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海外映画の「邦題」、失敗例は? あの有名作品の意外な原題

  • 2024.10.24

皆さん、映画はどのくらい観てますか? 昨今はサブスク動画配信サービスのおかげで、より気軽に映画鑑賞ができるようになりましたね。でもせっかくなら、映画の「奥深い世界」をのぞいたうえで、より深く思考をめぐらせながら鑑賞してみませんか?このたび年間鑑賞数500本のエンタメ評論家・コトブキツカサが映画にまつわる様々なトピックスを深掘りした書籍『教養として知っておきたい映画の世界』が発売されました。今回はその著書の中から、いくつかの人気作品の鑑賞ポイントなどをご紹介していきます。意外な小ネタもあって、作品に対する印象も変わってくるかも!?ぜひ新たな視点から映画作品を楽しみましょう!※本記事は『教養として知っておきたい映画の世界』(コトブキツカサ/日本実業出版社)から一部抜粋・編集しました

ダ・ヴィンチWeb
『教養として知っておきたい映画の世界』(コトブキツカサ/日本実業出版社)

海外作品の秀逸な邦題と残念な邦題

●訴求力が低いと判断されると邦題がつく

海外の映画を日本の配給会社などが購入した場合、その作品の国内タイトルは原則として日本の配給会社などがつけます。

原題をそのまま使うケースもありますが、長いタイトルや意味がわかりづらいタイトルなど、訴求力が低いと判断された場合は邦題がつけられることになります。

日本映画界の歴史に刻まれるような秀逸な邦題はたくさんあります。

例えば、原題「The Fast and the Furious」(ザ・ファースト・アンド・ザ・フューリアス。直訳すると「速くて猛烈な」)は、2001年、「ワイルド・スピード」というイメージが湧きやすい邦題で公開されました。

ディズニー(ピクサー含む)作品は、子どもにもわかりやすい、それぞれの世界観にふさわしい邦題になっています。

「Up」(アップ/2009)→「カールじいさんの空飛ぶ家」 「Frozen」(フローズン/2013)→「アナと雪の女王」 「Big Hero 6 」(ビッグ・ヒーロー 6/2014)→「ベイマックス」 「Coco」(ココ/2017)→「リメンバー・ミー」

ちなみに2020年に公開された「2分の1の魔法」の原題「Onward」(オンワード)は直訳すると「前へ」です。「前進」や「成長」の意味としても使える、本作のあらすじにふさわしい、シンプルで覚えやすいタイトルかもしれません。

しかし、日本国内ではアパレル会社のイメージが強いため、原題からタイトルが変更されたといわれています。

その他にも、この邦題に変更したからこそ成功した(原題のままだった場合、ヒットしなかったのでは……)と個人的に思う映画を何作品か挙げておきます。

「Bonnie and Clyde」(ボニー&クライド/1967)→「俺たちに明日はない」 「Dawn of the Dead」(ドーン・オブ・ザ・デッド/1978)→「ゾンビ」 「The Thing」(ザ・シング/1982)→「遊星からの物体X」 「An Officer and a Gentleman」(アン・オフィサー・アンド・ア・ジェントルマン/1982)→「愛と青春の旅だち」 「Sister Act」(シスター・アクト/1992)→「天使にラブ・ソングを…」 「Almost Famous」(オールモスト・フェイマス/2000)→「あの頃ペニー・レインと」 「Crust」(クラスト/2002)→「えびボクサー」 「The Italian Job」(ザ・イタリアン・ジョブ/2003)→「ミニミニ大作戦」 「The Notebook」(ザ・ノートブック/2004)→「きみに読む物語」 「Whiplash」(ウィップラッシュ/2014)→「セッション」

シルヴェスター・スタローン主演「ランボー」(1982)の原題は「First Blood」(ファースト・ブラッド)で、直訳すると「最初の血」です。

流血が多いボクシングの試合では、「draw first blood(ドロウ・ファースト・ブラッド)」(最初の血を招く=先制する)という用語があります。

クライマックスでランボーが大佐に対し、「誰が警察に先に仕掛けたんだ!」と怒りをぶつけるシーンがありますが、この場面にインスパイアされて「ファースト・ブラッド」というタイトルがつけられたという説があります。

「ランボー」シリーズ2作目の邦題は「ランボー/怒りの脱出」(1985)ですが、原題は「Rambo: First Blood Part II」(ランボー・ファースト・ブラッド パート2)となっています。

ほかにも邦題で印象に残っているのが007シリーズ2作目のショーン・コネリー主演「007/危機一発」(1963)です。

同作品の原題は「From Russia with Love」(フロム・ロシア・ウィズ・ラブ)ですが、「危機一髪」の「髪」を、意図的に銃弾をイメージさせる「発」と誤字を使った邦題でヒットさせたのは、当時、日本ユナイテッド・アーチスツ映画会社(通称:ユナイト映画)の宣伝部に在籍していた故・水野晴郎氏(その後、1972年のリバイバル上映時には「007/ロシアより愛をこめて」に改題)。一定年齢以上の方にとって水野氏は、1970年代のテレビ番組で映画解説を担当する際、「いやぁ、映画って本当にいいもんですね」と語ってお茶の間の人気を集めた映画評論家として知られていますが、もともとは映画配給会社の宣伝総支配人として、「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」(1964、原題は「A Hard Days Night」)など、数々の邦題を考案したとされています。

●邦題をつけたことで物議を醸した作品

以上のように原題に比べて日本の観客に伝わるよう工夫した邦題もありますが、映画ファンからすると「残念な邦題」も存在します。

例えば、アカデミー賞9部門にノミネートされ、アルフォンソ・キュアロンが監督賞などを受賞した「ゼロ・グラビティ」(2013)の原題は、真逆の意味の「Gravity」(グラビティ=重力)です。「重力」というタイトルの映画を「無重力」(ゼロ・グラビティ)にしたため、一部の映画ファンがSNSなどで嘆きました。

公開前に同作品の関係者から聞いた話によると、社内会議では最初に原題を直訳した「重力」にする案が出たようです。邦画の歴史をひもとくと漢字2文字のタイトルが定番としてあることと、当時、松たか子さんの主演映画「告白」(2010)が大ヒットしていた影響もあったといいます。

しかし、反対意見が出たため白紙に戻り、その後、ベストセラー小説『永遠の0』の映画化が発表され、公開時期が両作品とも2013年12月だったことから、「ゼロ対決」という話題性も期待した上で「ゼロ・グラビティ」になったそうです。

もう1本取り上げたい作品が「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(2015)です。

原題は「Mad Max: Fury Road」。マッドマックスはそのままですが、サブタイトルは「フューリー・ロード」です。今の邦題が嫌いというわけではないのですが、僕は作品解釈的に原題にある副題のほうが良かったと思っています。

フューリー・ロードのフューリーとは「怒り」の意味で、ギリシャ神話の復讐の女神「フューリー」から派生した言葉ですが、この物語はイモータン・ジョーの軍団に虐げられてきた女性たちが、逃げた道を引き返して復讐する話だけに、フューリー・ロードというサブタイトルが大事なのです。付け加えるならシャーリーズ・セロン演じる隊長の名前がフュリオサなのもフューリー(復讐の女神)から名づけられています。

あくまで主観になりますが、「原題そのままでもよかったのでは?」と思う作品も多々あるものです。

「内容が伝わらないタイトルはヒットしない」と話す識者もいますが、「ジョーズ」(1975)、「E.T. 」(1982)、「グレムリン」(1984)、「ゼイリブ」(1988)など、タイトルだけ聞いても内容がまったくわからない映画でもヒットしているものはあります。

日本語のタイトルやサブタイトルを使って映画ファンに作品イメージを伝えたい気持ちはわかりますが(潤沢な広告費が捻出できない作品にありがちです)、邦題をつけることですべてが目論見通りに進むわけではありません。オリジナルのタイトルと独自の邦題をつけるかは是々非々で検討してほしいものです。

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