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頭の中で同じフレーズが繰り返される……「イヤーワーム」の止め方【脳科学者が解説】

  • 2024.10.31
【脳科学者が解説】音楽の特定のフレーズなどが頭の中でリピートされ続ける「イヤーワーム」。脳科学的に効果的なイヤーワームの止め方はあるのか、わかりやすく解説します。
【脳科学者が解説】音楽の特定のフレーズなどが頭の中でリピートされ続ける「イヤーワーム」。脳科学的に効果的なイヤーワームの止め方はあるのか、わかりやすく解説します。

Q. 「イヤーワーム」の止め方を教えてください

Q. 「勉強に集中したいときに限って、まったく関係のない音楽のフレーズが頭の中を流れ始めて止まらなくなります。『イヤーワーム』という現象のようなのですが、止める方法はないでしょうか? 集中しようと思うほど気になって、かなり困っています」

A. 脳内でぐるぐる回る電気信号の流れを「乱す行動」をしてみましょう

一般に「イヤーワーム」と呼ばれるこの現象は、特にキャッチーな歌詞やメロディーを聞いたときに起こりやすいようです。筆者自身も、音楽の特定の部分が頭の中にこびりついて、何度も反復されてしまうことがあります。気になって振り払おうとしても消えないのは、厄介ですね。

脳科学的に考察すると、「発生した電気信号が、脳の中の同じ回路を伝わり続けている状態」と考えられます。分かりやすく解説しましょう。

脳の中では、ある神経細胞が活動すると電気信号が発生します。発生した電気信号は、長い軸索を素早く伝わり、その末端まで到達します。ちょうど電話線の中を電気が流れ、情報が送られるのと同じようなものと考えてかまいません。

軸索の末端まで電気信号が到達した後は、その軸索の末端から神経伝達物質が放出されて別の神経へ到達し、再び神経軸索の上を電気信号が伝わっていきます。

イヤーワームは、脳の中にいったん記憶された歌や音楽の情報が想起されたとき、聴覚系の一部で電気信号が発生し、その電気信号が同じ回路をぐるぐると伝わり続けてしまうことで起きているのでしょう。山道に迷いこんで、同じ道をぐるぐる回ってしまい、脱出できなくなっているような状態をイメージしてください。

ですから、この状態から脱するためには、同じ神経回路内をぐるぐる回っている電気信号の流れを乱してしまえばいいのです。具体的には、次のような方法が有効です。

・頭の中で繰り返されているフレーズが曲の一部の場合は、曲の続きを最後まで思い出して歌ってみる
・まったく違うことを行う。例えば、ゲームで遊んだり、運動をするなど。ガムをかむのが有効という人もいる
・誰かとおしゃべりを楽しむ

イヤーワームは何かに集中しているときや、集中したいときに起こりやすいので、いったん目の前の勉強や仕事などに集中するのを中断し、注意を他にそらしてしまえばいいのです。どの方法が一番効果的かはケースバイケースですので、自分に合う方法をいろいろと試してみてください。

なお「イヤーワーム」の語源は、ドイツ語の「ハサミムシ」を意味する「Ohrwurm」のようです。ドイツ語の「Ohrwurm」を英語に変換すると「ear(耳)」+「worm(虫)」となり、これをカタカナ表記で「イヤーワーム」としたものと思われます。

古くから、「ハサミムシは耳の中に棲み付く」という迷信があるため、同じ音が繰り返し頭の中で聞こえる現象を、そう呼ぶようになったのでしょう。

イヤーワームで嫌な思いをした経験がある人は多いと思いますが、どれだけしつこいイヤーワームでも、永遠に続くことはありません。知らず知らずのうちに、必ず消えてしまうわけですから、あまり神経質に考え過ぎないのが一番の解決法かもしれませんね。

阿部 和穂プロフィール

薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。

文:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者)

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