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「このままだと熟年離婚!?」家族の未来に関わる!パパの育児参加が大切な本当のワケは?

  • 2024.10.28

2010年にイクメンブームが起こりましたが、それも今や違和感がある言葉となり、使われなくなってきました。それほどまでに父親の育児参加が当たり前になったからです。しかし“イクママ”という言葉が流行ったことはありません。背景には「母親が育児をするのは当たり前」という社会の固定概念があるからです。これまで多くのパパに育児支援をしてきた大阪教育大学教育学部教授の小崎恭弘先生は、「父親の育児参加は社会的な意義につながる」とパパ育児が与える影響の奥深さを語ります。

パパの育児は5人の人を幸せにする!?

「父親の育児は、5人の人を幸せにします。5人とは、母親、子ども、父親である自分自身、企業、社会のことです」と小崎先生は語ります。1つずつ解説していただきました。

◆母親

児童虐待の加害者として一番多いのが実母です。その一因が孤独です。虐待までいかなくても、母親のワンオペ育児は孤立感と結び付きやすいもの。さまざまな負担を強いることになります。パパが子育ての同志として向き合ってくれる、話を聞いてくれる、一緒に悩んでくれる。それだけでも母親の幸福度は変わります。

◆子ども

今は核家族化、家族の孤立化、父親の長時間労働などの影響で、身近な大人はママしかいないという環境の子どもも少なくありません。しかし子どもにとって幸せな環境は、多様な人と関われる環境です。父親が積極的に育児に関わることで、遊びも価値観も広がります。

◆父親(自分自身)

過労死や自殺は男性のほうが多いことで知られています。男性社会の根底にある価値観が影響していると考えられます。序列や経済性、効率重視の世界で生きていると、失敗したときに大きくメンタルが傷つくことがあります。対する子どもという存在は、非経済であり、非効率であることが当たり前。それが子どもの素晴らしさです。男性が育児に参加することで、その世界観を経験し、許容することでより豊かな人生になります。

◆企業

ワークライフバランスを重視した社員が自社で働くことにより、会社全体の雰囲気が良くなり、モチベーションや作業効率、メンタルヘルスが向上します。企業にとっても大きなプラスです。

◆社会

母親、子ども、父親、企業が幸せになっていくと、社会全体が豊かになります。社会が子どもを豊かに育てることで、大人の人生も豊かになります。結果的には少子化が和らぐことにも結び付きます。これまで母親に傾いていた子育てが変化することで、社会は大きく変わっていきます。

パパが子育てに無関心→熟年離婚に!?

子育てに父親が関わらなかったことが要因で、離婚につながるケースもあるそうです。

離婚は年数が比較的浅いカップルが多いですが、最近は熟年離婚も増えてきました。

以前の夫婦や家族は定型化していて、「結婚すれば夫婦」、「子どもが生まれれば家族」というイメージが定着していました。ところがさまざまな価値が多様化していく現在、家族のスタイルも決まったかたちがなくなってきました。

夫婦や家族もスタートから一緒に、父親と母親が作り上げていく時代です。特に親子のスタートは、子育てです。

「子どもが育っている時期に父親が関わらないと、一緒に家族を作っていく感覚が作られません。結果、それらの恨みやつらみ、しんどさが熟年離婚の理由として挙げられることがあるのだと思います」と小崎先生は分析します。

自分自身が豊かに生きられる! ごきげんパパでいよう

「周りの子育て中の男性はごきげんですか?」と小崎先生は問いかけます。

仕事や人間関係、将来への不安などが原因となってストレスを抱え、誰にも相談できず、孤立感を高めてしまう男性が増えているそうです。だからこそ小崎先生は男性自身の幸せのための子育てを推奨しています。

「子育てすることで、子どもと一緒に成長できるんです。自分自身が大きく変化します。感性や忍耐、物事の見方や葛藤など、親になることで成長できます。それから、子どもがいろいろなことに挑戦したり、頑張ったり、またうまくいかなかったりと、保育所や幼稚園、また習いごとなどでいっぱいそういう場面に出逢います。自分ではない、他人の行動でこんなにもドキドキできるのは、親ならではの特権です」

さらに子育ては親の世界観を広げてくれます。大人だけではあまり行かなかった公園や動物園、科学館などの施設へ行き、自然と触れ合う機会も増えると言います。

「パパ友やママ友、子どもを通じていろいろな人と知り合ったり繋がったりできます。子どもと一緒に世界が大きく広がりますので、その世界を楽しんでほしいと思います」と小崎先生は話します。

理想を求め過ぎない「ええかげん」で楽しく子育て

ところが父親が子育てに関わったからといって、無条件にハッピーになれるわけではありません。ちゃんと寝ない、食べない、散らかす、大声を出すなどという子どもの非効率で非経済的な様子に、イライラを増幅させているケースもあるようです。

「最近では男性の産後うつに注目が集まっています。今年改正された男性育休についても、母親のため、子どものためという目的が語られがちですが、一番の目的は父親が幸せになること、その波及効果として母と子にも好影響がある、ということだと思います。父親への支援も必要なんです」

子育てにストレスを感じている親に、小崎先生は「“ええかげん”が子育ての極意」とアドバイスします。

「子どもの人生は自分の人生じゃない。だから子どもに理想を求め過ぎないことです。ちゃんとできてなくても『まあ、いっか』と思うようにすると、子育てが楽しくなります。一番大切なのは、子育てを通して親自身が楽しく生きること。自分の人生を楽しくごきげんに生きていけるよう、仕事とは違う世界の価値観で肩の力を抜く経験をしてほしいです」

誰かと比べない自分たちらしい子育てを探して

パパによる積極的な子育てが求められる時代ですが、何事にも多様性が求められる現代。関わり方に正解はなく、十人十色です。それぞれの家庭の在り方によって異なります。小崎先生は「幸せの青い鳥を探す必要はない」と表現します。

「幸せのモデルはありません。モデルなき時代を私たちは生きています。だから誰かと比べるとしんどくなります。子育てに関していうと、『うちはどうする?』と自分たちらしさの意識を高めることが大事です。しかし父親が変化することで、確実に社会は変わっていきます。父親の育児は大きな可能性を秘めていると思います」。

取材・文:大楽眞衣子/女性・ライター。社会派子育てライター。全国紙記者を経てフリーランスに。専業主婦歴7年、PTA経験豊富。子育てや食育、女性の生き方に関する記事を雑誌やWEBで執筆中。大学で児童学を学ぶ。静岡県在住、昆虫好き、3兄弟の母。

※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています


監修者:保育士 大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学)教授、大阪教育大学附属天王寺小学校校長 小崎恭弘

兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年間勤務。3人の息子が生まれるたびに育児休暇を取得。市役所退職後、神戸常盤大学を経て現職。専門は「保育学」「児童福祉」「子育て支援」「父親支援」。NPOファザーリングジャパン顧問、東京大学発達保育実践政策学センター研究員。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌等にて積極的に発信をおこなう。

ベビーカレンダー編集部

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