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増殖し続ける不揃いな棚から、宝探しのようにディグする。神奈川〈古本イサド ととら堂〉

  • 2024.11.2
神奈川〈古本イサド ととら堂〉店主・木村海

増殖し続ける不揃いな棚から宝探しのようにディグする喜び

不揃いな棚に本がぎっしり。メタボリズム建築を思わせる佇まいだが、あながち間違いではない。棚の9割は自作で、適宜入れ替え・増殖しているのだ。店主の木村海さんは元大工見習い。「図面なんかは引かずに気楽に作っています。楽しいのが一番ですから」。

2022年に作ったという新作はなんと収納可能冊数わずか1。逗子の詩人・高橋睦郎さんの作品を置くためだけのものだ。さらに自作ゆえにかゆいところに手が届く一品も。一見普通の棚だが、棚板が手前に突き出している。

「ここ、“ベロ”と呼んでるんですけど。そこに本を立て掛けたくて。シェイクスピア本の裏には演劇書を、と棚の見出しにしています。手に取れば棚の本も目に入る。宝探しのように本に触る楽しみを感じてもらいたくて」。

神奈川〈古本イサド ととら堂〉店内
逗子で暮らす詩人の作品たちが並ぶ一角。一見額縁のようだが、これも立派な棚の一つ。もちろんハンドメイドだ。コラージュの立体版「アッサンブラージュ」という方法で作られている。内側には店に置けないほど傷んだ古雑誌から取ってきた写真や、逗子海岸で拾ってきたという砂(!)まで使われている。
神奈川〈古本イサド ととら堂〉店内
こちらは映画、演劇、美術、音楽などの本が集まる棚。少々出っ張っている部分は自称“ベロ”で、このスペースに本を立て掛けている。少しだけ顔を覗かせる背表紙が一層気になる!使用している木材は特殊合板のランバーコア。縦5×横3箱になるほどの大きなサイズの棚だが、ひと月ほどで仕上がるという。
神奈川〈古本イサド ととら堂〉店内
児童書の下には母やフェミニズムにまつわる書棚が。「児童書が入っている棚はもともと病院で使われていたもので、その手前に作ったのがこの箱です。一見なんてことのない棚ですが、これが地味に手がかかる。上に置く本がちょうど児童書の棚に合うように、天板に角度をつける。この微調整が大変でした」

店内には流行り廃りのない映画のDVDが並ぶことも。といっても映画棚にではない。『ブルース・ブラザース』ならアメリカの棚、ユーリー・ノルシュテイン監督作なら児童書棚へといった具合にジャンルに沿って収まる。店だからこそ楽しめる、アナログな体験が待っているのだ。

神奈川〈古本イサド ととら堂〉外観
逗子銀座通りから1本入った先に立つ一軒家書店。内装もすべて木村さんによるDIYだ。
神奈川〈古本イサド ととら堂〉店主・木村海
店主の木村さん。東京・学芸大学にあった〈古本遊戯 流浪堂〉で働いていた間にも棚を作っていた。
神奈川〈古本イサド ととら堂〉店内
中央・奥のせり出した部分は“ベロ”の初期形態。ここから今の“ベロ”が構想された。

Information

古本イサド ととら堂

棚作りにおすすめの木材は、特殊合板のランバーコア。いつか作りたいという“究極の棚”は、裏に水槽がある棚。「本を抜いた裏で魚が泳いでたら楽しいでしょう?」。

住所:神奈川県逗子市逗子5-3-39
TEL:046-876-8606
営:11時〜21時
休:月曜(祝日の場合は営業)
HP:https://t.totorado.com/

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