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「名字はプレゼントにならない」。当たり前に主張できる時代を願って

  • 2024.11.9

結婚したときに当たり前のように苗字を変えた。少し気に入っていたけれど、当時の私に名字を変えない選択肢は無くて、反対する意思もなかった。

あの頃仮に選択的夫婦別姓制度が導入済みだったとしても、「夫婦別姓はちょっと周りの目が気になるから」と諭されて、やんわりとその考え方は捨ててほしいと言われていたであろうけど。

田舎暮らしだから余計に「異物は排除すべき」という風潮が色濃く残っているなと、はじめてこの地に来た日から今もずっと思っている。いらないしなくなればいいなと思う、田舎のちょっと嫌なところだ。

◎ ◎

婚姻届けを提出して名字が変わって一番初めに感じたことは「めんどくさい」で、次に感じたことは「不便」だ。

まず、名字が変わると諸々の変更手続きが必要になる。免許書とか銀行口座とか。しかも、それらの変更手続きは一か所で終わらない。それぞれの場所へ必要書類を持参して、営業時間内に行かなければならないのだ。これが、かなりめんどくさい。とはいえ変更しないまま使用するわけにはいかないので手続きに行かないといけないのだけれど。

取り扱うのがかなり重要な個人情報だから難しいことはわかっている。ただ、どうして一か所で、もしくはオンラインでできないのかと思わざるを得なかった。田舎だからそれぞれの場所が離れていたというのもあるが、手続きをすると決めた日は、嘘偽りなく手続きだけで一日が終わってしまったし、それぞれの機関での待ち時間も長く、終わったころにはへとへとだった。

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また、絶対必要ではないが各種サイトの登録名の変更もめんどくさかったし、今でも旧姓のまま登録しているものさえある。もちろん私がずぼらなだけではあるが、オンラインで買い物をするときに住所は変えていたけど名前は変え忘れていて、しばらくは旧姓で荷物が届いていた。名字を変えるってたった数文字の変化なのに、その数文字を変えるのにたくさんの手続きが必要だった。もう六年半も経ったけど、今も鮮明に当時のめんどくさかった気持ちが残っている。

そして、名字が変わると、呼ばれ慣れていないから自分が呼ばれていることに気付けない。しかも、結婚前からの知り合いだと、呼ぶ側がどう考えても一瞬迷っているなというのもわかるから少し気まずい。病院の受付で名前を呼ばれたときとか、初めの方は本当に気付けなくてワンテンポどころかスリーテンポくらい遅れてやっと反応するみたいなことが多々あった。今はもう慣れたけれど、初めの方は普通に不便だった。

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この不便さを抱えるのは、このめんどくささに共感してくれるのは、圧倒的に女性だろう。私の友人の男性で、彼の祖母が珍しい名字だからそれを引き継ぐために名字を変更した人がいた。両親の離婚で名字が変わった男性も数名知っている。だが、本当にそれくらい。私の周りで名字が変わった男性は片手で数えきれる程度だ。

夫婦別姓が受け入れられてきたとはいえ、まだまだ結婚で名字を変える女性は多い。人生の中でも一番くらいハッピーなイベントにかなりのめんどくささが付随しているのは、おかしいなと私は思う。このめんどくささを知った上で思うのは、当時その選択が当たり前にあれば、ずぼらな私は名字を変えない選択肢をしていたかもしれないってことだ。もっと自分の意思や思いをもって名字を変えない選択をするために戦っている人と比べれば浅いにもほどがある理由だけど、それでも選択的夫婦別姓制度の導入はすべきだと私は思う。

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選択的夫婦別姓制度がまだ日本で導入されていないのはなぜだろう。名字を別にするだけで婚姻が結べないのはおかしいし、名字を変えるのは想像より大変だ。よく結婚するときに名字をプレゼントすると言われるが、プレゼントされる側だって結婚するまでずっと過ごしてきた名字に思い入れがないわけないじゃないか。結婚する二人がお互い納得の上でなら名字を変えるか変えないかは自由に選べていいはずだ。「名字はプレゼントにならないよ」とか、「私の名字をプレゼントするね」って当たり前に言える時代が来たらいいなと思う。

■まろちゃんのプロフィール
30代、専業主婦。子供がひとり。字を書くのが好きです。
生きづらさと向き合いながら、ぼちぼち生きています。

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