1. トップ
  2. レシピ
  3. 史上初、「排卵」が起きる瞬間をリアルタイムで撮影成功!

史上初、「排卵」が起きる瞬間をリアルタイムで撮影成功!

  • 2024.11.4

「排卵」の瞬間をリアルタイムで撮影することに成功しました。

排卵とは、メスの体において成熟した卵子がその袋である卵胞を破って外に出てくることを指します。

これはメスの体が妊娠の準備をする上で、とても大切なプロセスです。

一方で、排卵は卵巣の奥深くで起こるため、排卵の一部始終を観察することはこれまで出来ていませんでした。

しかし独マックス・プランク研究所(MPI)は今回、メスのマウス個体から卵胞を取り出して、排卵が起きる瞬間を捉えることに史上初めて成功したのです。

その貴重な映像を見てみましょう。

研究の詳細は2024年10月16日付で科学雑誌『Nature Cell Biology』に掲載されています。

目次

  • 「排卵」はどうやって起こるの?
  • 史上初、「排卵」の瞬間を撮影することに成功!

「排卵」はどうやって起こるの?

人間の場合、性成熟に達した女性の体は、約25〜28日周期でやってくる「月経周期」というサイクルを繰り返しています。

排卵はその中の一つのプロセスであり、次のような順番で起こります。

まず、女性の脳から「卵胞刺激ホルモン(FSH)」が分泌されると、卵巣の中で休眠していた「原始卵胞」の成長が促されます。

原始卵胞は複数個が同時に成長を始め、それぞれに「卵子」が1つずつ中に入ってます。

しかし成熟に達するのは1個の卵胞のみです。

次に、成熟した卵胞は「エストロゲン」というホルモンを分泌し、その作用で子宮内膜が増加して厚くなり、受精卵を迎えられる準備をします。

加えて、エストロゲンの作用により、今度は脳から「黄体化ホルモン(LH)」の分泌が促されます。

そして成熟卵胞は黄体化ホルモンの刺激を受けて、24〜36時間後に卵胞が破けて、中から1つの卵子が飛び出すのです。

これが排卵の瞬間です。

排卵は卵胞をやぶって卵子が外に飛び出すこと / Credit: canva

その後、卵巣から飛び出た卵子は卵管に入り、そこで男性の精子と遭遇して「受精卵」となると、子宮内膜に着床して妊娠が成立するという流れになります。

ところが排卵された卵子が受精しなかった場合は、準備した子宮内膜が必要なくなるので、体内から剥がれて出血を伴いながら外へと排出されます。

これが「生理」です。

生理の期間が終わると、また新たな月経周期のサイクルへと入っていきます。

女性は妊娠可能な間はほぼ一月ごとに排卵を繰り返すので、閉経する年齢に達するまでに生涯で約400〜500個の卵子を排卵していると推定されています。

女性の体は約1カ月ごとに「月経周期」を繰り返している / Credit: canva

月経周期や発情期などの違いはあるものの、こうした排卵のプロセスは人間を含む哺乳類で共通しています。

その一方で、研究者らはこれまで、排卵が卵巣の奥深くで限られた時間内に生じるため、実際に排卵が起こる瞬間をリアルタイムで観察できたことはありませんでした。

しかし排卵のプロセスを観察することは、妊娠メカニズムの理解を深めたり、不妊治療にも役立つ可能性があるので非常に重要です。

そこで研究チームは今回、メスのマウス個体を対象に「卵胞」を取り出して、排卵の瞬間を撮影できるかどうか検証してみました。

史上初、「排卵」の瞬間を撮影することに成功!

チームは性成熟に達したメスのマウス個体から「卵胞」を採取し、シャーレ上で培養して、先に説明したホルモンを与えながら人為的に排卵を促しました。

またシャーレ上はマウスの体温と同じ37.5℃に設定しています。

そして排卵が起きる瞬間をリアルタイムで捉えられるように、下図のような撮影装置を準備しました。

実験のイメージ図 / Credit: Melina Schuh et al., Nature Cell Biology(2024)

その結果、チームの期待通り、見事に排卵が起きる瞬間をカメラに収めることに成功したのです。

実際の映像がこちら。

緑色は細胞膜、ピンク色の粒々はDNA、中央の赤色は卵胞内の液体、そして一瞬なので見えづらいですが、ブドウの種のように最後に放出された黒い球が卵子です。

右下のタイムスケールは排卵までの時間と分を表しており、映像は実際より早送りになっています。

排卵の瞬間! / Credit: Melina Schuh et al., Nature Cell Biology(2024)

研究主任のメリナ・シュー(Melina Schuh)氏によると、排卵の瞬間は「3つの段階に区別することができた」といいます。

まず1つ目が「膨張」です。

これは成熟した卵胞がヒアルロン酸の分泌により、周囲の液体を卵胞内に取り込むことで起こっていました。

ヒアルロン酸の働きは卵胞の膨張に不可欠であり、研究者がヒアルロン酸の生産を遮断したところ、卵胞が膨張しなくなり、排卵も起きなかったのです。

次に2つ目が「収縮」です。

これは卵胞の外層を覆う筋細胞によって引き起こされていました。

膨張した卵胞を筋細胞をギュッと収縮させることで、中の液体がその圧力に耐えられずにビュッと外に飛び出すしかけとなっていたのです。

こちらも筋細胞の働きを阻害すると収縮が起きなくなり、排卵も起こりませんでした。

そして3つ目が「排卵」です。

これは映像の通り、収縮した卵胞が内部の卵子を排出する段階を指します。

卵胞は「膨張・収縮・破裂」の順で排卵に至る / Credit: Melina Schuh et al., Nature Cell Biology(2024)

このように排卵の瞬間に起こる詳しいプロセスを視覚化できたのは初めての成果です。

チームは今回の知見をもとに更なる調査を進めることで、妊娠メカニズムの理解を深めながら、不妊治療に役立つ情報が得られるかもしれないと期待しています。

参考文献

Ovulation filmed from start to finish for the first time
https://www.mpg.de/23607874/1018-bich-ovulation-filmed-in-real-time-17216463-x

Watch 1st-ever video of ovulation occurring in real-time
https://www.livescience.com/health/fertility-pregnancy-birth/watch-1st-ever-video-of-ovulation-occurring-in-real-time

元論文

Ex vivo imaging reveals the spatiotemporal control of ovulation
https://doi.org/10.1038/s41556-024-01524-6

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

元記事で読む
の記事をもっとみる