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ニュージーランド田舎暮らし体験:WWOOFで見つけた幸せな暮らしのヒント

  • 2024.11.1

旅先で素敵な暮らしに触れたり、SNSで海外の景色を見たりして、

「こんな暮らしがしたいな。」 「こんな景色を見て生きていきたいな。」

と思ったことはありませんか?

私はそんな感覚にたくさん触れるため、自然豊かでスローライフのイメージがあるニュージーランドにやってきました。夫婦で1年間のワーキングホリデー(以下、ワーホリ)生活です。

ところが、ただニュージーランドに来ただけではそんな場面に出会うことは少なく、むしろ日本が恋しくなる日々。

やっと素敵な暮らしに触れられるようになったのは、ニュージーランドに来て3ヶ月が経つ頃に始めた"WWOOF(World Wide Opportunities on Organic Farms;ウーフ)"のおかげでした。

夫婦ワーホリの目的

東京で普通の会社員生活を送っていた私たち夫婦は、2人で会社を辞め、家を解約し、ニュージーランドで1年間を過ごす決断をしました。

結婚をして、人生の主語が "I" から "We" に変わったため、これまでの常識や日本の当たり前に捉われず、自分たちのこれからを見つめ直す時間が必要だと思ったのです。このワーホリ期間は、私たちにとって人生のリセットとリスタートの機会でもありました。

当初は漠然と、「キウイピッキングなどのファームジョブをやってみたい」という程度のイメージしかありませんでした。そして、実際にニュージーランドに来て最初にやった仕事は、まさにキウイピッキングでした。

photo by Arthur

車中泊生活、慣れない肉体労働、ドイツ人やフランス人の同僚たち。東京でデスクワークをしていた頃とはまるで違う生活で、新しい気づきも多かったです。しかし、慣れるにつれて、毎日1万5千個くらいのキウイをひたすらとり続ける日々に、疑問を感じ始めます。

「この繰り返しの日々は、"素敵な暮らしに触れて、自分たちのこれからを考える"という目的に適っているのだろうか?」と。

ワーホリに行く前に録音していた自分たちのpodcastを聴き、ワーホリの目的や初心を思い出したことをきっかけに、予定より早くキウイピッキングを辞め、WWOOF生活を始める決断をしました。

WWOOFについてと、始めた2つの理由

WWOOF

WWOOFは、有機農業を営む農家さんのお家でお手伝いをする代わりに、宿と食事、そして有機農業に関する知識や経験を提供してもらうエクスチェンジサービス。

マッチングサービスのようなwebサイトがあり、年会費を払って登録すると、ホストを探して連絡をすることができます。年会費は個人だと25NZドル、ペアだと30NZドル。(2024年10月現在)

そんなWWOOFについて、知ってはいたものの、トータルで見ると赤字になってしまうことが引っかかり、最初はやろうと思っていませんでした。

ですが2つの理由から、WWOOFが私たちにとって良いのでは、と思うようになります。

ニュージーランドで暮らす人の生活を体験できる

1つ目は、ニュージーランドで暮らす人たちの生活を体験できること。

キウイピッキングの仕事をしている時は、会社が提供してくれるキャンプ場で車中泊をしていたので、その会社の社員と、同じくワーホリで海外から来た同世代としか関わる機会がありませんでした。

「スローライフのイメージがある、ニュージーランドの生活に触れたい」という想いもあり、WWOOFで暮らしを体験してみたいと思ったのです。

多様な経験ができること

2つ目は、多くの人に会って、多様な経験ができること。

仕事をするとなると、会社としてもある程度長く働いてほしいので、数ヶ月単位で同じ場所に留まり、同じ人と働くことになります。

一方WWOOFは1〜2週間程度の滞在。一緒に暮らすので、濃い時間を過ごしつつ、比較的短いスパンで多くの人と出会えます。ホストによってお手伝いの内容も変わってくるので、経験の幅も広がります。

WWOOFを始めてみた結果、目的やイメージ通り、とても良いワーホリ期間の使い方だと感じました。

確かに赤字にはなりますが、この1年間はお金よりも経験を重視するべき期間。日本にいた頃の貯金もありましたし、キウイピッキングで稼ぐこともできていたので、このまましばらくWWOOFを続けようと決めました。

最初のWWOOF。犬と一緒にトラクター

WWOOFで見つけた「素敵な暮らし」

これまでにお世話になったのは12家庭。それぞれの暮らし方や、たくさんの人との関わりの中から感じたことを、5つに分けてまとめます。

自然の中で暮らすこと

自然の中で暮らしてみたい、というぼんやりとしたイメージは持っていましたが、どんなときに自然のありがたみを感じるのか、ということが生活の中で見えてきました。

牧場に滞在していたときは、放牧地の奥の方までトラクターを走らせ、野生の豚を捕える罠に餌を運ぶ仕事がありました。壮大な景色の中でトラクターを走らせ、野生の動物が出てくるか否かに一喜一憂する時間が楽しくて、

「リモートワークの昼休みにこんな時間があったら、午前中に悩んでたことも吹っ飛びそう。」

と想像を膨らませました。

トラクターを走らせると出会えた、野生の豚

景色の良い食卓があるのも素敵です。私のお気に入りの食卓があったお家では、晴れている日は毎日外で昼食を取っていました。良い景色を眺めながら、美味しいご飯を食べ、家族と会話をする時間は最高です。

お気に入りの景色の食卓。ここでお風呂上がりに飲む手作りビールも最高。

少し歩くと綺麗な景色に出会える、といった環境も良かったです。少し時間ができたり、天気がいいなぁと感じたら、お散歩に出かけます。こんなに素敵な景色が近くにあれば、お散歩に行ける余裕があるような生活をしようと思うものです。

食との向き合い方

食材をいただいて自分たちで料理することもありますが、基本毎日ホストから食事を提供してもらうので、いろんな家庭の食生活を体験することができます。

お庭の野菜をふんだんに使って料理をしていたり、たくさん採れた果物をジャムやドライフルーツにしていたり。雑草にしか見えない草や、野菜の花を美味しく食べるという楽しみ方も学びました。

雑草(オニオンウィード)の花を薬味に使ったパスタと、お庭の野菜たっぷりサラダ

ほかにもキムチ・ザワークラウト・ウォーターケフィアなどの発酵食品を仕込んでいたり、チャツネ・ホットソース・ドレッシングなど、自家製の調味料がたくさんある家庭なども。

お肉も、家で家畜として飼っていた牛、山でホストファザーが撃ったヤギ、自分たちで捌いたアヒルなど……スーパーマーケットで買ってきたお肉ではなく、どのように生きていた命なのかが分かる形でいただく機会がありました。

人は毎日何かを食べて生きていくからこそ、食にこだわり、向き合い、できるだけ自分でつくったものを食べる生活がしたい。野菜作りについてもたくさん学ばせてもらったので、帰国後は実践編として、家庭菜園を始めることにします。

釣った魚とお庭の野菜で手作りフィッシュ&チップス。自家製のキムチとチリソースと共に。

動物がいる生活

これまでお世話になったホストが飼っていた動物は、犬・猫・鶏・アヒル・ガチョウ・七面鳥・牛・羊・アルパカ・ロバなど。

ペットとして飼っているほか、鶏が卵を産んでくれたり、牛のミルクをいただいたり、お肉としていただくために飼われている動物もいました。

言葉が通じないからこそ、動物と対話を試みながら、観察を楽しみつつ、一緒に過ごすのは面白いです。動物と暮らしてみたい、と初めて思うようになりました。

また、私たちはほかの動物たちのおかげで生かされているのだということについても、考える機会が増えました。

例えば、日本の卵はほとんどが狭いケージで飼われている鶏の卵だということ、ニュージーランドでは放し飼いや平飼いが中心になっているということを初めて知りました。

広い敷地を歩き回る鶏たち

鶏と一緒に生活してみると、広いところをココココッと歩き回らせてあげたいなと思うけれど、この方法で多くの人に卵を届けるのは大変なんだろうな、ということを考えさせられます。

個人でできることは少ないけれど、考えるきっかけをもらえただけでも大きなことです。日本に帰ったら鶏と一緒に暮らして、歩き回る姿に癒されつつ、美味しい卵をいただきたいなと思います。

子育てに想いを馳せる

子供のいる家庭でお世話になる機会もありました。私たちも将来子供が欲しいと思っているので、子育てをする家庭の暮らしに触れることで、学ぶことがありました。

子供たちが描いてくれた私たち夫婦の似顔絵

素敵だなと思った家族は、子供の生活に合わせて生活を組み立てていました。在宅勤務を増やしたり、スクールホリデー期間は仕事をしないようにするなど、家族第一で仕事を調整していたのです。

日本では"仕事は第一に優先し、全力で取り組むべきもの"という考えがまだ根強いですが、仕事も人生の一部として、主体的に組み立てるような考え方がもっと広がると良いなと思います。どんどん大きくなっていく子供たちの成長を見守り、一緒に過ごせる時間を大切にする生活がしたいと改めて思いました。

コミュニティでの子育てにも触れました。人々が支え合いながら、環境にもやさしい持続可能な生活を目指す"エコビレッジ"に滞在したときのことです。

たくさんの大人に声をかけられて、敷地内を走り回る3歳の子。毎日近所の同世代と集まって遊び、大人とバンドを組んでギターを弾いたりもする10代の子供たち。

私たちも帰国後は、夫婦だけではなく、友人たちと近くに住んで、みんなで子育てをするようなコミュニティを創りたい。そんな生活のイメージが膨らみました。

素敵な歳の取り方

孫がいるような、おじいちゃん・おばあちゃん世代の夫婦と暮らす機会も何度かありました。

みなさん、家庭菜園をしていたり、動物を飼っていたりします。歳をとっても庭で身体を動かし、自分たちで育てた食べ物を食べる生活は、とても健康的で素敵だなと思います。

「ここが森になる頃には自分たちはいないけどね。」

と、切られてしまった森を復活させるために、ネイティブツリーの植樹をしている人たちもいました。彼らのように、未来の世代に思いを馳せて行動できる大人になりたいものです。

ホストファザーが淹れてくれたフラットホワイトと、ホストマザーが焼いてくれたお菓子

ニュージーランドではモーニングティーの文化があります。

家族や近所の人と、自然の中でお茶を飲みながらゆっくり話す時間を大事にしているのも素敵だと感じました。子供や孫のことを楽しそうに話してくれたり、実際に遊びに来ていて会わせていただくことも。

いつまでも夫婦で仲良く、家族や周りの人たちとの交流を大切にしながら、健康に楽しく生きていきたいなと、思わせてもらいました。

「どのように歳をとっていきたいか」ということについて考える機会はこれまであまりなかったので、とても良い気づきです。

素敵な暮らしを見つける旅のすすめ

このように、夫婦でいろいろな暮らしを体験し、素敵な暮らしを共通言語化できていることは、とても有意義だと感じます。

私たちはワーホリという、海外に1年間滞在できる期間を使って素敵な暮らしを見つけています。同じようにワーホリをしている方には、ぜひWWOOFで暮らしを体験してみて!と伝えたいです。

また、ワーホリでなくても、滞在型の旅をして、素敵な暮らしを見つけに行くことはできます。

例えばWorkawayというサービスは、WWOOFのようなエクスチェンジサービスですが、登録すれば世界各国で使えます(WWOOFは国ごとの登録)。

働けるビザが必要か否かは国によるので、Workawayのサイト経由等で最新の情報を確認していただきたいですが、仕事ではなくボランティア扱いになり、観光ビザで入国して利用できる国もあるようです。

海外旅行といえば、ホテルを予約し、観光地を巡るイメージがあるかもしれませんが、少し長く滞在できるなら、現地の暮らしを体験する旅をしてみるのはいかがでしょうか?

これからの人生をゆっくり考えたい方、海外の生活から素敵な暮らしのヒントを得たい方には、とてもおすすめです。

私たちも残りのワーホリ期間で、引き続き素敵な暮らしのヒントを探してきます!

Photos by Yuka Chiba

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