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【広尾】山種美術館 特別展「没後50年記念 福田平八郎×琳派」

  • 2024.10.28

斬新で大胆、写実から独自のスタイルへ、福田平八郎(ふくだへいはちろう)、琳派(りんぱ)とコラボ

山種美術館で開催中の特別展「没後50年記念 福田平八郎×琳派」[9月29日(日)~12月8日(日)]を見て来ました。

福田平八郎は、大分に生まれ京都市立美術工芸学校、京都市立絵画専門学校に学び、卒業後の1919年(大正8)には《雪》で帝展に初入選を果たしています。 京都で絵画を学んでいたときに美学の教授・中井宗太郎から「君は自然を客観的にみつめてゆく方がよいのではないか」とアドバイスを受けたことは平八郎の画業を支える羅針盤となったそうです。

琳派を憧憬していた平八郎は自身の作風を「写実を基本にした装飾画」と後年語っていたそうです。 琳派の名品とのコラボや、琳派の影響を受けた近・現代日本画との競演も見どころの展覧会です。

※特別な許可を得て撮影しています。一部撮影許可の作品以外は館内は撮影禁止です。

出典:リビング東京Web

手前、《竹》 1957(昭和32)年 紙本・彩色 個人蔵他、特別展「没後50年記念 福田平八郎×琳派」展示風景 山種美術館

写実の極み《牡丹》、色彩と装飾性の美しさ《筍》、《彩秋》、《竹》、《漣》

《筍(たけのこ)》

黒光りする筍が春の竹林で勢いよく伸びて行く姿。 よく見ると2本の筍は同じではなく、それぞれが細密にきちんと描き分けられています。 まわりに散らされた竹の葉が装飾的です。

出典:リビング東京Web

福田平八郎 《筍》 1947(昭和22)年 絹本・彩色 山種美術館蔵

《彩秋(さいしゅう)》、《牡丹(ぼたん)》

平八郎大正期の代表作《牡丹》(右)。中国・宋代(10~13世紀)の院体花鳥画を強く意識して描かれた作品とのこと。 細密な牡丹の花びら1枚、1枚の描写に、まるで風で揺れ動いているかのような幻想的な雰囲気さえ感じさせます。

秋の柿の葉がカラフルな配色で描かれている《彩秋》(左)。柿の枝の下には、ススキの穂が並ぶ単純な構図です。

出典:リビング東京Web

福田平八郎 右側《牡丹》1924(大正13)年 絹本・彩色、左側《彩秋》 1943(昭和18)年 絹本・彩色 どちらも山種美術館

《竹(たけ)》、《漣(さざなみ)》、《紅白餅三鶴(こうはくもちさんかく)》

カラフルなデザイン画のような《竹》。 平八郎は自然を時間をかけてつぶさに観察し、写生を重ねていたそうです。 成長し、時間を追って色が変わって行く竹。竹は緑青で描くという日本画の伝統にとらわれない平八郎の眼には竹の色がこんなふうに見えていたのかもしれません。

《漣》は、平八郎が初期のリアルな「写実」から「装飾性」を帯びながら、見る側にも共感できる具象性と客観性をそなえた画風へと変化した作品です。 大きさは違いますが、同じ題名の作品で、大分県立美術館の展覧会(2024年)でも重要文化財《漣》(1932年 大阪中之島美術館所蔵)が展示されていました。

平八郎は琵琶湖畔で釣りをしながら湖面を眺めているうちに、光に反射して揺らめく湖面に目が留まり写生を始めたそうです。 はじめは湖面から見えるものを写実的に描こうとしたそうですが、次第に漣そのものを描くように。

見る人の心に、光に揺れる水面(みなも)の記憶を呼び覚ます平八郎の《漣》です。 群青の絵具で描かれた漣の造形表現は、抽象画ではなく、作家の心の眼で捉えた写実の湖面なのかもしれません。

単純化された形態や構図と配色で形を捉えた《紅白餅三鶴》。 余分なものは画面から消え去り、モチーフを際立たせる意匠と配色が印象に残ります。

出典:リビング東京Web

福田平八郎 右から《竹》 1957(昭和32)年 紙本・彩色 個人蔵、《漣》 20世紀(昭和時代) 紙本・彩色 個人蔵、《紅白餅三鶴》 1960(昭和35)年頃 紙本・彩色 個人蔵

琳派推し、平八郎が心惹かれた装飾性《四季花鳥図(しきかちょうず)》、重要美術品《秋草鶉図(あきくさうずらず)》、《槙楓図(まきかえでず)》

平八郎の作品は、日本や中国のさまざまな古典芸術の影響を受けているとされますが、琳派の影響は特に大きかったようです。 琳派については「宗達は余りに偉大な画家」「世界的に見ても第一人者」と賛辞を惜しまず「宗達などの琳派が好きなものだから、どうかすると装飾の方に走りたがる」と語るほどの琳派推しだったようです。

伝 俵屋宗達(でん たわらやそうたつ)《槙楓図》(右)、酒井抱一(さかいほういつ)《秋草鶉図》重要美術品(中央)、鈴木其一(すずききいつ)《四季花鳥図》(左)。 装飾性を際立たせる金地を背景に草花、花鳥を意匠的に配して描いた華やかな琳派の屛風図です。

出典:リビング東京Web

右から、伝 俵屋宗達 《槙楓図》 17世紀(江戸時代) 紙本金地・彩色、酒井抱一 《秋草鶉図》重要美術品 19世紀(江戸時代) 紙本金地・彩色、鈴木其一 《四季花鳥図》 19世紀(江戸時代) 紙本金地・彩色 すべて山種美術館蔵

近・現代の日本画への琳派の感化力《秌采(しゅうさい)》、《丘の畑(おかのはたけ)》、《新宮殿杉戸楓4分の1下絵(しんきゅうでんすぎとかえで4ぶんの1したえ)》

近・現代日本画の作家たちも、日本や中国の古典に学び、新しい時代の日本画を探求して来ましたが、琳派からの感化力は大きかったようです。 会場には、琳派的な造形表現を見せる近・現代の日本画の名品が並んでいました。

同じく琳派を敬愛していた小林古径(こばやしこけい)の《秌采》(右)。金泥で柿の葉の秋の彩りを描き、朱色の柿との対比で画面を華やかにしています。墨のぼかしで描かれた枝と垣根が白い余白を引き締めます。

富取風堂(とみとりふうどう)の《丘の畑》(中央)は、平面的な画面に単純化された緑が確かに琳派を思わせる意匠的な表現。

皇居新宮殿の正殿東廊下杉戸《楓(かえで)》を手がけた山口蓬春(やまぐちほうしゅん)の《新宮殿杉戸楓4分の1下絵》(左)。赤く紅葉した楓の葉が手前に向くように描かれていて、琳派の装飾性と古典的な風情も感じさせる作品です。

出典:リビング東京Web

右から、小林古径 《秌采》 1934(昭和9)年 紙本・彩色、富取風堂 《丘の畑》 1939(昭和14)年 絹本・彩色、山口蓬春 《新宮殿杉戸楓4分の1下絵》 1967(昭和42)年 紙本・彩色 すべて山種美術館蔵

形式や装飾性からも自由、福田平八郎の世界へ

平八郎の「写実」は、表面的な「仮」の姿ではなく、平八郎自身の心の眼で時間をかけて見つめ続け、モチーフの本質を貫き通し、真実の姿、実相の姿へと迫る透徹した眼を感じさせます。

晩年の平八郎は、形式や装飾性にこだわらないおおらかな画風になったそうです。写実や装飾性を突き抜けた先に何かを見出して心が自由になったのかもしれません。

琳派とのコラボも楽しみな山種美術館の特別展「没後50年記念 福田平八郎×琳派」は12月8日(日)までです。 是非お出かけください。

出典:リビング東京Web

福田平八郎 右から《芥子花》 1940(昭和15)年頃 紙本・彩色、《游鮎》 1935(昭和10)年頃 絹本・彩色、《春》 1925(大正14)年頃 絹本・彩色 すべて山種美術館蔵

ミュージアムグッズ

ミュージアムグッズは、和三盆糖の干菓子めお兎(1‚320円)、展覧会にちなんだクリアファイルA4《筍》(福田平八郎)を購入。 弥彦山に住んでいた兎が神様に諭されてかしこまった姿がキュートなめお兎です。

出典:リビング東京Web

ミュージアムグッズ 山種美術館

Cafe 椿 展覧会の作品にちなんだオリジナル和菓子

Cafe 椿では、青山・菊家のオリジナル和菓子、展覧会の酒井抱一《菊小禽図》にちなんだ「菊の香」(710円)(右下)をいただきました。 白い菊の花の和菓子は、胡麻入りこしあんです。お抹茶セットでいただくと(1,350円)です。

※文中のうち、所蔵先表記のない作品はすべて山種美術館所蔵です。※価格は税込価格です。

出典:リビング東京Web

Cafe 椿 オリジナル和菓子「菊の香」(右下) 山種美術館

〇山種美術館
URL:https://www.yamatane-museum.jp/
住所:〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-12-36
TEL:050-5541-8600 (ハローダイヤル)
開館時間:10時~17時(入館は閉館の30分前まで)
※今後の状況により、開館時間は変更になることがあります。
交通:JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅 2番出口より徒歩約10分
恵比寿駅西口1番乗り場より日赤医療センター前行都バス(学06番)に乗車、「広尾高校前」下車徒歩1分
渋谷駅東口ターミナル54番乗り場より日赤医療センター前行都バス(学03番)に乗車、「東4丁目」下車徒歩2分
〇Cafe 椿
住所:〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-12-36山種美術館1階
営業時間:10:30~17:00(L.O.16:30)
休業日:美術館に準ずる 毎週月曜日(祝日の場合は翌日に振替)、展示替え期間、年末年始

〇特別展「没後50年記念 福田平八郎×琳派」
会 期:9月29日(日)~12月8日(日)
※出品作品および展示期間は都合により変更される場合があります。
休館日:月曜日 ※11/4(月・振休)は開館、11/5(火)は休館]
入館料:一般1400円、大学生・高校生1100円、中学生以下無料(付添者の同伴が必要です)
※障がい者手帳、被爆者健康手帳をご提示の方、およびその介助者(1名)は 1200円
*上記のいずれかのうち大学生・高校生 1000円
「きもの特典」きものでご来館のお客様は、一般 200 円引き、大学生・高校生 100 円引き。 ※複数の割引・特典の併用はできません。

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