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繊細に美しく塩野瑛久が演じた、一条天皇崩御【光る君へ】

  • 2024.10.27

平安時代の長編小説『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマでの名前はまひろ)の人生を、吉高由里子主演で描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。10月20日放送の第40回「君を置きて」では、『源氏物語』誕生のキーマンとなった一条天皇が崩御。藤原行成の二度目のファインプレーと、すでに先行きが不安でしかない三条天皇も話題になった。

辞世の句を伝えて、世を去った一条天皇(塩野瑛久)(C)NHK

■ 敦康親王を次の東宮にと希望するが・・・第40回あらすじ

一条天皇(塩野瑛久)と中宮・彰子(見上愛)は、ともに漢籍の話をするなど仲むつまじくなっていたが、天皇はしばしば体調を崩すように。大江匡衡(谷口賢志)の占いで崩御の卦が出たことで、藤原道長(柄本佑)は譲位の準備を進める。また、自分の寿命が長くないことを知った天皇は、皇后・定子(高畑充希)との間に生まれた第1皇子・敦康親王(片岡千之助)を次の東宮にすることを希望した。

一条天皇(塩野瑛久)に寄り添う彰子(見上愛)(C)NHK

しかし道長は、彰子が産んだ敦成親王(濱田碧生)を東宮にすることをもくろむ。天皇の側近・藤原行成(渡辺大知)は、第4皇子にも関わらず即位できた清和天皇の例をあげ、「天の定めは、人知の及ばざるもの」と言って、敦成を次期東宮とすることに成功する。三条天皇(木村達成)に譲位した一条天皇は、彰子に「露の身の風の宿りに君を置きて塵を出でぬる事ぞ(悲しき)」という辞世の句を伝えて、世を去った・・・。

■ 複雑にしてナイーブな一条天皇…初大河で見事演じきる

摂政となった祖父・兼家(段田安則)にはじまり、道長とその兄たち、さらには母・詮子(吉田羊)にも手綱を握られつづけ、思うような政ができなかった悲劇の為政者。その一方、文学や音楽に秀で、宮廷文化を大きく花開かせた立役者という面も持つ一条天皇。

「民の心を鏡とせねば、上には立てぬ」という高い理想を持ちながらも、情の厚さが悪い方向に転がったときには、「暗君」と言われてもしょうがない状態となる。この複雑にしてナイーブなキャラクターを、大河初登場を果たした塩野瑛久が、美しくもはかなく演じきった。

敦成を次期東宮とすることを認める一条天皇(塩野瑛久)(C)NHK

在位25年というから結構な年かと思いきや、31歳という当時としても早い年齢での崩御。天皇としての最後の決断となる東宮の指名も、やはり道長にイニシアチブを握られてしまい、愛する定子との間にできた敦康ではなく、道長の孫を据えることになってしまった。最後ぐらいは、自分の思い通りの政治決断をおこないたかっただろうに、敦康親王のバックが弱いために諦めるとは、まさに断腸の思いだろう。

ただその願いを押し通したとしても、自分の死後に道長にいいようにされたり、下手したら呪詛されると、聡明な天皇はわかっていたはず。実は敦康を道長の魔の手から守る、賢明な判断を下したということかもしれない。

■ 行成がなぜここまで、道長のために?

その苦渋の決断を後押ししたのは、天皇を心から敬愛しながらも、道長強火担でもある藤原行成。彰子を中宮にした「一帝二后」でも天皇の説得に一役買ったが、今回もまた「前例があるので、必ずしも第一子を東宮にする必要はない」と「前例」を盾にして押し通し、二度に渡って道長の出世を助ける役割を果たした。

「行成あっての私である」と道長から伝えられ、安堵の表情を見せる行成(渡辺大知)(C)NHK

行成がここまで、道長のために再三身を粉にした理由はいろんな説がある。そこに「道長LOVEだから」という、シンプルだけど決してバカにはできない理由を付けたことで、その行動が権力ドロドロというより、なんだかピュアなものに思えてしまうというのは、脚本家・大石静の大いなる発明だろう。とはいえ天皇が亡くなったことで、彼の板挟み状態もこれで終了。崩御後に行成が流した涙は、悲しみと同時に少しばかりの安堵も含まれていたのかもしれない。

■ 即位早々、不穏…三条天皇が道長に宣戦布告

そうして新たに即位したのが、一条天皇より年上にも関わらず、25年間も東宮の身に甘んじていた居貞親王。そりゃあ「一条天皇、そろそろヤバいってよ」って聞かされたら、ようやく俺のターンが来た! と浮き足立つだろう。とはいえその喜びがあまりにもあからさまだったので、SNSでは「ウキウキが隠せておらん!」「どう見ても病を案じてる顔とちゃう」「顔がニヤついてるぞ」などのツッコミの嵐となった。

三条天皇(木村達成)(C)NHK

居貞改め三条天皇は、ずっと道長を「叔父上」と呼んでいたように、道長のもう一人の姉・超子と冷泉天皇(一条天皇の3代前)の間に生まれた皇子。つまり道長にとっては一条も三条も、叔父と甥の間柄という点では変わりがない。しかし一条が外戚とズブズブの関係だったため、なにかと遠慮がちだったのに対して、三条は7歳で母を亡くしたこともあり、外戚との縁が一条ほど強くない。苦労もあったろうが、その分顔色をうかがう必要もないというのは、ここに来て大きなアドバンテージとなった。

実際に「言いなりにはならぬ」と、ひそかに宣戦布告をしていた三条天皇。ここから道長が「わが世をば」の無双状態となるための、最後の大きな壁ともいうべき存在なのだから、ぜひ良いファイトを期待したい。

そして今回で退場した一条天皇役の塩野瑛久、現在放映中のドラマ『無能の鷹』(ABCテレビ)や、まもなく公開の映画『八犬伝』に出演しているので、ぜひそれでロスを解消して・・・と言いたいが、どちらも一条天皇とのギャップが激しい役なので、逆にあの麗しいお上ぶりが恋しくなってしまうかも!?

『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。10月27日放送の第41回「揺らぎ」は、新しく即位した三条天皇と道長が対立を深めていく一方、まひろの娘・賢子(南沙良)と若武者・双寿丸(伊藤健太郎)の仲が近づいていく様子が描かれる。

なおNHK総合は夜8時から「衆院選開票速報2024」を放送するため、夜7時10分に放送開始時間を変更する。NHKBS、BSP4Kは通常通り放送。

文/吉永美和子

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