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なぜドナルド・トランプは再選したのか。米国現地メディアの報道から背景を紐解く【米大統領選2024】

  • 2024.11.8

“歴史的”と称され、過去に例を見ない形で世界の注目を集めた2024年アメリカ大統領選挙。経済の不安定さや、気候変動への対応、女性やLGBTQ+、BIPOC(黒人、先住民、有色人種)を含めたマイノリティの権利、さらに国際関係の再構築といった重要な課題が背景にあり、世界中の関心が高まっていた。また候補者間の政策の違いが鮮明で、どちらが勝つかによって、アメリカの進む道が大きく変わる可能性があり、重要な瞬間となった。結果として、ドナルド・トランプカマラ・ハリスを破り、再びホワイトハウスを手中に収めた。

「トランプのアメリカは、政治的に極端に分断された時代に」──ニューヨーク・タイムズ

2024 United States Presidential Election

この選挙については世界各国で大きくニュースで取り上げられているが、アメリカ国内での報道はどうか。まずは「ニューヨーク・タイムズ」紙をみてみよう。

「トランプのアメリカ:復帰勝利が示す違った国のかたち」と題した記事では、アメリカは依然として、トランプのような強権者を受け入れることを示したと言及。「三度の離婚歴や性的虐待の告発を受けながらも、再び女性の候補者を破り大統領に返り咲く。同選挙は、トランプ氏が異例の一時的な現象ではなく、アメリカの新たな政治的潮流を作る存在であることを証明した」と解説した。さらに、トランプの選挙キャンペーンでのメッセージは、「攻撃的で戦闘的、民主主義や法の支配を破壊し、自己の権力を拡大することを目指すものだった。トランプのサポーターの構造は、政治的エリートに対する不満と強い反感を持つ層で構成されており、そのなかで彼は『アメリカの再生』を訴え続けた」と分析。

「トランプの復活は、アメリカの政治が極端に分裂し、二極化していることを浮き彫りにした。彼の勝利は、アメリカが直面している文化的、経済的、そして民主主義的な危機に対する反応として、過去に存在した強権的なリーダーを求める動きが再浮上していることを示している」とも述べ、トランプ再選の背景を紐解く。

今後については、「今回の任期では、より多くの権限を手に入れ、大統領職を掌握し、ディープステート(政府内の権力構造)を制御し、反対する者を攻撃するための力を強化するだろう。これにより、彼の政権は従来の政治の枠組みを越え、アメリカを再編成しようとする動きが強まる」と予測。また、「トランプは民主主義を失敗した制度として扱い、権威主義的なリーダーシップを支持する立場を取っている。彼は独裁者を賞賛し、アメリカの民主主義を破壊しようとしている。彼の発言や行動は、しばしば過激であり、反対者を“害虫”や“内部の敵”として扱うことがあり、その結果として暴力に訴える可能性もある」と警笛を鳴らす。

トランプの選挙勝利は、2021年1月6日に起こった米合衆国議会議事堂襲撃事件にも深く関連していると述べ、本事件はトランプの支持者によって行われた暴力的な行動で、民主主義に対する脅威として認識されたが、トランプの復帰によりこの事件が“愛国的な行動”として再評価される可能性を示唆している。一方で、バイデン大統領とカマラ・ハリス副大統領は、任期中に「国の分断を止める」という公約を果たせなかったと指摘。「特にハリスは、ポジティブで希望に満ちたメッセージを発信しようとしたが、トランプの戦闘的で攻撃的なアプローチに対して効果が薄かったとされている。トランプはより多くの権限を手に入れ、アメリカを自身のイメージに変えていくだろう」と分析。最後に、「トランプのアメリカは、政治的に極端に分断された時代であり、今後は、権力の集中が支配する時代が続くことになるだろう」と締め括った。

「この勝利はトランプが歴史的な政治人物として定着したことを証明した」──ウォール・ストリート・ジャーナル

Republican nominee Donald Trump's victory speech in Florida

「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙では、トランプは生活費の高騰や不法移民などの国民の不安に働きかけ、ハリスに対して決定的な勝利を収めたと報道。アメリカ史上、非連続的なホワイトハウスの任期を勝ち取った2番目の候補者となったこと(1番目はグロバー・クリーブランド元大統領)、数週間に渡る世論調査の結果を覆したことについて述べた。

「この勝利は、トランプが人々を疎外するような大胆さや、根拠のない選挙不正主張にもかかわらず、歴史的な政治人物として定着したことを証明し、2016年のヒラリー・クリントンに対する驚きの勝利が偶然ではなかったことを示している」とし、同氏が、ノースカロライナ州やジョージア州、ペンシルバニア州、ミシガン州、ウィスコンシン州などの重要な激戦州を制し、特に大学未就学の労働者層から強い支持を受けたと分析。またインフレ率は安定し始めていたが、長期に渡る痛みが増していたことが、変革を求めるトランプの訴えを後押ししていたと指摘。同紙が行った調査で、多くの有権者は国が「間違った方向に進んでいる」と感じており、これがトランプの支持拡大に繋がったと解説した。

当初、トランプはバイデンに対して世論調査で圧倒的なリードを取っていたが、ハリスはアメリカ初の女性大統領を目指し、すぐにその差を縮めた。一方でトランプは、二度の暗殺未遂事件に遭い、連邦選挙干渉の容疑で起訴され(無罪を主張)、ポルノ女優に支払った口止め料を隠蔽するため記録を偽造したとして有罪判決を受けながらこの選挙を闘った。またキャンペーンを通じて、差別的で攻撃的な言葉を使ったが、支持者にとっては型破りな政治スタイルが、魅力的に映ったのだろう、と論じた。

「ワシントンポスト」紙は、選挙戦を通じたトランプの支持基盤の変化を指摘

Harris at Howard University

「ワシントンポスト」紙は、選挙戦を通じたトランプの支持基盤の変化を記述している。トランプは、白人男性や大学未卒の有権者を中心とした従来の支持層をキープしつつ、ラティーノ(ラテン系アメリカ人)、有色人種、そして若年層など、これまで共和党にとって難しかった層からも支持を得ることに成功した。

この結果、長年にわたり民主党が獲得してきた地域でも、トランプの支持が拡大し、従来の枠組みが劇的に変化したという。ペンシルベニア州では都市部や高所得層の郊外、ウィスコンシン州では黒人層、ミシガン州ではアラブ系市民の支持を得たほか、ジョージア州とウィスコンシン州の農村部での得票率も大幅に拡大。これにより、アトランタやミルウォーキーといった大都市圏でのカマラ・ハリスの優位を容易に覆したのだ。

共和党の世論調査員、ウィット・エアーズは「トランプは共和党を多民族で労働者階級に支持される政党に変え、以前よりも低所得層に訴求するようになった。伝統的な共和党の支持層は、より裕福で教育を受けた中産階級の人々で構成されていたが、現在ではより低所得でブルーカラーの労働者階級が支持基盤になっている。かつてはそれが民主党の支持基盤だったのに、今では違う」と話す。また今回トランプは、伝統的に民主党が強いとされてきたニュージャージーやニューヨーク、バージニア、ニューメキシコなどの州でも、予想以上の良い成績を収めたことについても言及。

「トランプと共和党は、2020年の大統領選挙や2022年の中間選挙で、鍵となるラテン系の支持を広げることに力を入れていた。トランプ陣営はラティーノ男性や若年層、これまで投票に参加してこなかった人々をターゲットに集中的なキャンペーンを展開。彼らへのメッセージの多くでは、過去4年間の経済的苦境を民主党のせいにし、特にインフレがラティーノと黒人の家庭に不均等な影響を与えていることに焦点を当てていた」と分析。さらに、「トランプはラティーノを分断しようと移民に対して差別的な発言を繰り返す一方で、長年アメリカに住んでいるラテン系の人々を“勤勉なアメリカ人”として描写した」とも記された。

加えて、民主党がヒスパニック層の支持を失っている明確な兆しも見られたという。世論調査によると、ハリスはバイデンを含めたほかの民主党大統領候補と比較して、常にその支持数が下回っていたと解説した。

Presidential election in Minneapolis

アメリカのメディアでは、トランプの勝利が権威主義の強化を招く懸念が広がっており、彼の過去の発言や提案した政策が社会に与える影響への不安も増している。トランプの再任は国内だけでなく、国外の政治情勢にも大きな変容をもたらす可能性があり、その影響を巡る懸念はますます高まっていると言えるだろう。

Text: Azumi Hasegawa Editor: Nanami Kobayashi

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