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小田凱人──「ずっと一位であり続けたい。自由に自分を表現し続けるために」【THE ONES TO WATCH 2024 vol.10】

  • 2024.10.29

「自由にやるための実績として、メダルが欲しいなと思っていただけ」

ケープ ¥616,000 シャツ ¥256,300 パンツ ¥294,800ベルト ¥140,800 ローファー ¥247,500/すべてJIL SANDER BY LUCIE AND LUKE MEIER(ジルサンダージャパン) 腕時計 ¥759,000 リング(中指) ¥220,000 (小指) ¥946,000/すべてTIFFANY & CO.(ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク)
ケープ ¥616,000 シャツ ¥256,300 パンツ ¥294,800ベルト ¥140,800 ローファー ¥247,500/すべてJIL SANDER BY LUCIE AND LUKE MEIER(ジルサンダージャパン) 腕時計 ¥759,000 リング(中指) ¥220,000 (小指) ¥946,000/すべてTIFFANY & CO.(ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク)

史上最年少(なんと17歳!)で車いすテニスの世界ランキング1位に輝き、パリパラリンピックではかねてから公言していた目標の金メダルを獲得。向かうところ敵なしの快進撃を続ける小田凱人だが、その素顔は驚くほどに気負いがない。「時間ができたら車の免許を取りにいきたいですね」と明かす笑顔には、18歳の青年らしさが漂う。接戦の末に勝ち取ったパラリンピックの優勝も「自信だけはあったから驚きはないですね。よっしゃ、という感じ」とサラリと語る。「今年に入ってから何度も優勝する瞬間を夢で見てきたので、勝った当日はそれが夢なのか現実なのかわからないような感覚には陥りました。優勝翌日の会見くらいから、ようやく現実だなと思うようになって。とはいえ、もともとメダルを獲るのが一番のゴールではないんです。やりたいことをやるためには金を獲っておこう、自由にいろいろやるための実績としてメダルが欲しいなと思っていただけで。勝っていても負けていても、試合はめちゃめちゃ楽しいんですよ。パリの決勝ではやばいなと感じる瞬間もありましたが、自分の持ち味を出せば大丈夫だと思いましたし、常に勝つ自分のイメージがあるんです」

どんな状況でも楽しむと決めている小田は、9歳でがんになった経験ですら「車いすテニスプレイヤーになるためのいい転機になった」と言い放つ。「スーパーポジティブなわけではないし、ネガティブに捉えても仕方ないような瞬間もたくさんありました。それでも、自分のことを好きでいたから耐えられたし、自分のやりたいことをやっている、それを伝えたいという気持ちのほうが強かったですね」

「自分が求めているテニスをすることで、何かが変わるのが理想」

だが、今回のパラでは、そんな小田が珍しく苛立ちを表明してみせる場面があった──車いすテニスがテレビで放映されないと判明したときだ。「なんのためにメディアに出て演出してきたのか」とはっきり異議を唱える小田の言葉は、事態を動かした。SNSで「車いすテニスの試合を観たい!」と賛同の声が殺到し、シングルス決勝戦が急遽放映されることになったのだ。試合の圧倒的な熱量に、会場から沸き起こるトキトコールに、優勝してコートで天を仰ぐ小田の姿に、多くの人が夢中になった。その後の凱旋試合となるジャパンオープンのチケットは見事に完売。「自分が求めているテニスをすることで、何かが変わるのが理想です」と以前から語っていた小田は確実に、車いすテニスを巡る状況を違うステージへと引き上げつつある。「先陣を切っていきたいし、僕の発言には有効期限があるとも思っています。だから今のうちに言いたいことを言って、やりたいことをやろう、と。大好きだからテニスをやっているけれど、ほかにもやりたいことはたくさんあります。車いすテニスプレイヤーでなくても、小田凱人という人でさえあれば何でもいいと思っている。一番大事なのは自由に自分を表現すること。そのためにも勝ち続けたいですね」

今回の撮影でも、そんな表現者としての才能が発揮されるシーンがあった。撮影中に小田が「やってみたいことがあるのでいいですか」とつぶやいた。セットの真ん中に立った小田が、片手をすっと天に向かって伸ばす。ダンサーが音楽に身を委ねるような動きだった。広いケープの袖をはためかせる姿は、まるで空に羽ばたく鷲のように美しい。トップクラスのモデルは、ときとしてデザイナーの意図を超えた服の魅力を引き出すことがあるが、まさにそんな瞬間だった。すでに世界の頂点に立つ小田だが、私たちが触れているのはおそらくその魅力のごく一部。これからも、驚くような表現をたくさん見せてくれるに違いない。

Profile

小田凱人

2006年、愛知県生まれ。9歳で骨肉腫により左脚の股関節と大腿骨の一部を切除。同年始めた車いすテニスで頭角を現し、2023年、全仏オープンでグランドスラム史上最年少優勝を果たし、最年少世界ランキング1位に。同年ウィンブルドンも制覇。24年パリパラリンピックで優勝。車いすテニス界のトップランナーとして世界中の注目を集めている。『I am a Dreamer 最速で夢を叶える逆境思考』などの著書も人気。

問い合わせ先/ジルサンダージャパン 0120-919-256

ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク 0120-488-712

Photos: Genki Nishikawa Styling: Ryo Chiba at AVGVST Hair & Makeup: Keita Iijima at mod’s hair Text: Satoko Takamizawa Editors: Yaka Matsumoto, Rieko Shibazaki

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