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絶滅危惧種を守れ! 獣医師の著者が綴る、野鳥や野生動物と人間との「本当の共生」とは?

  • 2024.11.7
ダ・ヴィンチWeb
『僕は猛禽類のお医者さん』(齊藤慶輔/KADOKAWA)

生態系の頂点に立つ勇壮な猛禽類が、絶滅の危機に瀕している。しかも、人間が関わる交通事故や鉛中毒によってーー。『僕は猛禽類のお医者さん』(齊藤慶輔/KADOKAWA)には、オオワシ、オジロワシ、シマフクロウの救護に奮闘する野生動物医の活動が記されている。

著者の齊藤慶輔氏は野生動物専門の獣医師で、環境省の「釧路湿原野生生物保護センター」を拠点とする「猛禽類医学研究所」の代表だ。本書には世界でも類を見ない猛禽類の救護活動や、傷病で野生に帰れないオオワシたちの日常風景、著者が初めて語る生い立ちまで収録。「野生動物とのより良い共生」の実現に向けて、ぜひ手に取ってほしい一冊だ。

「猛禽類ってすごい」から始まった野生動物医への道

野生動物医として活動する著者の齊藤氏は、幼少期に自然が豊かなフランスで動物を遊び相手に育った。猛禽類を診る獣医師への道を決定づけたのは、20歳ごろに出会ったイヌワシだという。自分よりも大きな翼を広げて滑翔する姿に畏怖の念を抱く一方、人間によって絶滅の危機に瀕していることを知ったからだ。

北海道にある環境省の「釧路湿原野生生物保護センター」の調査研究員に着任してから、オオワシ(写真)やオジロワシの救護も手探りで始め、2005年には「猛禽類医学研究所」を設立。以来、スタッフと一丸になって傷ついた野生動物を救うために奮闘している。

動物も人間も安心して暮らせる環境を治療で取り戻す

齊藤氏が診たオオワシたちの傷病や死亡の原因は、自動車や列車にひかれる交通事故、狩猟用鉛弾による鉛中毒、発電用風車への衝突事故など、人間との軋轢(あつれき)によるものだ。けがを治して野生に帰した鳥が、再び事故に遭って収容されることさえあるという。

事故の原因を突き止めて安全な環境に変えるため、行政や企業と連携して「環境治療」と名づけた取り組みを行っている。たとえばワシの交通事故はエゾシカの轢死体に引き寄せられて発生するため、速やかに隠すための「エゾシカ轢死体覆隠(ふくいん)シート」を開発。その他、野鳥の感電対策やシマフクロウの溺死対策も採用されている。

猛禽類はイクラ好き!意外な一面に親しみを感じる

本書では猛禽類の微笑ましい日常も垣間見られる。巨大なくちばしでイクラを一粒ずつ大切につまんで食べるオオワシ、サンマが嫌いでハンガーストライキをするオジロワシ、野生に帰れなかったシマフクロウとの交流など、秘蔵エピソードも見逃せない。「彼らに親しみを感じて、これからも共生していきたいと思ってくれたらうれしい」と齊藤氏は言う。

人間もかつては野生動物だったが、生態系を一瞬で破壊する力を持ってしまった。その代わり、彼らを守る力も振るえるはずではないか。本書に記された猛禽類の救護活動が伝える自然界の声なき声に耳を傾けてほしい。

文=金子志緒

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