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忙しくて一旦やめても実はOK?筋トレを長期間中断した影響の調査

  • 2024.10.27
トレーニングに前向きに望めなくなったら、いっそのこと長期間休むのもあり
トレーニングに前向きに望めなくなったら、いっそのこと長期間休むのもあり / Credit: Canva

「継続は力なり」という言葉は、勉強、ビジネス、スポーツなど、ありとあらゆる場面で通用する格言です。

筋トレの世界も例外ではなく、日々のトレーニングを継続することで、筋肉が成長し、筋力も高まります。

その一方、トレーニングを続けていれば、時にモチベーションを見失うことや、試験勉強など、別に優先順位の高い物事が生じることで、トレーニングを中断したくなることもあるでしょう。

最近、フィンランド・ユヴァスキュラ大学(University of Jyväskylä)の研究グループは、18~40歳の男女を対象にした興味深い実験結果を発表しました。

その実験とは、20週間連続で筋トレを続けるのと、10週間実施して、10週間休んで、10週間また実施するのとでは、トレーニング効果が変わるのかを調べたものです。

実験結果から示唆されたのは、生涯を通じて筋トレの効果を得たい場合、トレーニングを中断する時期があっても、気にする必要がないというものです。

本記事では、この研究成果を詳しく見ていきます。

今回の論文は『Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports』に2024年10月4日付けで公開されています。

目次

  • 実験の概要
  • マッスルメモリー効果

実験の概要

筋トレは、筋力を高めたり、筋肉を大きくしたりするなど、多様な健康効果をもたらしてくれます。

筋トレを中断すると、得られた効果は徐々に失われますが、およそ4週間未満の中断であれば、トレーニング再開以降の効果に悪影響はなく、また同じように成長できることも示されています。

一方で、1か月を超えるような長期の中断がその後のトレーニング効果に与える影響については、あまり理解されていませんでした。

そこで今回、研究グループは、18~40歳の男女を対象に、20週間トレーニングを継続するグループ(継続実施群)と、途中で10週間の中断を設けるグループ(断続実施群)に分けて実験を実施しました。

実験デザイン
実験デザイン / Credit: Halonen et al. Scand J Med Sci Sports (2024) をもとに作成

実際のトレーニング内容は、週2回の全身法(レッグプレス、ニーエクステンション、ベンチプレス、バイセップスカール、シーテッドロー)で、合計30週間の実験期間中、定期的に筋力や筋肉のサイズを測定しました。

さて、10週間の中断期間を経て再開したグループは、20週間続けたグループと同じように筋肉が成長したのでしょうか?

マッスルメモリー効果

早速主な結果を見ると、筋力、筋肉のサイズともに、最終的なトレーニング効果に両グループ間に有意差は見られず、どちらのグループも同じくらいの成長を遂げていました。

この結果は、20週間連続で実施する(継続実施群)のと、10週間実施して10週間休んで再度10週間実施する(断続実施群)との間で、トレーニング効果が変わらないことを示しています。

研究グループは、この結果が次の理由から重要な知見だと指摘しています。

筋トレの中断は、休暇や旅行、モチベーションの低下など、さまざまな要因によって起こることがあります。

実際、数年前の新型コロナウイルスの流行時には、ジムでのトレーニングが制限され、多くの人が筋トレを中断せざるを得ない状況にありました。

トレーニングの継続は確かに重要ですが、今回の研究結果は、トレーニングが再開される限り、年に一度、10週間といったような中断も、さほど心配する必要がないことを示しています。

ちなみに、断続実施群は最初の10週間で得られた効果を中断期間後に多少失っていたものの、実験開始時よりは成長した状態を維持しており、トレーニング再開5週間後には大幅に回復していたことも判明しています。

この結果は、「マッスルメモリー」と呼ばれる現象で、一度トレーニングを行った筋肉は、中断期間を挟んでもトレーニングの記憶を保持しており、再開後にすぐに成果を得やすいことを示しています。

さて、以前の記事では、完全にやめてしまうよりは、半月に1回でも運動を続けることが大切だと述べました。

一方、今回の研究結果をもとに考えると、長い人生において、1年に1回は2カ月ほど完全にトレーニングをやめてしまうことも、人にとっては合理的な選択肢と言えそうです。

1年のうち2カ月ぐらいはトレーニングをしない期間があっても良いのでは?
1年のうち2カ月ぐらいはトレーニングをしない期間があっても良いのでは? / Credit: Canva

ということで、トレーニングへのモチベーションを見失っている方や、他にやりたいことがある方は、この際思い切って2カ月ぐらい、トレーニングを休んでしまうのも良いのかもしれません。

そういった選択肢をとることで、心と体のリフレッシュを図りながら、また新鮮な気分でトレーニングに取り組むことができるでしょう。

参考文献

Muscle Memory: What It Is, + How It Helps You Build Muscle Faster
https://barbend.com/what-is-muscle-memory/

元論文

Does Taking a Break Matter—Adaptations in Muscle Strength and Size Between Continuous and Periodic Resistance Training
https://doi.org/10.1111/sms.14739

ライター

髙山史徳: 大学では健康行動科学、大学院では体育学・体育科学を専攻。持久系スポーツの研究者として約10年間活動。 ナゾロジーでは、スポーツや健康に関係する記事を執筆していきます。 価値観の多様性を重視し、多くの人が前向きになれる文章を目指しています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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