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【綾瀬はるかインタビュー】約1年ぶりの映画『ルート29』「今までの経験を手放し、新しい自分に出会えた」

  • 2024.11.8

綾瀬はるかさんの主演最新作『ルート29』が11月8日(金)に公開! 詩人・中尾太一さんの『ルート29、解放』に着想を得て、『こちらあみ子』の森井勇佑監督がメガホンをとったロードムービー。姫路と鳥取を結ぶ国道29号線を舞台に、他者とのコミュニケーションが必要以上にできない女性、のり子が、風変わりな少女、ハルと絆を築いていく姿を描きます。主人公、のり子をこれまでにない浮遊感漂う佇まいで好演し、新境地を魅せる綾瀬さんに作品の魅力や俳優として得たもの、自身を輝かせるものなどを伺いました。


【綾瀬はるかさんインタビュー】

運命的なこの作品との出会い

――オファーを受けた時の心境を教えてください。

『ルート29』のお話をいただくまで、映画やドラマの撮影を1年弱ほどお休みしていたんです。それまでずっと走り続けていて作品がひと段落したら休憩したいという思いがありました。そのお休みの間、「次の作品は、縁を感じるものや運命を感じるものをやりたい」とずっと思っていて。そうして、この作品と出会いました。台本を読んだら、すごく優しい時間が流れていて、自然と涙が流れていたんです。私自身、1年弱ものお休みは初めてのことでしたが、この作品なら気負わずスッと入っていけそうな気がして。あと、森井勇佑監督が私と同じ歳で、前作『こちらあみ子』が大好きだったのも大きいです。(あみ子役の)大沢一菜ちゃんに会ってみたいという気持ちもありました(笑)。

©︎2024「ルート29」製作委員会

——台本を読んで、自然と涙が流れていたとのことですが、どんなところに惹かれましたか?

一菜ちゃんが演じるハルの優しさに魅了されました。ハルは、思っていることがすごく真っ直ぐでピュアな子。言葉も行動もシンプルで、とにかく優しいんです。私が演じるのり子は、誰かと交わることもなく、自分の生活を淡々と生きている人。過去に何かがあったのか、積極的に人とつながりを持とうとはしていません。それを心のどこかで寂しく思う気持ちもあったのかなと。そんなのり子が、ハルとの旅を通して、初めてさまざまな“感情”をもらい、心が明るくなっていきます。のり子はありのままのハルと一緒にいることで救われたんだろうなって思いました。 ——森井勇佑監督の印象は?

森井監督がかけてくださる“言葉”がすごく好きで、言われた言葉はメモをとって、忘れないようにしようと思いました。監督が話す言葉を共有したいい、吸収したいと思って。たとえば「のり子の中には“宇宙”があって、そのおかげで心が満たされている豊かな人なんです」というお話や、演出してくださる時の「心に隙間がある感じでお願いします」という表現が印象に残っています。

すべてを一回手放して臨んだ役

——のり子というキャラクターは、演じてみていかがでしたか? 初日は、のり子が市川実日子さん演じる理映子と話すシーンでした。段取りが終わった後、監督が「伝えようとしないでくださ」っておっしゃって。会話って伝えようとするものなので、難しいな、と。監督は「存在してるだけでいい。演技がどうじゃなくて、そこにその人が存在してることが、映画になっていく」と。また、「綾瀬さんは十分変な人だと思ってるから、そのままでいいです」とも(笑)。でも、やっぱり喋っていると、どうしても伝えようとしちゃうんですよね。伝えないって、どういうことだろう、のり子はどういう感じで言ってるんだろうって、考えていくなか、だんだんわかっていきました。家に一人でいる感じなのかなって。誰かがいると、人は意識してしまうけど、それが全くない状態。監督がアドバイスしてくれたように、のり子は自分の中に大きな宇宙がある人だから、人がいるけど、いないような感覚の人なんだなってつかめてきました。最初は難しいと思いましたが、今まで培ってきたこと、全部の経験を、一回手放そうと思いながら、撮影に臨んでました。 ——今までの経験を手放す作業を経て、綾瀬さんが得たものは何ですか?

これまでの経験を壊すことは大変でもあったけど、すごくやりがいもありました。作品を見終わった後、のり子を演じる自分が、10代の時の自分の感じに似ていました。経験を積むとテクニックや技術がついていきますが、今回は自分の中からわいてくるものを頼りに演じるしかできなかった頃を思い出して、初心に戻れた気がしました。こういう芝居って、なんだか懐かしいなあって。今のタイミングで、新しい自分、新しい表現に出会える役をやれて本当によかったです。

――綾瀬さんが思う『ルート29』の魅力は? ハルをはじめ、出会う人々が不思議で魅力的な人ばかりで、生きているのか生きていないのかがわからない。映像のかわいらしさも相まって、観終わった後に「生きるっていいな」と勇気をもらえる映画だと思います。一方で、生と死の境目を曖昧にすることで「死ぬことを怖がることもない」という不思議な感覚になる瞬間がありました。みんなひとつに繋がっている感じもあって、温かい気持ちになれます。

©︎2024「ルート29」製作委員会

綾瀬さん自身の輝き、輝いている人はどんな人?

——GLOWは「内側から輝く」をテーマにしているのですが、輝いていると思うのはどんな人ですか?

何に対しても、どんな小さなことにでも、情熱と愛情を持って、真摯に取り組んでいる人を見ると輝いていると思います。いつも真心を忘れずに取り組んでいる姿が素敵だなって思います。 ——ご自身はどんな時に輝いてると思いますか? 笑っている時ですね。面白い話をして、笑ってる時、いやー、生きてるってこういうことだなあ、ああ、笑いのある人生っていいなって実感します(笑)。笑っている時間を増やしていきたいですね。

ジャンプスーツ5万9400円(デ・プレ/デ・プレ) シューズ14万9600円(セルジオロッシ/セルジオ ロッシ カスタマーサービス) イヤーカフ2万7300円、ブレスレット10万100円、リング・右手親指15万3700円、リング・右手薬指80万1600円、リング左手・中指33万1900円(すべてトムウッド/トムウッド 青山店) ソックス(スタイリスト私物) 撮影=清水将之<mili> スタイリング=吉田恵 ヘア&メイク=中野明海 取材・文=杉嶋未来


『ルート29』INFORMATION

11月8日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

STORY 他者と必要以上のコミュニケーションをとることをしないのり子は、鳥取の町で清掃員として働いている。ある日、仕事で訪れた病院で、入院患者の理映子から「姫路にいる私の娘をここに連れてきてほしい」と頼まれた彼女は、その依頼を受け入れ、単身で姫路へと向かう。理映子から渡された写真を頼りに、のり子が見つけることができたハルは、森の中で秘密基地を作って遊ぶような風変わりな女の子だった。初対面ののり子の顔を見て、「トンボ」というあだ名をつけるハル。2匹の犬を連れた赤い服の女、天地が逆さまにひっくり返った車の中に座っていたじいじ、「人間社会から逃れるために旅をしている」と語る親子、久しぶりに会った姉など、さまざまな人たちと出会いながら、姫路から鳥取まで一本道の国道29号線を進んでいく2人の旅が始まった──

2024/日本/120分
出演:綾瀬はるか
大沢一菜
伊佐山ひろ子 高良健吾 原田琥之佑 大西力 松浦伸也/河井青葉 渡辺美佐子/市川実日子
監督・脚本:森井勇佑
原作:中尾太一「ルート29、解放」(書肆子午線刊)
主題歌:「Mirror」Bialystocks(IRORI Records / PONY CANYON)
企画:孫家邦 プロデューサー:近藤貴彦 波多野文郎
撮影:飯岡幸子 照明:秋山恵二郎 録音:髙須賀健吾 美術:大原清孝 音楽:Bialystocks
編集:早野亮 衣裳:纐纈春樹 ヘアメイク:豊川京子、千葉友子
VFXプロデューサー:赤羽智史 音響効果:勝亦さくら 助監督:羽生敏博
宣伝プロデューサー:尾関智美
製作:東京テアトル U -NEXT ホリプロ ハーベストフィルム リトルモア
製作プロダクション:ハーベストフィルム リトルモア
配給:東京テアトル リトルモア
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業) | 独立行政法人日本芸術文化振興会
©︎2024「ルート29」製作委員会

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