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【ネタバレ】映画『破墓/パミョ』墓に隠された秘密とは?結末はどうなる?これまで観たことのないサスペンス・スリラーを徹底解説

  • 2024.10.26

2024 年の韓国No.1 ヒットを記録し、第74回ベルリン国際映画祭正式出品・第60 回百想芸術大賞4冠を受賞した『破墓/パミョ』。

先祖の墓を掘り起こしていくことで、隠された秘密が次々と明らかになるサスペンス・スリラーとなっている。

映画『破墓/パミョ』(2024)あらすじ

巫堂ファリムと弟子ボンギルは、跡継ぎが代々謎の病気にかかるという奇妙な家族から、桁違いの報酬で依頼を受ける。すぐに、先祖の墓が原因だと気づき、お金の臭いを嗅ぎつけた風水師サンドクと葬儀師ヨングンも合流する。やがて、4人はお祓いと改葬を同時に行なうが、掘り返した墓には恐ろしい秘密が隠されていた……。

※以下、『破墓/パミョ』ネタバレを含みます。

ユニークな場面設定で彩られる破墓

韓国では風水的に良い場所に肉親の墓を建てると子孫が繁栄すると言われており、本作ではそういった韓国独特の文化背景が下地となっている。物語は自身の息子が奇病にかかり、どんな治療を受けても回復しないという在米韓国人の富豪が巫堂・ファリムと弟子のボンギルに依頼をするところから始まる。巫堂とは霊に仕え、吉凶を占ったりお告げをする、日本でいうイタコやユタのような存在だ。息子を苦しめている原因が先祖の墓だと気づいたファリムは、風水師・サンドクと葬儀師・ヨングンと共に“破墓”をすることになる。“破墓”とは一度葬られた遺骨を別の場所に移したり、改葬する為に墓を掘り出すことである。土葬が一般的な韓国では一般的によく知られた文化だろう。

そんな“破墓”が行われる墓はかなり異様でユニークな存在感を放っている。山頂にぽつんと佇む墓地の不気味さは、この場所がただの墓地ではないことが、一目見て観客にも伝わるものとなっている。また、韓国の広大なロケーションを多用した、物寂しく閑散とした雰囲気も独特だ。そういった細部にまでこだわった場面設定は本作の大きな魅力となっている。

本作で描かれるシャーマニズム

“破墓”の際に執り行われるのは“テサルお祓い”という儀式だ。これは本作の為に創作された造語であるが、基本的には豚や牛を生贄として神に捧げるタサルお祓いと同じ意味のものとなっている。劇中では、亥年生まれの働き手5人と供え物の豚5匹を用意し、5人に墓を掘らせ、地の悪い気を供え物に移して巫堂が代わりにそれを祓う手法となっている。血飛沫が飛び、複雑なリズムの音楽を奏でながら、飛び跳ね踊り狂うファリムの様子はかなり異様だ。画面から伝わってくるその力強さとトランス状態はお祓いという非現実的なものではあるが、妙な説得感すらある。

心霊ホラーからモンスターパニックへと変質する表現

本作でのホラー描写にも着目したい。序盤はJホラーにも通じるような心霊ホラーとして描かれている。霊が迫り来る恐怖は、墓を掘り起こし、棺の蓋を開いてしまったことによって起こる災厄として不安を煽るものとなっている。その結果として親族の身に次々と不幸が襲ってくる。窓越しや物陰に映り込む霊は『呪怨』などを彷彿とさせる。

しかし、物語後半にかけて霊の描き方はかなり変質していく。墓にはさらに“ヤバい”ものが隠されており、その後の描写は限りなくモンスターに近いものとなっているのだ。主人公らがその存在に気付いた時、それは単なる霊的なものではなく畏怖の対象へと変化していく。

元凶の正体と鉄抗とは

劇中で憑依された人物らは「狐が虎の腰を切った」というセリフを発する。これは日本による植民地支配の時期に打ち込まれた“鉄杭”についてのことを表している。墓地の棺の下からはこの“鉄杭”が発見されたのだ。“鉄杭”は日本が朝鮮半島の精気を断ち切るために、風水上のツボに打ち込んで抑えたという呪術的な意味合いがあったのではないかと考えられている。この設定が本作の肝であり元凶になっているとも言える。

また、本作では日帝時代の歴史について虚実織り交ぜて描写されている点が多い。さらに韓国という土地柄が特に風水を重んじる考え方があることで、それらをホラーというジャンル映画に混ぜ込んで昇華させている。本作が単なるオカルト映画として終わらず、奇妙な魅力を放っているのは、独特の文化背景からくるものである点は非常に興味深い。

(C)2024 SHOWBOX AND PINETOWN PRODUCTION ALL RIGHTS RESERVED.

※2024年10月15日時点の情報です。

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