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eスポーツ隆盛のカギは「部活」にあり?JeSUが見据える日本の“eスポーツの未来像”

  • 2024.10.28

IOC(=国際オリンピック委員会)が“オリンピック”の名前を冠したeスポーツの世界大会「オリンピック eスポーツゲームズ」の開催を正式に決定するなど、世界レベルで拡大を続けるeスポーツ。日本国内でも、eスポーツの国内競技連盟「日本eスポーツ連合=JeSU(ジェス)」がJOC(=日本オリンピック委員会)に準加盟し普及に取り組んでいるが、近隣の韓国・中華圏と比べればまだまだ認知度が低いのが実情だ。ウォーカープラスではJeSUの山地康之理事に、今後のeスポーツ振興の課題について聞いた。

JeSU(一般社団法人日本eスポーツ連合)山地康之理事
JeSU(一般社団法人日本eスポーツ連合)山地康之理事

「eスポーツ」を学校教育に 目標はインターハイ種目化

――日本のeスポーツの隆盛について、社会的認知の向上が大きなポイントになるかと思います。JeSUとしてはどのようにお考えでしょうか?

【山地理事】eスポーツ先進国の韓国との違いをお話すると、韓国では子どもの頃から学校の帰りにPCバンに寄って気軽に競技ができる環境があります。そういった部分に差を感じていて、まずはeスポーツについての認知を広げる、競技人口を増やしていく、というところが必要だと感じています。

――認知拡大に繋がるポイントを教えてください。

【山地理事】これは“ニワトリと卵”の関係になるかもしれませんが、やはりオリンピックをきっかけに認知度が高まった競技はあると思います。近年のオリンピックで言えばスケートボードやブレイキン、カーリングも日本代表選手の活躍でルールを知った方も多いと思います。

ただeスポーツのポイントは、今挙げた競技はなかなか気軽に始めることが難しいのに対し、認知や親御さんのご理解が進めば、子どもでも競技をすぐ始められる環境になるところだと思っています。

――韓国では、中高生のコミュニティの中でゲームが上手い人が人気者になるそうで、認知度の力を感じます。

【山地理事】韓国では、「リーグ・オブ・レジェンド」のトッププレイヤー・Faker選手(韓国代表)の人気は、日本における大谷翔平選手や藤井聡太七冠ぐらいの国民的ヒーローだと聞きました。

CESA(=一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会)の調査によれば、日本でも中高生男子のなりたい職業TOP10の中にeスポーツプレイヤーが入っていますし、日本では今継続的にゲームに触れている人の人口が4割以上いますので、そういう意味では、多くの子どもたちが潜在的に競技者になれると考えています。

友達と一緒に野球やサッカーを始めるように、あるいは家族から将棋を教わるように、気軽に競技としてのeスポーツの取り組みが始められる、それを周りが支援できるような普及を目指していきたいと思います。

――そうした認知拡大に向け、どのようなアプローチを考えられていますか?

【山地理事】我々は次のステップとして、学校教育にしっかりとeスポーツが定着するということを考えています。実際にそうした動きは国単位でもはじまっています。今年の1月に、日本のスポーツ全体の政策を議論する「日本スポーツ会議」が開催されまして、その中の個別セッションでeスポーツがテーマとなりました。そこで出席者の皆さんが“日本のスポーツは学校教育、部活動で発展してきた”と何度も繰り返しおっしゃられて、だからこそ、そこにeスポーツをしっかりと根付かせていく必要があると強調されていました。

そこで我々は、中学・高校総体の種目にeスポーツが加わるよう取り組んでいこうと考えています。韓国の事例からも、若い世代の放課後の重要性を改めて認識しておりますので、それを最大限推進するためには学校教育の中にしっかり入っていこうと。自然とeスポーツを学んでいける環境を整えることが、底上げに繋がっていくという風に思っています。

――今のeスポーツシーンを見ても、選手はゲームコミュニティの中から生まれたプレイヤーにある種限られていますよね。

【山地理事】特に格闘ゲームは古くからコミュニティの中で強い人たちがプロになり選手になりという形になっていますが、今後はより戦略的に、国や我々競技団体が選手層を厚くしていくことが必要だと感じています。

eスポーツ普及は「競技」と「文化」の両輪で

――先ほど国民スポーツ大会(国スポ)の名前が出ましたが、JeSUは2019年から国体の文化プログラムとして「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」を開催されています。その意義について教えてください。

【山地理事】全国都道府県対抗eスポーツ選手権は我々が主催する数少ない大会で、毎年国体、2024年からは国スポの開催地で、開催都道府県で行っています。競技種目が6つほどで、予選を含めれば7~8万人の参加者がある大会です。そこで優勝するレベルの選手は日本代表になる実力ですし、実際eフットボールなどは歴代の大会優勝者が国際代表にも選ばれているんですね。

12月14日(土)と15日(日)の2日間にわたって開催予定の「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」第6回大会
12月14日(土)と15日(日)の2日間にわたって開催予定の「全国都道府県対抗eスポーツ選手権」第6回大会

ですのでeスポーツの普及には大きな貢献に繋がっていますし、参加者にとっても自分たちの目標、モチベーションとして臨める大会になっていると思います。また、国スポ同様開催地は毎年変わりますので、そういう意味でも、各都道府県でeスポーツをアピールできるという点でも大きな意義があるかなと思っています。

――競技としてのeスポーツを推進する上で、準備が難しいと感じる部分はどんなところですか?

【山地理事】代表選手の選考で言えば、今年のパリオリンピックの他競技を見ていても、代表を決めるのが早すぎたがゆえに国際大会に出なくなり、ランキングが下がって組み合わせに影響したという話などもありました。種目が決まってどのように選手を選考していくのか、代表が決まった後どうやって目標大会に向けてコンディションを調整するかは手探りの部分が多いですし、ある意味では楽しみでもありますが、責任を感じて取り組んでいかなければと思うところです。

2026年の第20回アジア競技大会に向け、開催地となる愛知・名古屋では海外選手を招聘したプレイベントを実施
2026年の第20回アジア競技大会に向け、開催地となる愛知・名古屋では海外選手を招聘したプレイベントを実施

また、これは私見ですが、体操や陸上競技ではオリンピックが最高の舞台の一つとしても、年間のプロツアーが決まっているテニスやゴルフでは、必ずしも最優先になっていないのが実情だと思います。そういうことを考えた時に、現状のeスポーツコミュニティの中でオリンピックeスポーツゲームズ、アジア競技大会が選手から見て最高の舞台かと言えばまだ疑問符がつきます。そこを盛り上げていくのも我々の役割だと思いますし、代表選手や所属チームには、目標大会を最優先にしてもらえるようなコンセンサスを取っていくことが今後必要だと思います。そういった点を含めて準備することになると思います。

――現時点でのeスポーツ普及活動の振り返りと、今後の展望について教えてください。

【山地理事】これまで大きな大会を中心にお話をしてきましたが、我々は決して国際大会で採用される種目だけがeスポーツだとは思っていません。それ以外にも人気のあるタイトルがたくさんありますし、今後、ジャンルや種目はさらに増えていくと思います。

また、高齢者福祉、障がい者福祉としてのeスポーツも必要とされています。我々は現在全国に37の支部がありまして、各地方支部の主な役割には地域振興とともに、自治体と組んで福祉への取り組みがあります。こうしたウェルビーイングとしてのeスポーツの幅広い活用はこれまで通りに進めていきたいと思っています。

同時に、やはり学校教育の中にeスポーツを浸透させて、競技力の底上げを図っていくことで社会的地位の向上に繋がります。このように全方位から普及啓発をやっていきたいと考えています。

2024年7月、障がいを持つ方のeスポーツ参加を支援するための、人材育成を目的としたセミナーを実施
2024年7月、障がいを持つ方のeスポーツ参加を支援するための、人材育成を目的としたセミナーを実施

――競技としてはもちろん、eスポーツを“文化”にしていくと。

【山地理事】今、世界のメジャーなスポーツの競技人口として、バレーボールやバスケットボールが4億5000万~5億人と言われているなかで、競技レベルのeスポーツは全世界で1億人ほどと言われています。ただこれはあくまで競技レベルの話で、ゲームユーザーが30億人いると考えれば、潜在的にもっとも身近で誰でもはじめられるのがeスポーツだと思います。

eスポーツの魅力が伝われば必ずや競技人口が増えていって、レベルが上がっていくと確信していますし、時間はかかると思いますが、10年、20年かけて、まずは韓国ぐらい競技人口の層を厚くしていくところを進めていきたいなと思います。

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