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「寝ぼけて抱きついちゃった」憧れの大学生活で悪化した男性不信

  • 2024.10.25

高校を卒業して、進学のために上京。地元の同級生たちともう会わなくて済むことに安堵したと同時に、東京での生活にワクワクしていた。イメチェンもして、地元にいた頃の面影はない。これで彼氏ができれば完璧。試しにSNSで、大学のコミュニティに入ってみた。

◎ ◎

実際に会ったことはなくても、共通のコミュニティ内なので自然と話が弾む。何人かと個別でやり取りすることもあり、入学してからも毎日のように連絡を取り合っていた。地元では、こんなに楽しい思いをしたことはなかった。キャンパスライフも順調で「東京の大学にして正解だったかも」と思っていた。

連絡を取り合う中で、私に好意を寄せているような発言をしてくる男子学生が数人いた。投稿されている写真で顔は知っていたけれど、「一度も会ったことがないのに」と少し呆れてしまった。それでも、「可愛い」「彼氏いるの?」などとチヤホヤされて、浮かれてしまっていた。疑似恋愛をしているような感覚を楽しんでいる自分がいた。

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やり取りしている男子学生の1人から、今度会わないかと誘いを受けた。キャンパス内で一度見かけたことはあったけれど、急いでいて声を掛けられなかった。そのときはおしゃれな感じの人だなという感じで、SNSでのやり取りでも印象はよかったので会ってみることにした。

実質、初対面。待ち合わせはコンビニ前。少し緊張しながら待っていると「みちるちゃん?」と、声を掛けられた。振り向くとキャンパス内で見た顔があった。「お待たせ」と優しい笑顔のNくん。近くのアパートに住んでいるらしいので、お邪魔することになった。地元のことや上京してからのこと。ジュースを飲みながら、私たちはたくさんのことを話した。気づいたら4時間も経っていたので、その日は名残惜しいけれど解散した。

Nくんとの会話はとても楽しかった。普段は人見知りで全然話せなかったのに、この日はすごく会話が弾んだ。大阪出身で関西弁なのもいいし、ビジュアルもなかなかカッコいい。地元にいた男子とはレベルが全然違った。こういう人が彼氏だったらいいなと思うようになった。

◎ ◎

少し経って共通の友人から、Nくんに同じ大学の彼女がいることを聞いた。しかも、私と会ったときにはすでにいたらしい。「恋人がいるのにあり得ない!」とショックだったので、もう会わないと決めて連絡を取るのもやめた。

それから1年程経って、Nくんが彼女と別れたと風の噂で知った。「無理やり彼女に講義をサボらせて会っていた」「彼女を妊娠させた上に逆ギレして捨てた」など、よくない噂も聞いた。私が会ったときのNくんは、そんなことをするような人には見えなかったので、信じられなかった。

数ヵ月が経ち、そんな噂も忘れかけていた。「元気?よかったらメシ食いに行かん?」と、久しぶりにNくんから連絡があった。友だちにはやめておけと言われた。でも、私はあの噂が気になっていたこともあり、会ってみることにした。

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相変わらずキラキラした笑顔のNくん。スマホの裏側には、元カノとのプリクラが貼ってあった。「プリクラ貼ってるの?」と聞くと、「あー、彼女今ちょっと体調崩して地元帰ってるみたいで」とNくんは少し元気がなさそうに答えた。「これが真実なのかな?」と、私はそれ以上深く聞かなかった。

「少しアパートでお茶しよう」と誘われ、一度は断ったものの「少しだけ」と言われて上がってしまった。以前と同じように話は弾んだものの、恋人がいる人の家に長居するのはよくないので、そろそろ帰ろうかなと思ったときだった。Nくんが急に立ち上がりこちらへ来ると、いきなり抱きついてきた。びっくりして私は固まってしまった。怪しい雰囲気になってきたので、ハッとして私はNくんを押し退けた。「そろそろ帰るね」と玄関に行き、ササッと靴を履いた。

「もう帰るの?」と言いながら、Nくんは私を見送ってくれた。「寝ぼけて抱きついちゃった」とヘラヘラしているNくんを見て、ただただ気持ち悪いと感じた。噂は本当かもしれないと思った。それ以来、連絡は一切取らず、大学を卒業した。

元々、男性不信だったのがさらに悪化し、結局、大学でも彼氏はできなかった。Nくんの件もあり、SNSはやめてしまった。理想は一気に崩れ去ってしまった。東京に来たことが本当に正しかったのか、分からなくなってしまった。それでも、大学で信頼できる友だちができたことが、唯一の救いかもしれない。

■犬屋敷みちるのプロフィール
食べることと、犬をもふもふするのが大好きなアラサーOL。HSP。 趣味で読書をしたり、小説を書いたりしている。 好きな季節は冬。こたつで雪見だいふくを食べるのが毎年の楽しみ。

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