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唯一無二の絶景!ベトナムでもっとも美しい茶畑の丘「ロングコック・ティーヒルズ」

  • 2024.10.31

“ベトナムといえばベトナムコーヒー”、そんなイメージが定着しつつあるベトナムのコーヒー文化。

しかしその一方で、コーヒーよりはるかに古い歴史を持つお茶の文化もまた、ベトナム人の生活に欠かせない食文化のひとつです。

そんなお茶の産地であるベトナム北部に「ベトナムでもっとも美しい茶畑の丘」と噂される、世界でも類まれな茶畑の絶景が存在するのをご存じですか?

今回はベトナムで最近話題の「ロングコック・ティーヒルズ」をご紹介します。

知ってた?世界第6位の茶の生産大国ベトナム

コーヒー豆生産量世界第2位のベトナム。ブラジルに次ぐコーヒー生産大国として、今やすっかりベトナム人の生活に定着したベトナムコーヒーやカフェ文化。しかしその一方で、未だ日常的な飲み物として根強く愛されているのが、日本同様、お茶の文化です。

コーヒーがベトナムにもたらされたのはフランスの植民地となった19世紀後半。お茶の歴史はそれよりはるかに古く9世紀半ば頃、中国南部からベトナム北部へ伝来したのがはじまりとされています。茶の文化は一般家庭から宮廷まで広く普及し、現在はお茶の生産量世界第6位という、世界有数のお茶大国なのです。

茶の栽培に適した気候条件がそろうベトナム北部や中部のお茶の産地。

数ある茶の産地のなかでも、今回ご紹介する首都ハノイ郊外にあるロングコック村は、「ベトナムでもっとも美しい茶畑の丘」として最近人気急上昇の、知る人ぞ知る絶景スポットです。

お茶の産地「ロングコック」とは

首都ハノイの中心から北西へ約110km、ハノイに隣接するフート省(Phu Tho)のタンソン県(Tan Son)ロングコック村(Long Coc)は、古くから少数民族ムオン族が暮らす、人口2,000人ほどの山間部に位置する小さな農村集落です。

限られた土地を切り拓き、つつましく生活していた原住民ムオン族の人々。しかし、ベトナム戦争終結後、貧困にあえぐムオン族を支援するため、官民一体となって土地開発に乗り出したのがロングコックの茶畑です。

茶の栽培に適した気候風土、土壌や地形が功を奏し、現在では約700ヘクタール(東京ドーム約150個分)におよぶ茶の一大産地に成長しました。

排気ガスにまみれた大都会ハノイの喧騒とは無縁の、ノスタルジー漂う穏やかな里山集落。

ロングコックが注目されたのはごく最近。そのため、観光地化が進んでいない分、昔ながらのベトナムの原風景が味わえるのも見どころのひとつです。こうしたのどかで落ち着く風景は、ハノイの人たちにとっても心安らぐ週末トリップ先として注目されているそうですよ。

水牛たちもつぶらな瞳で出迎えてくれます。

新たな観光名所「ロングコック・ティーヒルズ」とは

「ベトナムでもっとも美しい茶畑の丘」ロングコック・ティーヒルズ

ロングコックが注目されたきっかけは、この地平線まで続く、お椀型やなだらかな曲線美が特徴の大小の茶畑の丘たち。

一見すると、フィリピンが誇る奇観奇勝の世界遺産チョコレートヒルズを彷彿とさせますが、このふしぎな地形の大地こそ太古の昔から存在するものの、森林を開拓し、1本1本植樹して茶畑を作り上げたのはムオン族だそうです。

国際的な写真コンテストなどを通じて国内外に知れ渡り、現在では「ロングコック・ティーヒルズ(Long Coc Tea Hills)」の愛称で親しまれるロングコックの茶畑の丘。

ある時は「北西部のハロン湾」にたとえられ、またある時は「ベトナムでもっとも美しい茶畑の丘」とも称えられるロングコック・ティーヒルズ。ベトナム北部の観光都市サパや絶景棚田で有名なムーカンチャイに肩を並べる、写真愛好家憧れの地として新たな観光名所となっています。

ベストシーズンは深まる秋!

そんなロングコック・ティーヒルズのベストシーズンは、朝晩の寒暖差が大きく、霧や雲海が発生しやすい9月~11月。

夜明けとともに姿を現すたなびく雲海と茶畑の丘の絶景は、唯一無二!その神秘的かつ荘厳なたたずまいに思わず言葉を失います。

この鑑賞に欠かせない条件としては、前日に雨が降るなど適度に湿度があり、朝晩の寒暖差が激しく、かつ明け方晴れていること。

とくに夜明け間もない早朝5時前後がベストで、ロングコック・ティーヒルズを一望できるビュースポットには未明から多くのカメラマンが詰めかけます。なかには展望所にテントを張って朝を待つ猛者もいるとか。

ちなみに、ロングコック・ティーヒルズの絶景を制するのはやはりドローン。ドローンを操作するカメラマンも多く見かけました。 ※2024年10月現在、行政への許可申請等は不要なようです。

製茶工房とロングコック産のお茶

現在ロングコックには300世帯ほどのムオン族による茶栽培農家が存在し、各家庭に小さな製茶工房を構えています。

肥料やりから防虫剤の散布、茶摘みまであらゆる作業をひとつひとつ手作業で行うムオン族。もちろん茶葉の加工もなかなかアナログで、摘み取った茶葉は昔ながらの薪炭にくべて焙煎する鉄窯製法だそうです。

なお、ロングコックでは現在、ティーツーリズムを推進しており、割と気軽に工房見学をさせてくれます。

2018年に設立されたロングコック自治区安全茶協同組合(Long Coc commune safe tea cooperative)では、ベトナム国が定める農業生産管理基準「VietGAP(Vietnam Good Agricultural Practice)」に基づく茶の栽培や加工技術、品質管理の向上、安全性やトレーサビリティの確保、安定した雇用創出や人々の生活改善を目指して、地域ブランド茶の開発に取り組んでいます。

そうしたなかで開発されたバット・ティエン・グリーンティー(Bat Tien green tea)を含む3種の緑茶が、OCOP(One Commune One Productプログラム、いわゆるベトナム版一村一品運動のこと)で4つ星評価を獲得しており、要するに国のお墨付きをもらった高品質なお茶として売り上げ拡大につなげているそうです。

日本の煎茶や緑茶に味がよく似ていて、とても飲みやすく、最後にほのかな甘みが感じられるのがロングコック茶の特長です。

とはいえ、品質や安全性にこだわり、機械化や商品開発も進まない中での生産量拡大は限定的。今のところ輸出がメインで、ロングコック産のお茶を国内で見かける機会は少ないですが、販路拡大を目指し、聞くところによると、日本の静岡県のとある企業も関心を寄せ視察に訪れたそう。

将来的にロングコック産の茶葉を日本で見かける日も、そう遠くないかもしれませんね。

ティーツーリズムはホームステイにご相談

観光地化が進まないロングコックですが、「ホームステイ(Homestay)」という名の宿泊施設はいくつか存在します。

ちなみに、ここでいう「ホームステイ」とは、留学先などで使う「ホームステイ」とは若干異なり、民泊というか、ゲストハウスに近いニュアンスの宿泊施設です。また、ロングコックには旅行代理店はなく、ホームステイのオーナーたちが地域観光を盛り上げるべく、主体的にティーツーリズムを導入しているそう。

今回筆者がお世話になったのは「Homestay Long Cốc―Thanh Biên(ホームステイ・ロングコック・タン・ビエン)」。

オーナーのタンさんは英語は話せませんが、翻訳アプリを駆使して懇切丁寧に要望を聞き入れてくれ、ロングコックの見どころを余すことなく案内してもらいました。タンさん自身は別の部族出身で、奥様がムオン族出身だそうです。

今回は茶畑の写真スポットめぐりと製茶工房の見学案内だけお願いしましたが、その他の要望も気軽に相談に乗ってもらえますよ。

ロングコックのティーツーリズムでは、製茶工房見学以外にも要望に応じて、ムオン族の生活や文化体験できる各種プログラムも用意されているそうです。

たとえば、ムオン族の伝統舞踊を鑑賞したり、ムオン族の方々と一緒に伝統料理の料理体験をしたり、郷土料理に舌鼓を打ったり、伝統衣装を身に着けての茶摘み体験や記念撮影など。

ハノイやホーチミンでは味わえない、ここならではの貴重な体験が楽しめますね。

見たことのないベトナムを再発見する旅へ

成長が著しいベトナム。

とはいえ、円安で厳しい日本人の懐事情に嬉しい安定の物価安、飛行機では片道およそ5~6時間、時差も2時間程度で、親日国のやさしい国民性、日本人の舌に合う食文化、おしゃれカフェやビーチリゾート、山岳リゾートも続々増えて、日本人にとってより身近で観光しやすい国のひとつになっています。

もしありきたりな観光に満足したら、次はぜひ見たことのないベトナムの景色を再発見しに、ロングコックを訪れてみてはいかがですか?

All photos by MAYUMI

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