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もう普通のパートやアルバイトは諦めた。そしてわたしは古本屋になる

  • 2024.10.28

東京に住んでいた時、就職のためにWebデザインの職業訓練に行っていた。その学校を関西に戻るから早期退学というか卒業、となって仕事をどう探すかという話になった。

結論は、わたしの体力で働ける形態で、わたしのメンタル的にダメージを受けやすいとか、電話ができないとか、そういったことを受け入れてもらうのは難しいだろう、ということだった。

◎ ◎

なんとなくうっすら感じていたことでもあった。というか、一度配慮をしてもらって働いたことはある。むしろ居心地は悪かったし(上司はいい人だったけれど)、時短だったから仕事を割り振れなかったのか、他の人は忙しくてもわたしは暇を持て余していた。

それでわたしはもう普通のパートとかアルバイトとか、そういう仕事を諦めた。
関西に戻ってから働いていなかったわけではない。ただ長期で雇用契約を結ぶのではなくて、時々働いては日払いや週払いで受け取る、みたいなことが多かった。
なんとなくこのままではいけないと思っていたし、ちゃんと働いているという実感も欲しかった。だから、自分で店をやろうと思った。

◎ ◎

ぼんやりと思っていたのはカフェか古本屋だった。コーヒーと本が好きだからだ。
でもカフェを始めるのはハードルが高い。飲食店を開くのは保健所やいろいろな手続きが必要だし、テナント料が高いことも多い。それにそもそも、自分のためにコーヒーを淹れることはあっても、どこかでバリスタとして働いたことがなかった。
そう考えると古本屋の方がハードルは低かった。新刊の書店をやるのは大変なのはよく知られていることだが、古本屋ならまだ少し希望がある気もした。古本屋を始めるには、というような本をいくつか買って読んだ。

手始めに古本を決められたスペースで売る、いわゆるシェア型の古書店に出店してみることにした。古物商の許可も取らなくていいし、箱代がそんなに高くなかったのもよかった。
一箱古本市というものにも出店した。なにかが売れると嬉しかったし、売れない本を値下げしたら売れることもあったりして、疑似体験のようでもあった。

一箱古本市では近隣のスペースの方と話すこともある。ある時お隣の方が「(地名)に本屋を作る」という屋号で出店されていて、じゃあわたしも言っておこうかな、と思ってその辺にあった紙に書いて置いてみた。
そうするとお客さんが話しかけてくれたりして、ぼんやりと考えていたことが本当なのだ、本当にわたしはそうしたいのだ、ということを実感した。

◎ ◎

それで、それからテナント探しをかなりの速さで進めて、2024年の4月下旬から場所を借りられることになった。最初は古物商の許可をとるだけで何ヶ月もかかったし、自分の考えていた「オンライン古書店」というのが思ったより難しいこともわかった。かといって、一応店舗利用のできるその場所で店を開けても誰も来ない。そのうちその場所、というか入居している施設の瑕疵がだんだん見え始め、本が置けない、という事態に陥った。

もう一度テナントを探さないといけない。ひとつ目の場所が家から通いにくかったことを反省して、比較的通いやすそうな場所で、人も来る場所を探した。

幸い見つかったのが今の店舗、というかまだ店を作っている途中なのでしばらくはまた、一箱古本市に出ることになる。
前の場所はほとんど本の置き場でしかなかったので、なにもない部屋をどう本屋にしていくか、ずっと試行錯誤している。けれど、同僚も上司もいない、なにが起きても自分の決めたことである、というのは潔くて、向いている気はしている。

■真野いずみのプロフィール
機能不全家庭で育った虐待サバイバー。アセクシュアル。

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