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長引く咳、もしかして50代以上の女性に多い「肺マック症」かも!

  • 2024.12.27

咳が長引く傾向にある今年の風邪。流行中のマイコプラズマ肺炎ではない、ほかの病気の可能性も。今回は、40代以上の女性に多い「肺マック症」について解説します。
「肺MAC(マック)症」は、中高年女性に多くみられる肺の感染症。原因菌は浴室や庭の土など身近なところに存在し、近年の患者数は増加傾向にあります。

中高年女性に多い「肺MAC(マック)症」とは

肺MAC症は、「Mycobacterium avium complex(マイコバクテリウム・アビウム・コンプレックス)」(略称MAC:マック)という菌による肺の感染症です。

40代以上のやせ型の女性に多くみられ、近年の患者数は増加傾向にあります。MAC菌は水回りや土の中など身近なところに存在しています。自分でも気づかないうちに感染することがほとんどで、多くは感染してから10年以上かけてゆっくり進行します。なお、人から人へ感染することはないとされています。

長引く咳などの症状がある

肺MAC症に感染しても、初期段階では無症状のことが多く、健康診断や人間ドックのレントゲン検査で見つかる人もいます。

進行すると咳やたんが長引いたり、微熱、倦怠感、体重減少、血痰(けったん)などの症状が現れたりすることがあります。血痰とはたんに血が混じっている状態で、のどや肺などからの出血のサインです。思い当たる症状があれば早めに医療機関を受診しましょう。

検査・診断方法

肺MAC症は結核などほかの肺の病気と症状が似ているため、複数の検査をして診断します。胸部X線検査、胸部CT検査、血液検査、喀痰(かくたん)検査、気管支鏡検査などを行います。

喀痰検査ではたんを採取して菌の有無を調べますが、1回の検査で陽性になっても診断確定にはなりません。MAC菌は身近なところに存在しており、検査のときに誤って菌が混入した可能性も考えられるためです。2回の検査で陽性になれば診断が確定します。

たんが出ない場合には、菌の有無を調べるために気管支拡張検査を行います。気管支拡張検査で菌が検出された場合は1回で診断が可能です。

治療は薬物療法が基本

現時点で肺MAC症を完全に治す治療法は確立されていません。しかし、多くはゆっくりと進行し、軽症の場合は自然軽快する人や、経過観察のみで生活している人もいます。ただし、その場合も定期的に検査をして病状を確認する必要があります。

咳やたんなどの症状がある場合や、病変が進んでいる場合は治療を行います。治療は抗生物質による薬物療法が基本です。効果が弱い場合は注射を併用することもあります。また、病変を取り除く手術を行うケースもあります。

肺MAC症は再発や再感染が多い病気です。そのため、菌が検出されなくなってもしばらくは薬物治療を続ける必要があり、年単位で治療が行われます。また、治療を終えた後も定期的な検査が必要です。

日常生活でできる予防法

肺MAC症を引き起こす菌は水回りや土の中など身近なところに存在し、水滴やほこりを吸うことで感染すると推測されています。感染源として考えられているのは、ガーデニングや農作業、浴室の吐水口や排水口、シャワーヘッドなどです。

予防のためには、菌を吸う機会をなるべく避けるために以下のことに気をつけましょう。
● ガーデニングや家庭菜園では土埃を吸わないようにマスクをする
● 風呂掃除は換気をしながらマスクをして行う
● 浴室の清掃と乾燥を心がける

(まとめ)
肺MAC症は軽症であれば経過観察のみで過ごす人もいますが、治療には時間がかかり、根気よく付き合っていく病気です。まずは予防のためにできることを行い、気になる症状があれば早めに医療機関を受診しましょう。

構成・文/大人のおしゃれ手帖編集部 画像協力/PIXTA
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

この記事の監修者

医療法人ONE きくち総合診療クリニック 理事長 菊池大和

菊池大和

2004年3月、福島県立医科大学医学部卒業後、湘南東部総合病院外科・外科科長などを経て、令和元年5月1日より現職。「総合診療、救急診療を通じて、地域医療に最大限に貢献する」ことを目的に日々診療を行う。 救急センター長日本救急学会救急科専門医、日本外科学会外科専門医、日本慢性期医療協会総合診療認定医、日本医師会認定健康スポーツ医、認知症サポート医身体障害者福祉法指定医(呼吸器)、厚生労働省初期臨床研修指導医、神奈川県難病指定医、エピペン処方認定医

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