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地球最初の「動物」の一種を発見、「?」マークを背負うルンバみたいな生物

  • 2024.10.24

最初期に誕生した「動物」の一種が見つかったようです。

米フロリダ州立大学(FSU)は最近、南オーストラリア州にて約5億7500万年前に存在した新種の古生物を発見したと発表しました。

この古生物は丸くて平たいルンバのような見た目をしています。

それと同時に、自力での「移動能力」と体の「左右非対称性」を持ち合わせる複雑な多細胞生物であることも判明しました。

こうした複雑な多細胞生物、すなわち「動物」が誕生し始めたのは約5〜6億年前とされています。

つまり、この古生物は地球最古の動物の一つと考えられるのです。

研究の詳細は2024年9月3日付で科学雑誌『Evolution&Development』に掲載されました。

目次

  • 地球最古の「動物」たちが誕生した時代
  • 地球最古の「動物」の一種か?

地球最古の「動物」たちが誕生した時代

地球上に生命が誕生したのは約35〜38億年前とされています。

最初の生命はたった1つの細胞からなる「単細胞生物」でした。

単細胞生物の細胞には、体を動かしたり栄養を取り込むための仕組みが簡素ながらまとめて備わっています。

単細胞生物の代表例は細菌やゾウリムシ、アメーバなどです。

それからしばらくの間、単細胞生物の時代が続きますが、約10億年ほど前に複数の細胞が寄り集まってできた「多細胞生物」が誕生しました。

多細胞生物は細胞ごとに役割分担をすることで、単細胞生物より高度な生命体へと進化を遂げます。

Credit: canva

とは言え、ここで出現した多細胞生物たちはまだシンプルなものであり、その多くが海底に固定されていて、自力で自由に移動する能力を持ち合わせていませんでした。

しかし今から約6億年前に、現在の動物に繋がるようなより複雑な多細胞生物が急に現れ始めます。

これが「エディアカラ生物群」です。

エディアカラ生物群とは、南オーストラリア州アデレードにあるエディアカラの丘陵で大量に発見された化石群を指し、1947年に初めて発見されました。

それ以前に存在していたシンプルな多細胞生物より複雑であったことから、エディアカラ生物群は地球最古の動物の一群と考えられています。

ただエディアカラ生物群の中でも最初に出現した種がどのようなものだったのかはわかっていません。

そんな中、フロリダ州立大の研究チームは最初期に誕生した動物の一種を新たに発見したのです。

地球最古の「動物」の一種か?

新種の古生物の化石が見つかったのは、南オーストラリア州のアウトバック(オーストラリアの内陸部に広がる砂漠を中心とする広大な人口希薄地帯のこと)にある「ニルペナ・エディアカラ国立公園(Nilpena Ediacara National Park)」です。

この公園はエディアカラ生物群の化石を産出する場所として有名で、その貴重な化石記録からユネスコ世界遺産への登録が検討されています。

研究チームはこの場所で20年以上にわたり発掘調査を続けてきました。

そして最近、今まで知られていなかった新種の古生物の化石を発見に成功したのです。

この生物は丸くて平たいルンバのような見た目をしており、大きさは成人の手の平くらいあります。

体は無数の細胞でできた多細胞生物であり、体の表面にはクエスチョンマークのような器官があって、この生物の体が左右非対称であることを示していました。

復元イメージ(左は痕跡化石、右は実際の復元像)/ Credit: Scott D. Evans et al., Evolution & Development(2024)

化石は10個以上見つかっており、体組織をそのまま残したものもあれば、この生物の跡だけを残した痕跡化石もありました。

それらをもとに復元したのが上の画像です。

研究者らはこの特徴的な「?」マークを踏まえて、学名を「クアエスティオ・シンポソノルム(Quaestio simpsonorum)」と命名しています。

はっきりとクエスチョンマークが見える / Credit: Scott D. Evans et al., Evolution & Development(2024)

ボディプランの左右非対称性は生物の進化上、とても重大な意義を持っています。

多くの生物の体は外見的にほぼ左右対称ですが、体内を見ると、ほとんどの臓器の形や配置が左右非対称になっています。

これは生物たちが特定の機能や生態に適応し、生活の効率を上げるための進化的なメリットがありました。

例えば、私たちの心臓は体の左側に位置していますが、これによって全身に血を送り出す血液循環の効率が上がっているのです。

左右非対称性は外見にも現れており、カニやエビの一部は一方の爪を大きくさせることで闘争や防衛を有利にしました。

ボディプランの左右非対称性は、内臓のスペースを効率的に活用して、器官が互いに干渉せずに機能できるようにしたり、体の一部を大型化させたり、配置を変えることで生存競争を有利に進めることができます。

このように左右非対称性は生命史においてとても高度な進化だったのです。

研究者らは約5億7500万年前にいたクアエスティオ・シンポソノルムこそ、左右非対称性を進化させた最初期の動物だったろうと考えています。

さらにチームは本種の痕跡化石から、クアエスティオ・シンポソノルムが海底を這いずって移動していた確かな証拠を発見しました。

ルンバほど速くはなかったでしょうが、これは本種が自由な移動能力を持っていたことを示します。

これほど大昔の時代の化石において、左右非対称性や移動能力をこれほど明瞭に示した古生物の化石は見つかっていません。

そのことからチームは、クアエスティオ・シンポソノルムが最初期に登場した「動物」の一種と見て間違いないと話しました。

その後、生物たちは約5億年前のカンブリア爆発をきっかけに劇的な進化を遂げ、体の大型化や複雑化、遊泳を主とする移動能力の向上を見せています。

この進化的爆発において、今日に見られる動物の「門」がすべて出揃うことになりました。

こうした豊かな動物相の開花は、クアエスティオ・シンポソノルムをスタート地点に始まったのかもしれません。

参考文献

Florida State University scientist discovers one of the earth’s earliest animals in Australian outback
https://news.fsu.edu/news/university-news/2024/10/14/florida-state-university-scientist-discovers-one-of-the-earths-earliest-animals-in-australian-outback/

This Strange, Fleshy Blob Is One of Earth’s Earliest Animals
https://www.sciencealert.com/this-strange-fleshy-blob-is-one-of-earths-earliest-animals

元論文

A new motile animal with implications for the evolution of axial polarity from the Ediacaran of South Australia
https://doi.org/10.1111/ede.12491

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

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