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「マズいけど健康にいい食べ物」を選べる人の脳タイプが判明!

  • 2024.11.1
Credit: canva

ケーキ、ラーメン、ハンバーガーなどなど、これらは私たちの大半が「おいしい」と感じる食べ物の筆頭でしょう。

ただし頻繁に食べ過ぎていると体に悪いのも周知の事実です。

対して青汁や納豆、苦味の強い野菜などは好物とする人こそ少ないものの、体にはとてもいい食べ物として知られます。

長期的な健康のことを考えると「美味しくはないけど健康にいい食べ物」を選ぶべきでしょうが、多くの人はこれを実践できず、誘惑に負けて「健康によくないけど美味しい食べ物」を優先しているかもしれません。

では「美味しくないけど健康にいい食べ物」を選べる人は、どのような脳メカニズムをしているのでしょうか?

どんな脳活動をしている人が長期的な健康利益を優先できるのでしょうか?

群馬大学、生理学研究所(NIPS)らは最新研究で、その答えを見つけました。

研究の詳細は2024年7月26日付で科学雑誌『Cerebral Cortex』に掲載されています。

目次

  • 「ウマいけど体に悪い食べ物」vs「マズいけど体にいい食べ物」
  • マズいけど健康食を選べる人は「ある脳領域」が活発だった!

「ウマいけど体に悪い食べ物」vs「マズいけど体にいい食べ物」

食べ物を選ぶとき、それが「美味しいかどうか」「健康に良いか悪いか」は重要なポイントです。

健康にいい食べ物を選ぶことは必然的に自身の健康につながります。

しかし誰もがそれを知っていながら、美味しさを優先して健康によくない食べ物を衝動的に選んでしまうことが多々あるでしょう。

スナック菓子、ファストフード、インスタント麺、揚げ物、冷凍食品などなど、糖分や脂肪分、炭水化物、添加物が多量に含まれる食べ物の誘惑に負けて、ついつい手が伸びてしまいます。

反対に青汁や納豆、ゴーヤ、レバーといった食べ物は健康にはとても良いものの、苦味やクセの強さから積極的に食べることは避けられがちです(もちろん、好物とする人もたくさんいますが)。

Credit: canva

このように私たちの多くは「ウマいけど体に悪い食べ物」を優先して、「マズいけど体にいい食べ物」を避ける傾向があります。

その理由は、「美味しさ」という目先の利益をガマンして「健康」という長期的な利益を優先するには「自制心」が必要になるからです。

物事を長い目で捉えて計画的に行動することは、私たちの多くにとって常に難しいことです。

スナック菓子やファストフードなら食べてすぐに「美味しさ」という利益が得られますが、青汁やゴーヤは食べるのがつらい上に、「健康」という利益が現れるにはある程度の時間を要します。

それでも世の中には、長期的な利益を優先して、「美味しくはないけど健康にいい食べ物」を積極的に選べる人たちがいます。

ではこうした人たちと、「健康によくないけど美味しい食べ物」を選んでしまう人たちでは何がどう違うのでしょうか?

そこで研究チームは今回、長期的な健康を重視して食べ物を選べる人の脳がどのように活動しているのかを調べてみました。

マズいけど健康食を選べる人は「ある脳領域」が活発だった!

本調査では食べ物の選択において、「美味しさ」よりも「健康」を重視するときの被験者の脳活動を測定しています。

研究のために集められた被験者はまず、提示された一連の食べ物を「美味しさ」と「健康的かどうか」で評価し、「健康によくないけど美味しい食べ物」と「美味しくはないけど健康にいい食べ物」に分類しました。

例えば、ケーキなら前者に、ブロッコリーなら後者にというように。

そして脳活動の測定中に、画面にランダムに表示されるこれら2種類の食べ物のうち、どちらか食べたい方を選択してもらいました。

ここで被験者が「美味しくはないけど健康にいい食べ物」を選んだ場合、美味しさよりも長期的な健康を重視したことに相当します。

次に、健康的な食べ物を選ぶ際に重要な「自制心」の強さを測りました。

ここでは将来的に得られる金銭報酬を選択する課題を用いてます。

この課題では、獲得までの時間と金額が異なる2つの報酬について、どちらか欲しい方を選んでもらいました。

具体的には「今すぐに5000円をもらう」「1年後に1万円をもらう」かのどちらかです。

ここで「今すぐ5000円をもらう」を選んだ場合は、目先の利益を優先した「衝動性」の強いタイプと判断されます。

反対に「1年後に1万円をもらう」を選んだ場合は、長期的な利益を優先した「自制心」の強いタイプと判断されます。

そして食べ物の選択における脳活動を調べた結果、「美味しくはないけど健康にいい食べ物」を選んだ被験者では、前頭前野の活動が有意に高くなっていることが判明したのです。

また金銭報酬における長期的な利益を優先した自制心の強い被験者でも、同じ前頭前野の脳活動が大きくなっていることがわかりました。

逆に目先の「美味しさ」を優先したり、「今すぐ5000円をもらう」選択をした被験者は、前頭前野の活動が弱いことが確認されています。

この結果から、目先の「美味しさ」よりも長期的な「健康」を重視して食べ物を選べる人は、前頭前野が活発なおかげで自制心が強くなっている人であることが示唆されました。

「美味しくないけど健康な食べ物」を選べる人は「前頭前野」が活発だった / Credit: NIPS – 健康を優先した食べ物の選択における脳機構を解明: おいしさの誘惑を乗り越える自制心(2024)

私たちの脳は「大脳」「小脳」「脳幹」の3つに大きく分けられ、全体の重さの約80%を占めているのが大脳です。

大脳には主に思考や計画、判断の機能を司る「前頭葉」があり、このうちの大部分を占めるのが「前頭前野」となっています。

前頭前野はヒトで最も発達している脳領域であり、ヒトと動物を大きく分ける場所でもあります。

前頭前野は思考や想像、記憶、判断、計画、実践といった、ヒトをヒトたらしめる知的行動に必要な認知機能を司る場所なのです。

この領域が活発だと思考力や計画性に優れ、先の実験で示されたように、長期的な利益を見越して自制心を持った行動を取ることができます。

反対に、前頭前野の活動が衰えていると、物忘れが増えたり、感情的になったり、やる気が落ちてキレやすくなるなどが指摘されています。

食べ物の選択は動物にとっても大切ですが、野生下にいる動物たちが長期的な健康を見越して、目先の美味しい獲物をスルーすることは基本的にあり得ません。

長期的な健康を考えて食べ物を選べるのはヒトに特有の行動です。

そう考えると、ヒトで最も発達している「前頭前野」が健康的な食べ物のチョイスに関与しているのは納得できることでしょう。

参考文献

健康を優先した食べ物の選択における脳機構を解明: おいしさの誘惑を乗り越える自制心
https://www.nips.ac.jp/release/2024/07/post_545.html

元論文

Healthy dietary choices involve prefrontal mechanisms associated with long-term reward maximization but not working memory
https://doi.org/10.1093/cercor/bhae302

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

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