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“人生の中で大切にしておきたい言葉が出てくる” 今振り返っても心に染みる、7年前の“名作ドラマ”の名言

  • 2024.12.30
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(C)SANKEI

2017年1月に放送された『カルテット』(TBS系)は、後に続く『大豆田とわ子と三人の元夫』や『初恋の悪魔』など、坂元裕二の雑談系ドラマのはしりになる作品だ。大きなストーリーの流れのなかに、細かく差し込まれる会話劇が楽しく、深い。胸に抱いて大切にしておきたいドラマになっている人もいるだろう。

“行間”を読むミステリアスなドラマ

『カルテット』は、ドラマティックな展開を真正面から描くようなドラマではない。主人公・巻真紀(松たか子)と夫・巻幹生(宮藤官九郎)との関係の真相や、真紀の戸籍にまつわる秘密など、ストーリーの軸となるミステリアスな部分はありつつも、その隙間に登場人物たちの何気ない、言ってしまえば無駄に感じるような会話がある。それが最大の魅力なのだ。

この物語は、偶然を装って集まった弦楽カルテット「ドーナツホール」のメンバーが、軽井沢で送る日常が描かれている。第1ヴァイオリンの真紀、チェロのすずめ(満島ひかり)、ヴィオラ・家森(高橋一生)、第2ヴァイオリン・別府(松田龍平)が食卓を囲んだり、歯を磨いたり、暖炉であったまって夜を過ごしたりしながら、「唐揚げにレモンをかけるかかけないか」「ベランダに溜まったゴミを誰が捨てるか」などの会話が繰り広げられる。

登場人物たちの何気ない会話から感じるのは、彼ら彼女らの生きることの下手くそさだ。それぞれに事情があり、普通とは言いづらい人生を送ってきた登場人物たち。作中のセリフにあるように、「欠点で繋がっている」4人の会話を聞いていると、クスッと笑いつつ、自分の欠点も許容しようと自然に思えてくる。

そして、この何気ない会話の中に、人生の中で大切にしておきたい言葉が出てくるのだ。なかでも第3話に登場する「泣きながらご飯食べたことある人は生きていけます」というセリフ。人生に絶望して泣きながらも、生きるためにご飯を食べる生命力を端的に表しつつ、今生きようともがく人に寄り添う言葉だ。心に真っ直ぐ突き刺さってくる杭のような言葉の数々。このドラマをセーブポイントとして、この先の人生を送っていこうと決心させてくれるドラマなのだ。

このドラマが、後の名作のきっかけに

『カルテット』は、当時TBSのプロデューサーだった佐野亜裕美の、「坂元裕二とドラマを作りたい」という希望から始まった。当時、テレビドラマへの出演が少なくなっていた松たか子のブラックコメディエンヌの姿を見たいという、佐野の希望から立ち上がった企画だという。

今となっては、坂元裕二作品の常連であった松だが、実は『カルテット』がはじめての坂元作品への出演。坂元が書くウィットに富んだセリフと松の自然な芝居の相性の良さを、世に知らしめたドラマと言えるだろう。また、『カルテット』のチーフプロデューサー兼メイン演出を務めているのは、土井裕泰。『カルテット』は、ドラマ『猟奇的な彼女』に続く坂元×土井の2作目となる作品で、後に映画『花束みたいな恋をした』に繋がっていく。

2025年には、坂元×松で映画『1ST KISS ファーストキス』、坂元×土井で映画『片思い世界』が公開予定。その準備として、ドラマ『カルテット』をぜひ見ておこう。きっと、あなたの人生のヒントとなるセリフに出会えるはずだ。


ライター:古澤椋子
ドラマや映画コラム、インタビュー、イベントレポートなどを執筆するライター。ドラマ・映画・アニメ・漫画とともに育つ。X(旧Twitter):@k_ar0202