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「深夜にメンバーに連絡」は要注意サイン…職場で増殖「有能なリーダーを疲弊させる新タイプの仕事」とは

  • 2024.11.5

通常の業務に加えて、他部署や組織外の人々との協働プロジェクトなどに追われ、疲弊している人も少なくないだろう。グロービス経営大学院教授の若杉忠弘氏は「今、リーダーの“コラボ疲れ”が増えている。不要なコラボの量を減らし、コラボの質自体も高める必要がある」という――。

※本稿は、若杉忠弘著『すぐれたリーダーほど自分にやさしい』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

オフィスで頭を抱えるビジネスマン
※写真はイメージです
優秀なリーダーほど”コラボ疲れ”が増えている

今、リーダーが参加しなければいけないミーティングは増えるばかりです。定例のチームミーティングや部門内のミーティングはもちろんのこと、メンバーとの定期的な1on1ミーティングもあります。

部門横断のプロジェクトが数多く立ち上がり、そのための進捗ミーティングにも出席する必要があります。さらに、組織の外のプロフェッショナルやパートナー、時には顧客とも協働するケースも増えてきました。

こうしたコラボレーションに疲れてしまうことを、「コラボ疲れ」といいます。今、このコラボ疲れが猛威を振るっているのです。ある調査によれば、コラボレーションに費やしている時間は、1日に働く時間の8割も占めていると言われています。そして、この時間は、過去20年間で50%以上増えているというのです。

さらに、コラボレーションの負荷は、優秀な人にとくに集中しやすい傾向にあります。実際、企業の中で起きているコラボレーションの20~35%は、社員のわずか3~5%で回しているというデータもあります。しかし、どんなにすぐれたリーダーでも、自分のキャパシティを超える負担を抱えてしまっては、いずれ燃え尽きてしまいます。

たとえば、20の企業を対象に実施したある調査では、周りから頼りにされ、さまざまなリクエストを受けているリーダーであればあるほど、仕事の熱意も低くなり、自分のキャリアにも満足をしていなかったというのです。

コラボ疲れを引き起こす9つの心理

コラボレーションを20年以上研究しているバブソン大学のロブ・グロスは、コラボレーション過剰を引き起こす9つの心理を洗い出しています。自分に当てはまるものがないかどうかを確認しながら、読んでみてください。

①人助けをして、役に立ちたいと思っていると、自分が処理できないほど、たくさんのリクエストを受けてしまうことになる。

②何かを達成したときの充実感を追い求めていると、数多くのプロジェクトに関わるようになり、自分のエネルギーを重要な仕事に集中させることができない。

③自分の専門性を活かして、影響力を高めたり、認められたりしたいと思っていると、必要以上に周りが自分に依存してしまう。

電卓で計算する税理士の手
※写真はイメージです

④協力しないと、周りから非協力的だと見られるのが怖くて、もうキャパシティが一杯なのだけど協力してしまう。

⑤いつも正しくありたいと思っていると、完璧を求めすぎて、必要以上に準備に時間を使ったり、調整業務に時間をとられたりしてしまう。

⑥プロジェクトの主導権を失うのが怖かったり、自分は一番仕事ができると思い込んでいると、周りに仕事を任せることができない。

⑦解決を急ぎたいと思っていると、夜遅くにメンバーにメッセージを送ったり、まだ練り切られていないタスクをメンバーに振ったりして、プロジェクトに悪影響を及ぼし、結局、その交通整理のために自分の仕事が増えてしまう。

⑧混沌とした状況や、その場に応じて臨機応変に対処することへ苦手意識をもっていると、計画を無理に完璧にしようとしたり、メンバーのコンセンサスを得るために余計な作業を増やしたりしてしまう。

⑨あれもこれもやらないと、後れをとってしまうと思っていると、必要以上にいろいろなことに手を出してしまい、どれも中途半端になってしまう

コラボレーションの量を減らすエクササイズ

こうした心理が、私たちをコラボレーションへと無意識に向かわせ、自分のキャパシティさえも超えて、いつの間にかスケジュールを一杯にさせるのです。もちろん、こうした心理や考えそのものが悪いのではありません。当然、人助けも、専門性を活かすことも重要です。

しかし、この考えだけで突き進むと、いずれ自分の心身を壊してしまい、最終的には、人助けも専門性を活かすこともできなくなってしまうことが問題なのです。

コラボレーションの1つひとつのタスクは小さくても、それが少しずつ積もると、いつの間にか、私たちのキャパシティを超えてしまうことがあります。まず、あなたをコラボレーションに追い立てる心理があるかどうかを探っていきましょう。

[質問1]
最近、どのようなコラボレーションの場面で疲れを感じたでしょうか。そのとき、何が起きていたでしょうか。どんな気持ちになったでしょうか。
[例]
経理として各事業部をサポートしているが、さまざまなリクエストの対応に疲れてしまっている。リクエストの中には、単純なデータの加工など、事業部で対応すべきものもあった。本当に私のチームでやるべきことなのかと思った

自分を必要以上に駆り立ててしまう心理

[質問2]
あなたをコラボレーションに追い立てる心理は何でしょうか。先の9つの心理をもっていると、コラボ疲れが起きる可能性があると言われています。自分を必要以上にコラボレーションに関わらせている心理があれば、その内容を書いてみてください。
[例]
「④協力しないと、周りから非協力的だとみられるのが怖い」という気持ちは確かに自分の中にある。事業部への対応を断ると、イヤな顔をされ、自分のチームの評判が落ちるのを恐れていると思う。必要以上に恐れていることに気づかされた [質問3]
今後、コラボレーションの量を減らすために、どのような行動をとりたいでしょうか。次の行動の例を参考に、考えてみてください。
・コラボレーションに関わるタスクのいくつかをメンバーに任せる
・自分が対応しなくてもよいタスクを断る
・どのコラボレーションに関わるかについて、ガイドラインを事前につくっておく
・優先順位の高い予定は、準備時間も含めて先にスケジュール上で確保し、残された時間でやりくりをする
・空いているスケジュールを見える化するなどして、自分のキャパシティを周りに知らせる
・自分の時間を使うのではなく、人の紹介や情報の共有で対応できないかを考える
・個別に対応するのではなく、まとめて対応できないかを考える
[例]
経理チームとして、引き受けるタスクとそうでないタスクについて、ガイドラインをつくり、それを事業部に伝えて、理解を求めていこうと思う

コラボレーションの質を高めるエクササイズ

[解説]

このエクササイズの目的は、コラボレーション過剰に向かわせている隠れた心理に気づくことです。このエクササイズに慣れてくると、コラボ疲れの早い段階で、手を打てるようになります。「もうぐったりだ」という段階にまできてしまうと、回復に時間がかかりますが、「ちょっと疲れがたまってきたな」という段階で手を打てれば、早く回復できます。

事業について会議するビジネスマン
※写真はイメージです

次はコラボレーションの量だけでなく、質も最適化する方法を試してみましょう。今、コラボレーションで、相手と意見が一致していない出来事を1つ取り上げてください。相手の意見や行動に、あなたがしっくりきていなかったり、賛成できなかったりした出来事です。

[質問1]
それはどういう出来事ですか。そのとき、どんな感情が湧き起こりましたか。自分の中にどのようなニーズがあったのでしょうか。
[例]
人事担当から、次年度の要員計画について各部門にメールで問い合わせがくる。共有のスプレッドシートに入力できるようにすれば、もっと楽なのに。なんて非効率なことをしているのだろうと思い、イライラする。この感情を抱いた理由を考えると、自分の中には時間を大事にしたいというニーズがあると思う [質問2]
相手はどのような状況に置かれているのでしょうか。相手にはどんな感情やニーズがあるでしょうか。
[例]
相手の担当者は経験が浅く、毎年のやり方をただ踏襲しているだけなのかもしれない。相手もきっと、煩わしい業務にうんざりしていて、業務の効率化をしたいというニーズをもっているのではと思う。

自分自身で心身を整え、前に進めるようになる技術

[質問3]
自分のニーズと相手のニーズを満たすために、どんな行動をとってみたいでしょうか。
[例]
簡単なスプレッドシートのフォーマットをつくり、一度、担当者に「こんなやり方はどうですか」と提案してみたいと思う。これでお互い楽になれたらいいな。

[解説]

このエクササイズで、相手のニーズをつかむためには、今世界的に注目されている「セルフ・コンパッション」のアプローチが有効です。

セルフ・コンパッションとは、ひと言で言えば、「自分にやさしくすること」。そうすることで、自分自身で心身を整え、安心感を得て、自信をもって前に進むことができます。このセルフ・コンパッションで自分に向けている態度や行動を、そのまま相手に向けていけばいいのです。

黒板に1から3のステップを書く子どもの手
※写真はイメージです
若杉忠弘著『すぐれたリーダーほど自分にやさしい』(かんき出版)
若杉忠弘著『すぐれたリーダーほど自分にやさしい』(かんき出版)

もちろん、いつもコラボレーションがうまくいくとは限りません。いや、むしろ、うまく行かないことのほうが多いかもしれません。お互いが納得のいく解決策にたどり着けないことや、決裂してしまうこと、自分の見立て通りにいかないことはいくらでもあるでしょう。

それはつらいことですが、そういう難しい感情に対応するためにも、セルフ・コンパッションがあることを忘れないでください。

本稿では、コラボ疲れへの対処方法について考えてきました。本来のコラボレーションの目的は、効率と成果を上げることです。本稿のエクササイズを参考に、ぜひ本来の目的にかなったコラボレーションを実現させてください。

若杉 忠弘(わかすぎ・ただひろ)
グロービス経営大学院教授
東京大学工学部・大学院を経てBooz Allen Hamilton(現PwCコンサルティング)入社。ロンドン・ビジネス・スクールでMBA取得。帰国後、グロービスにてMBAプログラムのディレクター。一橋大学大学院にて1800人を対象とするセルフ・コンパッションの調査・実験を行い経営学博士を取得。米国の「センター・フォー・マインドフル・セルフ・コンパッション」で講師資格を得て、セルフ・コンパッションのエバンジェリスト(伝道師)として活動中。

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