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はれて宇宙飛行士に! 米田あゆさん・諏訪理さん単独インタビュー

  • 2024.11.7

ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第391回)

ニッポン放送のインタビューに応じた米田さんと諏訪さん(10月24日撮影)
ニッポン放送のインタビューに応じた米田さんと諏訪さん(10月24日撮影)

国内では衆議院選挙が終わり、政治のニュース一色の感がありますが、実はその間、科学技術の分野も大きく動きました。ノーベル賞はAI関連の受賞が相次ぎました。宇宙開発の分野では11月4日にH3ロケットの4号機が無事、打ち上げに成功しました。そして、今回取り上げるのは米田あゆさん、諏訪理さん。10月21日付で、JAXA宇宙飛行士に認定され、23日には記者会見が行われ、2人は訓練用のブルースーツで姿を見せました。

「子どもたちに向けて、宇宙の魅力、何かに一生懸命に取り組むことはとても楽しいこと、そんなことを伝えられる宇宙飛行士になりたい」(米田さん)

「宇宙開発はいま過渡期、変わっていく環境に適応しつつ、貢献できる宇宙飛行士を目指したい」(諏訪さん)

米田あゆさんは29歳、日本赤十字社医療センターの医師から、諏訪理さんは47歳、世界銀行上級防災専門官からの転身です。JAXA=宇宙航空研究開発機構によると、2人が宇宙飛行士候補者に選抜されて以降、日本実験棟「きぼう」のシステムの概要、宇宙で行う実験に関する知識の習得、健康管理や体力訓練、航空機操縦、語学、一般サバイバル技術、スキューバなどの習得を目的とした基礎能力の訓練などが実施されました。そんな多くの経験を経ていよいよ「候補者」の肩書が取れ、2人ははれて宇宙飛行士認定となったわけです。

はれて宇宙飛行士に 東京都内で記者会見が行われた(10月23日撮影)
はれて宇宙飛行士に 東京都内で記者会見が行われた(10月23日撮影)

会見では、印象に残った訓練を諏訪さんと米田さんが振り返りました。

「パラボリックフライト(無重力環境の体験)。初めて無重力を体験して、ふわふわ浮いているのを想像するのと、実際自分が無重力を体験するのとでは、結構違って本当に不思議な感覚だった。“天井が急に床に感じた”という感覚が非常に面白く、これがずっと続いているのが国際宇宙ステーション。想像力をかき立てられる訓練だった」(諏訪さん)

「チャレンジングな訓練としてはロボットアームの訓練。アームを操作する中で、宇宙ステーションではカメラの数が限られている。操作をするだけでなくて、カメラの位置を把握して、どこから見るとアームの動きがとらえやすいか、認識するまで少し時間がかかった。実践に応じた難しさをロボットアームでは感じた」(米田さん)

そして、記者会見の翌日、2人はニッポン放送の単独インタビューにも応じてくれました。今回はその模様をお伝えしていきます。

■いまの心境、ぱっと思い浮かぶことは?
(畑中)改めて今の心境は?

(米田)ワクワクとうれしいという気持ち。ようやく宇宙飛行士に慣れたというところ、これからどんなことが待ち構えているんだろうという2つの気持ちが大きいです。

(諏訪)ホッとした所もあるが、うれしくて。認定された時に、周りでサポートして下さった人も一緒に喜んでくれた、それを見てさらにうれしくなりました。これからまた新しい訓練が始まる、気をまた引き締め直して訓練に挑んでいこうと思っています。

(畑中)いま、パッと思う浮かぶような出来事は?

(諏訪)本当にいろんなことがありました。あれから1年しか経っていないのかという心境。本当に密度の濃い1年間だったので。この年になると1年1年って、割とあっという間に過ぎちゃうという時が多いのだが、本当に長く感じました。本当にいろんなことがあった2年間でした。

(米田)いま思い返すと、基礎訓練が終了したタイミングで、お疲れさまでした、おめでとうございましたというような会を開いていただきました。われわれのことを一番近くで支えてくださったり、訓練の調整をして下さった方が、われわれが無事に終えられたことに対して、少しウルっとされていて、それがすごく印象的だったし、そういった皆さんの思いとともにわれわれ基礎訓練を終えることができたんだな、その思いとともに、われわれ次のステップに向かって進んでいくんだなと感じています。

記者会見終了後、撮影に応じる米田さんと諏訪さん(10月23日撮影)
記者会見終了後、撮影に応じる米田さんと諏訪さん(10月23日撮影)

■冷静沈着の諏訪さん、秀逸な表現力の米田さん 2人の個性
私はこれまで米田さん、諏訪さんの訓練風景などを取材し、その中で2人の個性を感じ取っていました。諏訪さんで印象に残っているのは、その冷静沈着さです。

(畑中)諏訪さんは、なぜこんなに冷静沈着でいられるんだろうと。

(諏訪)そんなこともないですけど(笑)

(畑中)自分で心がけていることは?

(諏訪)何かあった時にワンテンポおいてからというのは少しは念頭においています。ワ~ってなった時に、頭に浮かんできたことを何も考えずにパッとやっちゃうと、なかなかうまくいかないこともあるという昔の経験もあるので。緊急事態的なことがあった時には、とりあえず何かしなきゃと思うのですが、ちょっとワンテンポおいて、ちょっと落ち着いて考えてみようというのを意識はしています。

一方の米田さん、8月の航空機のシミュレータを使った訓練では、宇宙飛行士の訓練について、「一つ一つ知っていくと、ピントがあったような感じがしていく。そうすると、解像度がより深くわかるようになっていく」と話していました。「ピントが合う」という表現は報道陣をうならせるものでした。

(畑中)「ピントが合ってきた」という表現が秀逸だと思ったが、表現力の点で気を付けていることは?

(米田)何かに例えたら伝わりやすいとか、そういうことは普段から思ったりしています。あとは、物を擬人化してみるとイメージが伝わりやすいかなと思っているので、比較的表現として使うことは多い気がします。

(畑中)非常にラジオ向き……。

(米田)よかったです(笑)。でも表現力の面でもまだまだこれからだなと思っているので、訓練をがんばっていきたいです。

(畑中)宇宙飛行士としての“ピント”は合ってきたか?

(米田)振り返ってみると、基礎訓練を始めたころよりはピントが合っているなとは思っていますが、カメラの技術が進んでいくという感じかもしれません。いまはいま時点でのピントの合い方をしていますが、これからさらに細かいところまで見られるようなピントが合ってくるんじゃないか、合わせていかないといけないなと思います。

■月面探査への思い、AIとの関わり、そして、さらなる成長へ
(畑中)宇宙に行ったら、月に行ったら何をしたいか?

(諏訪)宇宙か月かわかりませんが、3つ興味があります。一義的には宇宙開発、科学の成果の創出が重要ですし、低軌道だったら今後の惑星探査に向けての技術実証があると思います。科学や技術の進展の先端の部分に関わらせてもらうのはワクワクしますし、楽しみながらやっていきたいと思います。

あとは私もそうでしたが、宇宙飛行士が宇宙から地球を見てどう思ったかを伝えていただくのはモチベーションもわくし、インスピレーションもわく、自分が見てどう思うのか、どういう言葉で伝えられるのか、非常に楽しみにしています。

3つ目は無重力の中で生活をして仕事をするってどんなことだろうというのは本当に楽しみで、ありとあらゆること、宙返りから宇宙食を空中に浮かして食べてみるということ、重力があるとできないことをすべてやってみたいと思っています。

(米田)スリム(月探査機)とか、アポロで実際に月面に行かれた方の、ある種、偉大な成果、跡が月には残っていると思うと、不思議な世界だと感じます。そこでわれわれが行って新しい歴史を刻むということですね。それはすごくワクワクしますし、これでアルテミス計画の中で、これから人類が月だったり火星だったり、より長期に滞在するということを今後見通していくと思うんですが、そこでの生活だったり、もしかすると、植物を育てたりするのかもしれません。そういった、“月産”の野菜だったり、新しいものをトライしてみたいと思います。

(畑中)月に行くころには、AIと仕事をしていく時代も来るのかなと思いますが……。

(米田)これからの時代、AIの力を借りて、借りずにいる人類よりもAIの力を借りて、成長する人類の方が圧倒的に進歩のスピードが早くなっていくと思うので、宇宙開発の側面においても、AIの技術をより積極的に取り入れていくべきだと思います。

(諏訪)アポロの時も、最初コンピュータプログラムを導入するので、テストパイロットの人たちに非常に抵抗があったという話を聞いたことがあって。何かよくわからないものを信じて、それと一緒に仕事をするってどんなんだということがあったと聞きました。

もちろん、当時のコンピュータはいまのAIに比べれば、非常に原始的なものだったと思うのですけど、その後、コンピュータが当たり前のように宇宙開発の中で使われるようになって、宇宙飛行士がその技術と一緒に仕事をするということがあった、そういう歴史を考えると、AIも当然入ってきて、使われるか使われないかではなくて、どういうふうに一緒に働いていくのかということが、今後問われてくるんだろうなと思っています。

ロボットともいろいろ仕事をする機会が増えていると思うのですが、AIと一緒に仕事ができる日、本当にどんな世界なのかなというのをワクワクしながら待っているところですね。

(畑中)生活の部分に……宇宙食はいまはウナギも食べられるそうだが、宇宙に行くと恋しくなる食べ物は?

(米田)難しい質問……。

(諏訪)素晴らしい質問ですね……、恋しくなるものって、食べられなくなるものだと思うんですよね。そう考えると、いま宇宙に行って食べられないものって生鮮食品とか、生ものとか、きのうもおいしいお刺身を食べたりしたんですが、お刺身もおそらくまだ宇宙では食べられないと思うので、そういったものが恋しくなってくるんじゃないのかなという気はちょっとしています。

(米田)私は麺類が好きなんですけど、宇宙食でもいまありますが、日本人ならではの(すする仕草をしながら)すするってのはなかなか重力がないとできないことなので、思い切りすすって食べるというのは、恋しくなるんじゃないかなと思いますね。

(畑中)いいシズル感、落語家にもなれるのでは?

(2人)(笑)

インタビュー後の米田さん、諏訪さん(10月24日撮影)
インタビュー後の米田さん、諏訪さん(10月24日撮影)

(畑中)最後に選抜後、1年半あまりで(自身は)成長したと思うか?

(米田)もちろん、成長させていただいたという言葉になると思います。飛行士になるにあたってどういった姿勢でいるべきなのか、社会に対してどういうふうに貢献していくのか、そういったマインドを広く考えるようになったかなと思います。これからは訓練をただ受けるだけの存在ではなく、宇宙飛行士としてお役に立てることをしていかなければならないと思うので、精神的な面でも成長したかなと思います。

(諏訪)いろんな知識を学ばせていただいたという意味においては、成長したと信じたいと思っていますが、体力的には若くありたいと思っていても、年は取っていくわけですし、逆に成熟したいと思っても、なかなかこっちは成熟せずに若いままというのか、幼いままでいたりということもあるので、人間の成長というのは難しいなというのを日々、訓練に向き合いながら考えていました。これからも体力的にも頑張っていきたいと思いますし、人間としての成熟ももうちょっとは何とかなるように、日々精進を重ねていきたいと思っています。

インタビューは将来の月面探査への思いなど多岐にわたりました。そして、2人の個性、諏訪さん、米田さんの“好物”もわかりました。諏訪さんは47歳、40になると不惑の年だなんて言いますが、いやいやまだまだ、かく言う私もいまだ迷いっぱなしですし、諏訪さんは迷いながらも成長していこうという謙虚さを感じます。そして常に前向きな米田さん、次世代の宇宙飛行士としての魅力なのだと思います。2人はすでにアメリカ・ヒューストンに向かい、実際の宇宙飛行に向けた訓練を続けていることでしょう。

(了)

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