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セイヨウニワトコは花も実も葉も役立つ木! 育て方のポイントや活用方法を詳しく解説

  • 2024.10.27

清楚な白い花を咲かせるセイヨウニワトコは、西欧では利用価値の高いハーブの一種として親しまれてきた花木。ハーブティーやジャム、コーディアル、ポプリなどに利用でき、庭にあると重宝します。この記事では、セイヨウニワトコの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、品種、育て方、利用の仕方など、幅広くガイドします。

セイヨウニワトコの基本情報

セイヨウニワトコ
weha/Shutterstock.com

植物名:セイヨウニワトコ
学名:Sambucus nigra
英名:elder、elderberry、black elder、European elder、European elderberry、European black elderberry
和名:セイヨウニワトコ(西洋接骨木)
その他の名前:エルダー、エルダーフラワー、エルダーベリー
科名:レンプクソウ科
属名:ニワトコ属
原産地:ヨーロッパや北アフリカ
分類:落葉性低木~中高木

セイヨウニワトコの学名はSambucus nigra(サンブカス・ニグラ)。別名はエルダー、エルダーフラワー。レンプクソウ科ニワトコ属の低木〜中高木です。以前はスイカズラ科に分類されていました。落葉性のため、冬は葉を落として越冬します。原産地はヨーロッパ、北アフリカで、寒さには強い一方で、真夏の高温多湿の環境はやや苦手です。自然樹高は3〜10mですが、毎年の剪定によって程よい樹高にコントロールすることができます。

花や果実をハーブとして利用でき、西洋では古代ローマ時代から活用されてきました。ヨーロッパでは「魔女の木」「悪魔の木」などとも呼ばれ、それにまつわる伝承が多く残っています。

セイヨウニワトコの花や葉の特徴

セイヨウニワトコ
MaLija/Shutterstock.com

園芸分類:庭木・ハーブ
開花時期:5〜6月
樹高:3〜10m
耐寒性:強い
耐暑性:強い
花色:白、ピンク

セイヨウニワトコの開花期は5〜6月で、花色は白。品種によってはピンクの花を咲かせます。一つひとつの花は小さいのですが、枝の先端に集まって咲いてドーム状になるので見栄えがします。花は甘くてフルーティーな香りを持ち、コーディアルやハーブティーなどに利用されます。秋にはエルダーベリーと呼ばれる黒い果実をつけ、こちらもジャムなどに利用できますが、未熟果や生の果実には毒があるとされているので、扱いには注意しましょう。葉は細長い楕円形で、長さは10〜30cmほど。枝に対生につきます。

エルダーベリー
秋に実るエルダーベリー。aga7ta/Shutterstock.com

セイヨウニワトコの名前の由来や花言葉

セイヨウニワトコ
Mario Krpan/Shutterstock.com

学名のSambucus nigraの「Sambucus」は、ギリシアで使われていたサンブカという楽器に由来。「nigra」は黒いという意味で、セイヨウニワトコの実が黒いことからきています。別名のエルダーは、アングロサクソン語で「oels(エルド)」、「炎」という意味が由来です。セイヨウニワトコの枝の芯を取ってストロー状に加工し、火を起こすのに使われていたからとされています。

ニワトコは漢字では「接骨木」と書きますが、これは生薬として打ち身や打撲に使われていたことに由来します。また、ニワトコ(庭常)という名前の由来は、薬用として「庭」に「常」に植えられていたことなのだそうです。

セイヨウニワトコの花言葉は、「思いやり」「熱心」「あわれみ」「苦しみを癒す」「愛らしさ」などがあります。

セイヨウニワトコとニワトコの違いとは?

ニワトコとセイヨウニワトコ
左がニワトコ、右がセイヨウニワトコ。muralird2008、iPlantsman/Shutterstock.com

セイヨウニワトコと日本に自生するニワトコは、近縁種です。主な違いは、セイヨウニワトコは黒い実をつけますが、ニワトコは赤い実をつけること。また、西洋ニワトコは花や実を飲み物やジャムにするほか、ポプリやバスハーブなど幅広く利用されていますが、ニワトコは花や実を食用とはしません。ニワトコは春の新芽を天ぷらに利用するほか、生薬などに利用されています。

ニワトコの実
ニワトコの赤い実。ijimino/Shutterstock.com

セイヨウニワトコの代表的な種類

セイヨウニワトコ
Joe Kuis/Shutterstock.com

セイヨウニワトコには、ガーデニングでよく利用される園芸品種がいくつかあります。代表的な品種をいくつかご紹介します。

ブラックレース

西洋ニワトコ
Diana Taliun/Shutterstock.com

‘ブラックレース’はレースのように細やかな銅葉に淡いピンクの花を咲かせる有名品種。濃厚な葉色に愛らしいピンク花がシックな雰囲気で、ガーデンでは抜群の人気があります。一般種に比べややコンパクトに生育します。

ゴールデンタワー

セイヨウニワトコ
N.Stertz/Shutterstock.com

鮮やかなレースのような黄金葉が明るい印象の‘ゴールデンタワー’は、花のない時期にもカラーリーフとして楽しめます。他の品種に比べ、横への広がりが抑えられるのが特徴です。

オーレア

セイヨウニワトコ
Ritvars/Shutterstock.com

ライムグリーンの葉が爽やかな‘オーレア’。‘ゴールデンタワー’とは異なり、葉は細かく切れ込まずに楕円形もしくは卵形をしています。

セイヨウニワトコの栽培12カ月カレンダー

開花時期:5〜6月
植え付け・植え替え:3〜4月、10月頃
肥料:特になし
剪定:12〜2月
種まき:4〜5月、10月頃

セイヨウニワトコの栽培環境

セイヨウニワトコ
Anastasiia Malinich/Shutterstock.com

日当たり・置き場所

【日当たり/屋外】日当たり、風通しのよい場所を好みます。半日陰の環境でも育ちますが、あまりに日当たりがよくない場所では、花つきが悪くなってしまうので注意しましょう。西日の当たらない場所を選ぶとベターです。

【日当たり/屋内】一年を通して屋外での栽培が基本です。

【置き場所】土壌はややアルカリ性寄りで、水はけ・水もちのよい環境を好みます。日本の高温多湿の夏をやや苦手とするので、西日の当たらない場所がよく、午前のみ日が差す東側などを選ぶとよいでしょう。生育が旺盛で樹高が高くなり、枝もよく伸ばすので、ある程度のスペースを確保して植え付けます。

耐寒性・耐暑性

寒さには強いので、寒さ対策のための鉢上げなどは必要ありません。

セイヨウニワトコの育て方のポイント

用土

土
Wstockstudio/Shutterstock.com

【地植え】

セイヨウニワトコはアルカリ性寄りの土壌を好むため、植え付けの3〜4週間前に植え場所に苦土石灰をまいて、土にすき込んでおくとよいでしょう。植え付けの約2週間前に直径・深さ約50㎝の穴を掘ります。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料を混ぜ込んで穴に戻しておきましょう。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。

【鉢植え】

市販の花木用培養土を利用すると手軽です。

水やり

水やり
Afanasiev Andrii/Shutterstock.com

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。

真夏は、気温が上がっている昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。

また、真冬は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。

【地植え】

植え付け後、しっかり根付くまでは適宜水やりをしましょう。その後は下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続くようなら水やりをして補います。

【鉢植え】

日頃の水やりを忘れずに管理します。ただし、いつも湿った状態にしていると根腐れの原因になるので、与えすぎに注意。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。特に開花期や真夏は水を欲しがるので、水切れしないように注意しましょう。

肥料

肥料
Sarycheva Olesia/Shutterstock.com

【地植え】

植え付け時には、元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。

その後の追肥は必要ありません。しかし木に勢いがないようであれば、液肥を施して様子を見守りましょう。

【鉢植え】

植え付け時には、元肥として緩効性肥料を施しておきましょう。

越年後は、毎年3月頃と10月頃に緩効性肥料を株の周囲にばら撒き、スコップなどで軽く表土を耕し、土に馴染ませます。その後は、株に勢いがないようであれば、液肥を施して様子を見守りましょう。

注意する病害虫

カミキリムシ
feathercollector/Shutterstock.com

【病気】

セイヨウニワトコの栽培では、病気を発症する心配はほとんどありません。

【害虫】

セイヨウニワトコの栽培では、ハダニやカミキリムシなどの害虫が発生することがあります。

ハダニは、葉裏に寄生して吸汁する害虫です。体長は0.5mmほどと大変小さく、黄緑色や茶色い姿をしています。名前に「ダニ」がつきますが、クモの仲間です。高温で乾燥した環境を好み、梅雨明け以降に大発生しやすいので注意が必要。繁殖力が強く、被害が大きくなると、葉にクモの巣のような網が発生することもあります。ハダニは湿気を嫌うため、予防として高温乾燥期に葉裏にスプレーやシャワーなどで水をかけておくとよいでしょう。

カミキリムシは、主に夏から秋に発生しやすくなります。カミキリムシの幼虫が幹に穴をあけて中に侵入し、木質部を旺盛に食い荒らすので注意。被害が進むと木が弱るうえ、中が空洞化して枯れてしまうこともあります。成虫が飛来して卵を産み付けるので、成虫や卵は見つけ次第補殺しておきましょう。また、木の株元などにおがくず状のフンが見つかったら、木の内部で活動していると推測できます。おがくずが出ている穴があれば、穴に細長い針金状のノズルを差し込むタイプの薬剤散布をして駆除してください。

セイヨウニワトコの詳しい育て方

苗の選び方

株元がぐらつかずしっかりして、葉の色艶がよく、葉数も多いものを選ぶとよいでしょう。

植え付け・植え替え

植え付け
wavebreakmedia/Shutterstock.com

セイヨウニワトコの植え付け・植え替えの適期は3〜4月か10月頃です。

【地植え】

土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、苗木をポットから取り出して植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。

庭植えの場合、環境に合って順調に育っていれば、植え替える必要はありません。

【鉢植え】

西洋ニワトコを鉢で栽培する場合は、入手した苗木よりも1〜2回り大きな鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから花木用の培養土を半分くらいまで入れましょう。西洋ニワトコの苗木を鉢の中に仮置きし、高さを決めたら、根鉢を軽くほぐし、少しずつ土を入れて植え付けていきましょう。水やりの際にすぐ水があふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3㎝ほど下の高さまでを目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。

鉢植えで楽しんでいる場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、1〜2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出し、あまり根鉢をくずさずに、新しい培養土を使って植え直しましょう。

日常のお手入れ

剪定
mihalec/Shutterstock.com

【剪定】

樹勢が強く、生育旺盛なので地植え、鉢植えともに毎年の剪定は必須です。剪定の適期は、落葉後の12月〜翌年2月です。伸びすぎたり、込み合いすぎていたりするところがあれば、枝を間引く剪定をしましょう。弱々しい枝、内側に向かって伸びている枝、勢いよく伸びすぎて全体のバランスを崩している枝、下向きに伸びている枝、交差している枝などを選んで付け根から切り取り、風通しをよくします。

増やし方

種まきポット
Kunlanan Yarist/Shutterstock.com

セイヨウニワトコは、挿し木や種まきで増やすことができます

【挿し木】

挿し木とは、枝を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物のなかには挿し木ができないものもありますが、セイヨウニワトコは挿し木で増やすことができます。

セイヨウニワトコの挿し木の適期は、5〜6月か10月頃です。その年にのびた新しい枝を15cmほどの長さで切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を切り取ります。3号くらいの鉢を用意してゴロ土を入れ、新しい培養土を入れて十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて管理します。その後は日当たりのよい場所に置いて育苗し、大きく育ったら植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。

【種まき】

セイヨウニワトコは、開花後に果実をつけます。種子を採取する場合は、開花後そのまま熟すまでおいておき、秋に完熟したら果実を摘み取ります。中の種子を取り出し、果肉を流水できれいに洗い流しておきましょう。日陰で乾燥させたあと、密閉袋に入れて種まきの適期まで冷暗所で保存しておきます。

セイヨウニワトコの種まきの適期は4〜5月か10月頃です。黒ポットに新しい培養土を入れて十分に水で湿らせます。保存しておいた西洋ニワトコの種子を水で洗い、黒ポットに数粒播いて明るい日陰で管理。発芽後は日当たりのよい場所に置きましょう。本葉が2〜3枚ついたら勢いのある苗を1本のみ残し、ほかは間引いて育苗します。根が回るくらいに成長したら、植えたい場所に定植しましょう。

セイヨウニワトコの観賞以外の楽しみ方

セイヨウニワトコ
unpict/Shutterstock.com

ヨーロッパでは、セイヨウニワトコの美しい花姿を楽しむ以外に、ハーブとして暮らしに取り入れてきました。ここではセイヨウニワトコの利用方法についてご紹介します。

ハーブティー

マスカットのようなフルーティーな香りを持つ花をハーブティーとして利用。開花時期に、花を摘んで適量をティーポットに入れ、お湯を注いで2〜3分蒸らしてからいただきます。レンジで乾燥させてドライにし、清潔な密封容器に乾燥剤とともに入れて保存しておけば、いつでも利用可能です。

コーディアル

コーディアルは、煮詰めた砂糖水にハーブや果物を漬け込んで香りを移し、シロップ状にしたもののことです。冷水やお湯、炭酸水などで割ってドリンクにするほか、溶かしたゼラチンにコーディアルを加え、ゼリーを作ることもできます。

ポプリやバスハーブ

セイヨウニワトコの花をドライにし、小さな巾着袋に入れてポプリとして利用。インテリアに飾れば、ほのかな香りを楽しめます。このドライにした花をだしパックなどに入れて湯船に浮かべれば、バスハーブになります。

ジャム

秋に完熟した果実を採取して、枝から実をはずしてきれいに洗います。水気を切って、鍋に実と実の量の約40%の砂糖を入れてしばらく置くと水気が出てくるので、弱火で煮詰めます。アクを取ってレモンを加え、とろみが出るまで煮詰めた後に、煮沸消毒した保存瓶に入れます。

エルダーベリー
Madeleine Steinbach/Shutterstock.com

セイヨウニワトコを育ててさまざまな楽しみ方をしよう

セイヨウニワトコ
Klesz/Shutterstock.com

初夏に香りのよい白い花を咲かせるセイヨウニワトコは、ヨーロッパではハーブとして古くから親しまれてきました。さまざまな利用の仕方ができ、暮らしに生かせるセイヨウニワトコを、庭やベランダに迎えてはいかがでしょうか?

Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。

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