1. トップ
  2. グルメ
  3. 11区の1ツ星オートンヌで、フランス素材の味覚の旅を。

11区の1ツ星オートンヌで、フランス素材の味覚の旅を。

  • 2024.10.29

和食ブームのパリ。ラーメンもカツカレーも、パリっ子たちの日常の食事としてすっかり定着している感がある。そんなパリにおけるフランス料理の現状はというと、ルバンタン地方の料理になじみのスパイス、そして柚子や大根など日本の食材が幅を利かせた21世紀フュージョンフレンチばかり。おーい、パリなのだから、フランス的なおいしいフレンチがいいのだけれど......どこに行ったら食べられる?

241028-automne-akishige-01.png
秋重信行シェフのレストラン「Automne(オートンヌ)」は2019年からミシュラン1ツ星を保持している。photography 左:Mariko Omura 右:sadiksansvoltaire

その回答は11区リシャール・ルノワール通りに2017年の秋に開店し、2019年にミシュラン1ツ星を獲得した「Automne(オートンヌ)」である。秋重信行シェフは名前が物語るように日本人。でも、彼はいまフランス人シェフたちが使いたがる味噌、紫蘇、海苔といった和素材を合わせ使いすることなく、フランスの食材を調理して現代的なフレンチガストロノミーを提案するのだ。その裏に秘められているのは的確な火加減を始め、日本人らしい正確さと繊細さ。そして抜群の塩加減。これがオートンヌの料理を格別なものに仕上げている。

241022-automne-akishige-02.jpg
シェフのお気に入りのメニューのひとつは、2タイプのレーズンを添えたフォアグラとパンデピスのタルトレット。photography: Jordan Sapally

秋重シェフのキャリアをおさらいしてみよう。料理学校に行かず、彼は日本でキャリアをスタート。3カ所のフランス料理のレストランで包丁研ぎから始め、いちスタッフから徐々にキッチンにおけるピラミッドを上がっていったのだ。2006年、28歳の時に渡仏し、リヨンでフランス語を学びながらビストロ「L'Etage」で2年半働いた。次いでヴィエンヌの2ツ星「La Pyramide」へ。シェフのパトリック・アンリルゥとともにキッチンで2年を過ごすのだ。その後、夏はサン・トロペで、冬は高級スキー場のクルシュヴェルにて......。2013年、アルザス地方のコルマールにある「L'Atelier du Peintre」へと。ここで2年働いた後、パリの「Biondini」でシェフを務め......そしていよいよオートンヌの開店である。いまから7年前のことだ。

241022-automne-akishige-03.png
店内のいちばん奥がオープンキッチン。シェフとスタッフの仕事ぶりが眺められる。シンプルにまとめられた店内。日本語での説明が必要な時は、マダム・サエコを頼りにしよう。photography:(左)Mariko Omura (右)@sadiksansvoltaire

シェフが選ぶのは季節の新鮮で上質な素材ばかり。それらを奇をてらうことなく、味と食感のハーモニーを追求した創作料理を生み出す。素材の持ち味を最大限に引き出す料理は、結果としてシンプル。でもどのクリエイションにも奥深い味覚と驚きが潜んでいる。海と陸の恵みを組み合わせるのが巧みで、たとえば赤マグロとリ・ド・ヴォーが同じお皿に乗って調和をなしている、というように。また、「セップ茸とジビエのビスク」のように、甲殻類でビスクを作るようにジビエの骨も用いて濃厚なソースに仕立てるという技が生きたひと皿も。

料理がおいしいので、自然と楽しい食事となる。この楽しさをより一層のものにするのが、ソムリエのユリス・イヴローズによるワインのマリアージュだ。彼は2019年からシェフとタンデムを組んでいる。日頃あまりワインを飲まないという人もオートンヌではワインを合わせ、新しい食の旅を試してみよう。

241022-automne-akishige-04.jpg
秋の味覚。セップとジビエのビスク。photography: Mariko Omura
241022-automne-akishige-04.png
左: 西洋ごぼうとブルゴーニュ地方のトリュフ。右: 赤マグロとリ・ドゥ・ヴォー。希少でも苦手という声が少なくないリ・ドゥ・ヴォーだけど、シェフの見事な調理法により格別な味わいに。photography: Mariko Omura
241022-automne-akishige-05.jpg
イチジクのデサートには赤ワインをかけて。photography: Mariko Omura
241022-automne-akishige-06.png
アルザス地方のスパークリングワインのクレモン・アルザスを食前酒に一杯。そしてソムリエのユリスによるマリアージュとともに料理を楽しもう

夏が終わり、これから秋冬のおいしい食材が市場にあふれるフランス。オートンヌに食事に行くには、とても良い季節の到来だ。そして秋を味わうと、春夏も味わってみたくなるだろう。オートンヌ(秋)といっても、四季を味わいに行きたいガストロノミー・レストランだ。ランチメニュー(水〜金)はアミューズ・ブーシュ+前菜+メイン(選択あり)+デザート+ミニャルディーズで75ユーロ。ディナーは2種のメニュー・デクーヴェルト(110ユーロ/5皿、145ユーロ/7皿)。

241028-automne-akishige-07.jpg
おいしい胚芽入りのパンはLes Copains du Faubourgから。Instagram

 

Automne

11, rue Richard Lenoir 75011 Paris
01 40 09 03 70
営)12:00~14:30、19:30~22:30
休)月、火
https://www.automne-akishige.com/Instagram

元記事で読む
の記事をもっとみる