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スーパーモデルのカーリー・クロスが、プログラミング学習で変革するジェンダーギャップ【戦うモデルたち】

  • 2024.10.30

政治とファミリーは無関係! トランプ家系のハリス支持者

モデルのカーリー・クロス。2024年9月、NYFWにて。Photo_ 305pics / GC Images
Celebrity Sightings In New York City - September 06, 2024モデルのカーリー・クロス。2024年9月、NYFWにて。Photo: 305pics / GC Images

「私は、人生の半分をかけてファッション業界でキャリアを積んできました。父が医師だったこともあり、モデルになるずっと前から科学が大好きだった私は、医学の分野でキャリアを追求したいと考えていましたが、15歳のときに挫折してしまいました。直後にニューヨークファッションウィークに参加することになり、ほぼ一夜にしてファッションでのキャリアを築き上げたことは、私にとって予想外だったのです」

2023年、『Glamour』誌にこう語ったカーリー・クロスは、1992年アメリ カ・シカゴ出身のスーパーモデルだ。一方で“テイラー・スウィフトの親友”としても世界的に有名な彼女は、2018年にユダヤ教に改宗後、実業家で投資家のジョシュア・クシュナーと結婚。彼がドナルド・トランプの娘イヴァンカの夫ジャレッドの実弟だったことから、トランプ一家と近しい間柄となった。しかし、2016年のアメリカ合衆国大統領選挙では、ヒラリー・クリントンを支持した彼女は、2020年の大統領選挙ではジョー・バイデンを支持し、さらに2024年11月の選挙に向けてカマラ・ハリス支持を表明するなど、ことごとく“家系”に背き続けている。

「正当に行われた民主的選挙の結果を受け入れることこそ、愛国者というもの。受け入れを拒否して暴力を扇動するなど、アンチアメリカの極みです。私は、義姉(イヴァンカ)と義兄弟(エリックとトランプ・ジュニア)にも言いたい」と、2020年の敗戦でトランプが選挙を不正なものとし、負けを認めない姿勢に対しXでこう公言するなど、政治とファミリーは無関係だとして自らの信念に忠実であり続けている。

STEAMこそ、次世代に必要な学問

2024年5月に開催されたメットガラにて。Photo_ Dimitrios Kambouris / Getty Images for The Met Museum / Vogue
The 2024 Met Gala Celebrating "Sleeping Beauties: Reawakening Fashion" - Arrivals2024年5月に開催されたメットガラにて。Photo: Dimitrios Kambouris / Getty Images for The Met Museum / Vogue

Kode With Klossyを立ち上げたとき、 私がPCサイエンスやテクノロジー、ビジネスに大きな関心があるということに周囲は非常に驚きました。モデルには、そんなお堅いものは向かないと思われていたのでしょう。ですが実際は、クリエイティブ産業はテクノロジーと非常に密接な関係にあります。そして、そのことを認識している若い女の子たちはまだまだ少ない。芸術と科学は、表裏一体です。だからこそ私は、“STEM”(科 学、技術、工学、数学))ではなく、“STEAM ”(科学、技術、工学、芸術、 数学)と言いたいのです」

今では世界のスーパーモデルとして名を馳せるクロスだが、実は一流の PCプログラマーとしての顔も持つ。ミズーリ州ウェブスター・グローブ ス高校卒業後、ニューヨーク大学大学院に学んだ彼女は、2014年に イェール大学との提携やLGBTQ+への手厚いサポートで知られ、別名“コーディング・ブートキャンプ”と呼ばれるFlatiron SchoolでRuby、JavaScript、HTMLやCSSなどのWeb開発テクノロジーに必要なプログラミング言語を習得。そして2015年4月に自身がスポークスパーソンを務めるビューティーブランド「エスティ ロー ダー」のバックアップを受けて、一流プログラマーとして世界で活躍でき る女性リーダーを育成することを目的とした団体「Kode with Klossy」を立ち上げた。その直後に前述の Flatiron Schoolと子ども向けのPCサイエンス/AI学習を機会を提供するNPO法人Code.orgとパートナーシップを締結し、ソフトウェアエンジニアリングを学ぶ少女たちに毎年奨学金を提供している彼女は、「エスティ ローダー」の公式サイトにこんなメッセージを寄せている。

「テクノロジーとファッションとビューティーは、もはや切っても切れない関係にあり、もはや融合していると言っていいでしょう。実際、 ビューティーはe-コマースやウェアラブルテクノロジー、そして3D画像に至るまで、次世代テクノロジーの創造と革新的な技術発表のための大きな機会となっています。 ビューティーとファッションは時に軽く見られ がちですが、これらは自己表現を可能にします。そして、自信と個性を刺激し、最高の自分を創造する潜在的なパワーを秘めています。だからこ そ、世界を変えるテクノロジーと親和性が高い。そこに女性の感性が加われば、まったく新しいテクノロジーを生むことも可能なのです」

男性優位の技術分野を変えるために

2024年9月、ケリング主催のイベントにて。Photo_ Stephanie Augello / Variety via Getty Images
3rd Annual Caring For Women Dinner - Arrivals2024年9月、ケリング主催のイベントにて。Photo: Stephanie Augello / Variety via Getty Images

2015年からティーンの女子を対象とした 2週間の無料サマー・コーディ ング・キャンプも開始したKode With Klossyは、これまでアメリカ国内25都市で50のキャンプを運営し、1,000人以上の少女たちにプログラミング教育を提供してきた。そして同プログラムの参加者は、受講後モバイルアプリやウェブサイトの構築に従事するなど、着実に成果を上げてい ることにさらなる可能性を感じるとクロスは言う。

「以前インスタグラムの共同創業者のケヴィン・シストロムに会ったとき、私は、『あなたは何億人もの人々の心を動かす製品を作りました。そのための“特殊な言語”を、あなたは知っている。私は、その言語とスキル をどうしても身につけたかったのです』と彼に言ったことがありました」と、かつて「ニューヨークタイムズ」紙に語ったクロスは、自身の団体を通じて育成された女性プログラマーの中から第2・第3のシストロムが出現すれば、将来的に科学の分野での男性優位の風潮が終焉を迎え、世界はさらに飛躍するのではないかと期待している。

「実際Kode with Klossyでプログラムを受講後、現在大学に通っている 12,000人の学者のうち、78%がコンピュータサイエンスを専攻もしくは関係分野に従事しており、アメリカ国内の女性の4%がこの分野で学位を取得しています。ここまで高い数字は、これまでありませんでした。これは、変化が確実に起きていることを意味しています」

と、予期せずしてファッションで地位を確立し、幼少期からの情熱であるテクノロジー業界に変化を巻き起こしているクロス。どんなときも自らの信念を貫く彼女は、Kode with Klossyの未来についてこんな風に語っている。

「少女たちが、習得したてのプログラミングで実際のプロジェクトとして“形”にしたときは、本当にうれしくなります。そんな彼女たちと一緒に過ごしていると、私も世界を変えることができるような気がするのです。彼女たちには、それぞれの異なる世界観があります。そして、新鮮で素晴らしい感性も。私は、彼女たちがその感覚とともに未来のアルゴリズムを構築すると確信しています」

Text: Masami Yokoyama Editor: Mina Oba

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