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「全国大会出場」のような派手な活躍は必要ない…推薦入試のプロが激推しする"活動プログラム"の種類

  • 2024.10.31

今の総合型選抜はかつてのAO入試とは大きく異なる。個別指導塾塾長の小林尚さんと推薦入試専門推進塾塾長の橋本尚記さんは「活動実績は特別に派手なものではなくてもいい。これから活動実績を作りたい人には大学主催のプログラムへの参加がオススメだ」という――。

※本稿は、小林尚・橋本尚記『提出書類・小論文・面接がこの1冊でぜんぶわかる ゼロから知りたい 総合型選抜・学校推薦型選抜』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

活動実績は派手なものではなくてもいい

総合型選抜はかつてAO入試と呼ばれていました。その時代、とても重要だったのが活動実績でした。かつてのAO入試では、活動実績の優劣で合否がほとんど決まっていました。そのため、今でも「活動実績はとにかく派手にすべき」「華やかにしなければならない」という意見もあります。情報をアップデートできていないまま、AO入試時代のイメージが残っているのでしょう。

実際には、現在の総合型や公募型では実績の優劣だけで合否が決まることはほとんどありません[一部のトップアスリートを対象とした入試(いわゆるスポーツ推薦やアスリート選抜)等をのぞきます]。

では、活動実績は何を書けばよいのでしょうか。答えは「みなさんが一生懸命取り組んだ活動」です。それが部活動であれば部活動を書けばいいですし、委員会であればそう書きましょう。ボランティアでも構いません。

ひとくくりに部活動といっても、かならずしも全国大会や都道府県の大会に出ていなくても大丈夫です。たとえば、部員がおらず廃部の予定だった囲碁部で、文化祭やポスター掲示などを通して宣伝活動を行い、部員を集めて3年間存続させた。このような活動も立派な活動実績です。

その実績の中には、かならずみなさんの強みがあり、志望理由を補強する材料が存在します。みなさんの強みをアピールできるものであれば、実績の見た目(全国何位や、○○大会優勝など)を気にせず、堂々と活動実績だといっていいでしょう。

桜
※写真はイメージです
学問に近い実績をつくる

そうはいっても、総合・推薦入試(本記事では、以降まとめて推薦入試と呼びます)の対策を始める時点で、すでに活動実績がある人は少ないはずです。推薦入試の対策として活動実績づくりに臨む人もいます。

あるいは、「何か探究活動や研究活動をしてみたいけど、どうせ何かやるなら推薦入試で使えるものを……」と考える人も多いでしょう。

活動実績であれば「部活動全国大会出場」や「コンクール入賞」などが代表的ですが、推薦入試のためにこれらの実績をつくるのは本末転倒かもしれません。

これから活動実績をつくる人にオススメなのは、より学問に近い実績をつくることです。たとえば自分の興味がある研究を進めて論文として発表したり、研究会でプレゼンしたりする活動です。

おすすめは大学主催の研究会やワークショップ

もちろん、論文や研究、プレゼンなどという言葉が出てくると、ハードルが高くて無理そうだと思うかもしれません。ここでは、普通の高校生ができるものを紹介しましょう。

これから活動実績をつくりたい人には、大学主催の研究会やワークショップへの参加がオススメです。

手軽なものであれば、高校生に向けた公開講義や大学の研究見学、大学生と一緒に研究の一部に参加するようなイベントがあります。あるテーマについて大学生と高校生で議論するようなワークショップも開催されています。

大学のホームページで情報が公開されていますし、成績や学力の条件がなく、誰でも気軽に参加できるものがたくさんあります。

少し本格的なものであれば、長期間にわたって大学の研究室で研究をおこなうプログラムもあります。このような長期的なプログラムになると、はじめに研究のやり方などのガイダンスがあり、研究も大学生と一緒におこない、最終的には論文の執筆や研究会での発表を目指す、体系的なプログラムも多いです。これらは最初に選考があることが多く、それを突破した人のみが参加できます。

ですので、最初は気軽なワークショップから始めて、ゆくゆくは長期的なプログラムへの参加を目標にするとよいかもしれません。プログラムに参加できれば、大学生や教授と一緒に研究を進めることで論文の執筆につながり、対外的に発表する機会ももらえるかもしれません。

すぐに論文というのは無理でも、最初のきっかけは意外とハードルが高くありません。

研究室で化学実験を行う学生
※写真はイメージです
大学の教授とのつながりができる

オススメの活動実績について、もう少し補足していきます。ここでは「大学主催」の活動をオススメする理由をお伝えします。

1つ目は、その大学を受験する際に有利になるからです。もちろん、直接的に加点されるわけではありません。ただ、その大学の志望理由に説得力が増すことや大学の教授とのつながりができるメリットがあります。

面接の場で、自分が研究活動に取り組んだときの教授が面接官となれば、有利になることは簡単に想像できます。もちろんそれだけで合格するわけではないですし、面接官が誰かはわかりようがありません。しかし、無視できないメリットです。

研究の仕方を学ぶ

2つ目は、アカデミックな実績をつくれるからです。大学で勉強するために入試を受ける以上、大学でおこなわれているアカデミックな研究がもっとも受け入れられやすいのは当然です。自己流でがんばることが悪いわけではありませんが、研究の仕方を本物の研究者に学べるのであればこれ以上の実績づくりはないでしょう。

そうはいっても「大学の研究に参加するなんて、私には無理!」という方もいらっしゃるでしょう。もちろん大学側も、すでに勉強している人だけに向けて研究会やワークショップを開催しているわけではありませんので、その分野の初心者の人が参加することに問題はありません。それでも、場違いにならないかと心配してしまう気持ちはわかります。

そういう人へ、活動実績の最初の一歩目としてのオススメは地域のボランティアやワークショップへ参加してみることです。

ボランティア
※写真はイメージです
気軽に参加できるボランティアもよい

ボランティアは、みなさんの地元のお祭りなどのイベントスタッフや、幼児や小中学生と遊んだり、勉強を教えたりする教育系のボランティア、外国から来た方に日本語や日本の文化を教えたりするものもありますね。

ワークショップについては、地元のまちづくりを考えるものや身近な公園の保全活動について考えてみるイベントもあります。大学が主催するような本格的なものではなく、地元の小学生や中学生に混ざって考えてみるものもあれば、地元の協会の大人が補助してくれるようなものなど、気軽に参加できるものが多いです。

たとえば教育学部を目指そうと考えている高校生の方は子どもたちの面倒を見たり勉強を教えたりするボランティアに参加してみるとよいと思いますし、国際系の学部に挑戦したい方は外国から来た方をサポートするボランティアなどがよいですね。

ボランティアをする際の2つの注意点

ただこのようなお手軽な活動には、注意点が2つあります。

1つ目は、特に理系の方は自分の志望学部と結びつけづらいことです。

文系の方であれば何かしら自分のやりたいことや学部の分野と関連のあるイベントがあることが多いです。しかし理系の勉強はより専門的な研究などが必要になるので、「まず気軽に参加してみよう」という理系の人向けのイベントがあまりありません。

ですので、少し前の話に戻ってしまいますが、いきなり研究に参加するのが難しければまずは大学の講義を聞いてみるとか、研究室の見学に行ってみるというところから始めてみましょう。

2つ目は、これが直接高い評価を受けるわけではないことです。誰でも気軽に参加できることの裏返しですが、これらのイベント参加が他の人と差をつけられるかといわれると、そうではありません。

ですから、こういったイベントに参加したみなさんは、ここからさらに興味や関心を掘り下げて、継続して取り組むことを心がけてください。できればこれまで書いたような大学と直接関連する活動がいいですね。推薦入試の決め球として使うのではなくて、あくまでこれから始める活動のきっかけという位置づけで考えていただけるといいと思います。

スタートラインに立っている人
※写真はイメージです
高校の探究活動で活動実績をつくる

高校の授業内でも活動実績はつくれます。そのときに活用していただきたいのが、「総合的な探究の時間」です。これは、2020年度の学習指導要領改訂のときに「総合的な学習の時間」から名称が変更されました。それにともなって、文字通り「探究活動」に高校が力を入れられるようになりました。

探究活動のやり方は高校によって違いますが、自分たちで探究したいテーマを選定し、情報の収集や整理・分析をしてまとめるという授業です。多くの場合は、まとめた内容をクラスで発表します。これは1回の授業で終わらず、学期や年間という長いスパンでテーマ選定からまとめまでを実施します。

大学によっては、提出書類の中に高校での探究活動を書くよう指示されることもあります。それくらい、大学側も気にしている内容です。もちろん、この探究活動を実績としてアピールすることができます。

さらに高校によっては、クラス内で優秀な評価を得た人に全校生徒の前で発表の機会を与えたり、他校との合同発表会、あるいは大学の先生方に向けた発表の場を用意してくれたりする場合もあります。

小林尚・橋本尚記『提出書類・小論文・面接がこの1冊でぜんぶわかる ゼロから知りたい 総合型選抜・学校推薦型選抜』(かんき出版)
小林尚・橋本尚記『提出書類・小論文・面接がこの1冊でぜんぶわかる ゼロから知りたい 総合型選抜・学校推薦型選抜』(かんき出版)

このようなクラスの代表や学校の代表としてプレゼンができれば、実績の高さをアピールすることができます。もちろん、その探究の内容が志望する学部であつかうテーマに近ければよりよいです。

このように、高校の探究活動は大きな可能性を秘めています。もちろんこの時間への力の入れようは高校によってムラがあり、この時間に英語や数学の授業を進めている高校や、ただの自習時間としている高校もあります。

しかし、探究活動に積極的な高校でその時間を真剣に取り組むことで、十分に活動実績としてアピールできます。学校の授業内で活動実績までつくることができれば、とても効率的です。

ぜひ、前向きに取り組んでみてください。

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