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未来を予測する夢を見たときは、脳の中でこんなことが起きている。

  • 2024.11.4

人間は一生のうちの約26年を寝て過ごし、一般的に毎晩3~7つの夢を見る。つまり、私たちは人生の大半を夢の国で過ごしているということだ。中には、愛する人を失う悪夢を繰り返し見る人や、子供の頃に住んでいた家が出てくる懐かしい夢を頻繁に見る人もいるだろう。でも、何かに関する鮮明な夢を見て、それが現実になったことはない? ある場合、あなたは“予知夢”として知られる心理現象を体験した17~38%の人々のうちの1人かも。

トレント大学(カナダ)心理学名誉教授のカーライル・スミス博士によると、予知夢とは「のちの覚醒時に起こる出来事を描写しているような夢」のこと。普通の夢と比べて予知夢は、より具体的で架空の要素が少ない。また、このタイプの夢は他の夢より少し短く、主人公は自分だったり他の人だったりするそう。

この現象は世界中で何世紀にもわたり議論され、記録されてきたけれど、予知夢に関する科学的証拠はほとんど認められていない。これは、今日の専門家の多くが予知夢を“疑似科学”とみなしているから。でも、懐疑的な科学者の存在をよそに、一般人口の半数以上は予知夢という概念を信じており、スミス博士いわく多くの人は、少なくとも「人生で1~2回」は予知夢を見たことがあると思っている。

夢分析を専門とする臨床カウンセラーで著書に『A Clinician’s Guide to Dream Therapy』を持つレスリー・エリス博士によると、これまでに報告されている予知夢で最も多いのは、本人の健康に関するもの。「妊娠した夢を見たあとに実際に妊娠が発覚したり、がんや他の病気になった夢が現実になったりした人もいます」

米アリゾナ大学の心理学者で臨床医学助教授のルビン・ナイマン博士によると、こうした予知夢は私たちの心をかき乱し、不安にさせることがある反面、私たちの意識を高め、直感的で深い洞察力を与えてくれることもある。

それにしても、私たちはなぜ予知夢を見るのだろう? 心理学的な観点から予知夢は何を意味していて、私たちは予知夢から何を学ぶことができるのだろう? 専門家が教えてくれた。

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私たちが予知夢を見る理由

主流の心理学には予知夢が起こる理由を説明するエビデンスがほどんどないけれど、エリス博士いわく仮説はいくつか存在する。1つ目の仮説は、夢はその人の最も深い感情や欲望を認識できるというものだ。例えば、あなたが特定の人や物に執着しているときは、その強い感情を反映した夢が潜在意識によって作られる可能性がある。そして、その夢が現実と一致しているようであれば、それが予知夢のように感じられるというわけだ。一部の論文によると、夢は体の微妙な兆候や警告サインを捉え、深刻な病気や精神機能衰退の始まりを予知する可能性もある。

2つ目の仮説はNEXTUPモデル(Network Exploration To Understand Possibilitiesの略)と呼ばれるもの。エリス博士によると、このモデルは、夢は起こりうる現実の体験をシミュレートすることで、あなたが将来直面する可能性のある危機や社会的状況に備えるのを助けてくれるという考え方に基づいている。「夢は、私たちに注意喚起をしたり試運転をさせたりする目的で、さまざまな未来のシナリオを投げかけてきます。その夢が正しくて本当に起こることもありますが、散弾銃のように当たることもあれば外れることもあると言ったほうが適切でしょう。そして当たると、人々は夢が未来を予言したと確信します」

著書『Heads-Up Dreaming』の中でスミス博士は、量子物理学の観点から、予知夢を“将来起こりうる修正・変更可能な出来事”として捉えている。他にも予知夢の仮説には、選択的想起(予知夢には個人的なバイアスがかかっているので、普通の夢より記憶に残りやすく、それが真実と信じるのも簡単という考え方)や、大数の法則(人生でこれだけたくさんの夢を見れば、そのいくつかが将来の出来事と一致するのも当然という考え方)などがある。

さらに、予知夢を作り出したり、予知夢に影響を与えたりする要素は多数あり、これには個人の信念、文化的背景、ライフステージなどが含まれる。また、「多くの人は夢とスピリチュアルあるいは先住民族的なつながりを持っており、夢に対する彼らの見方は西洋の見方と大きく異なります」とエリス博士。

容易には気付かない周囲の信号に対する敏感さや、予知夢や超常現象は真実であるという強い信念も、その人が予知夢を見るかどうかに大きく関わる。夢を専門とする心理学者で占星術師のマイケル・レノックス博士は、「覚醒時に瞑想をして、日頃から心を穏やかにするための鍛錬をしている人は、夢がもたらす直感的な体験を上手く利用できるかもしれません」と話す。

予知夢を見る頻度の増加は、ストレスレベルの上昇、人生の大きな変化、臨死体験、予測不能な睡眠パターン、睡眠薬の使用に紐づいている。また、これまでの研究により、一般的に女性は男性よりも予知夢を信じ、体験する可能性が高いことも分かっている。

予知夢を見ているときの脳内で起きていること

ナイマン博士によると、神経学的に言えば、普通の夢と予知夢にそれほど大きな違いはない。「むしろ、その夢が予知夢かどうかは、あとになってみないと分かりません」

ナイマン博士いわく夢を見ているときは、実行機能(複数のタスクを整理・計画し、同時に行うために必要な一連の認知スキル)と大脳辺縁系機能(感情と記憶の調節と処理を担う脳構造の複雑なネットワーク)が切り離されて、デフォルトモードネットワーク(脳内で相互に接続し、自我を媒介する領域群)も弱まる。

私たちの脳は日々の経験・記憶・パターンを絶えず分析しており、その結果が未来を予測するような夢の形で現れる。「科学的には、夢を見ると目覚めが良くなると言われています」とナイマン博士。「寝て夢を見ることには多くのメリットがあるという経験的エビデンスも存在します。その1つは意識の開放と拡大です」

人はノンレム睡眠中にもレム睡眠中にも夢を見る。でも、エリス博士によると、より面白くて奥深い物語のような夢は、レム睡眠(急速眼球運動)中に見ることが多い。また、レム睡眠中は夢を想起する可能性も高い。スミス博士の話では、これらの点および予知夢の独特な性質を考慮すると、予知夢はレム睡眠中にしか起こらない可能性が高い。「実際のところ、私たちは見た夢のほとんどを忘れてしまいます」とナイマン博士。「もっと覚えていることができれば、予知夢の報告も増えるかもしれません」

予知夢は未来を正確に予測するものというより、自分自身の理解に役立つ直感的な体験である

予知夢に関する誤解の中で最も多いのは、それが未来を正確に予言できるというものだ。確かに一部の夢は予言的に思えるかもしれないけれど、多くの夢は、その人の感情や日常的な体験に紐づいたメタファーやシンボルを表している。例えば、自動車で衝突する夢を続けて見たからといって、あなたの脳が次のドライブ旅行をキャンセルしろと言っているとは限らない。むしろ、その夢は交通事故や人生の大きな変化に対するあなたの恐れを描いている可能性がある。「夢に100%頼るのはやめましょう」とレノックス博士。「予知夢は軽く受け止めて、それが絶対現実になると決めつけるようなことはせず、次に何が起こるかを見守るのがベストです」

もちろん、夢を完全に無視しろと言っているわけではない。エリス博士によると、夢の内容が重要で意味深いと感じる場合は特にそう。あなたの夢は、あなたの精神に関する貴重なインサイトをもたらし、直感が持つ力を証明し、精神的・肉体的・感情的な健康に関する懸念事項に気付かせてくれることがある。「仕事で夢を分析すると、必ず何か価値のあるものが見つかります。ですから皆さんも、夢の内容には是非注意を払ってください」とエリス博士。「そして、私たちが夢を見るのには理由があります。夢に重要な機能がなければ、そもそも体は夢を見るように作られていないでしょう」

自分がなぜ予知夢を見るのか、その予知夢が何を意味しているのかをもっと深く理解したい。そんなときは、親しい友人やセラピストに話してみよう。レノックス博士の話では、直感的に導かれていると感じたことを日記に書いてみるのもいい。「夢が未来を予言していると決めつけるのではなく、夢の内容に注意を払うのはいいことです。夢は、あなたが自分で何とかできる将来の可能性を示しているかもしれません」とエリス博士。「その夢の中の何かが『これについて考えなさい、これに注意を払いなさい、これを調べてもらいなさい』と言っていることも考えられます」

言い換えれば、あなたの夢に将来の出来事を毎回正確に予測する力はないということ。それでも、最後にエリス博士は「自分にとって本当に大切なことを知るうえで、夢は素晴らしいガイドになります」と付け加えた。

※この記事はアメリカ版ウィメンズへルスからの翻訳をもとに、日本版ウィメンズヘルスが編集して掲載しています。

Text: Safire R. Sostre Translation: Ai Igamoto

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