神経が過敏になり、顔がかゆくなることがあります。その時期がわかっていれば、その期間だけ敏感肌用コスメに替えるなどして、肌への刺激をできるだけ抑えてあげましょう
Q.ストレスで顔はかゆくなる?
A.ストレスで神経が過敏になることも
横井彩先生
ストレスそのもので顔がかゆくなるのではなく、ストレスが原因で神経が過敏になり、かゆみを感じやすくなることがあります。疲れているときも同様に神経が過敏になり、かゆみを感じやすくなることも
Q.昔アトピーだったせいか、顔がかゆくなりやすいです
A.アトピー性皮膚炎は肌荒れしやすい“肌質”
横井彩先生
アトピー性皮膚炎は、なったり治ったりする疾患ではなく、その人の“肌質”に近いもの。昔ほどの症状が出なくなっても完治したのではなく、乾燥しやすくかゆみを感じやすい肌質は変わりません。冬は乾燥で肌荒れしやすいので、乾燥と肌への刺激を避けるように意識を
Q.顔のかゆみループから脱出する最適解は?
A.日頃からこすらない、塗りすぎないを徹底しましょう
横井彩先生
かゆみがあってもなくても、洗顔時やコスメを塗るときに肌はこすらないこと。化粧品の塗りすぎも肌の刺激になるので、かゆみのある期間だけは、化粧水と乳液のみなどのシンプルケアにしぼって肌に触れる回数を減らし、使用量を守って使いましょう
イラスト/腹肉ツヤ子 取材・文・構成/山本美和