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「友人の幸せ報告に気持ちがざわつく……」そんな時どうする? 三上大進さん、人を羨む感情とどう向き合うか

  • 2024.10.24

明るいキャラクターが人気を集め、インスタライブでは「大ちゃん」と呼ばれて愛されるスキンケア研究家の三上大進さん(34)。初の著書『ひだりポケットの三日月』(講談社)では、左手の障害や自身のセクシャリティーについて綴りました。インスタライブでは日々寄せられる悩みにも寄り添う三上さんに、コンプレックスとどう向き合うか、SNSを見てもやもやしてしまうことなど、同世代あるあるの悩みについて聞いてみました。

「変えられないこと」の犠牲者にならないで

――インスタライブでの、軽快なトークが印象的です。フォロワーの“姫ズ”たちに向ける眼差しも温かく、見ているだけで元気になれるような場ですね。

三上大進さん(以下、三上): インスタライブは私にとって「ご近所さん同士の井戸端会議」のような場。同じマンションの別の階に住んでいるお友達と集まって、「最近どう? しんどいことない? こんな噂を聞いたんだけど」と、しゃべっているようなイメージです。コロナ禍に始めたのですが、みんなとコメントでやりとりするのが楽しくて、一方的に私が発信するのではなく、コミュニケーションツールになっています。私にとっても「一人じゃない」と感じられる場ですね。

――インスタライブでも、三上さんのもとには、さまざまなお悩みが寄せられています。特に美容と「コンプレックス」は切っても切り離せないものですよね。肌や顔のパーツ、体型など、さまざまなコンプレックスの悩みを聞くことがあるのでは?

三上: コンプレックスの悩みはとても多いですね。いつも「うんうん、すごくわかるー」と思って聞いています。他人がいくら「それ、素敵だよ」と言ってくれたとしても、自分が素敵だと思えなかったら、それはコンプレックスになってしまう。だから、自分のとらえ方を変えるほかないんですよね。

頑張ったらどうにかなるのなら、頑張ってみればいい。でも、私の左手の指が2本なのも、大掛かりな移植手術などしない限り、変えるのは難しい。同じように、どう頑張ったって変えらないものはあります。

©講談社

――三上さんは頑張っても変えられないものと、どう向き合っていますか?

三上: 変えられないことについて悩むのは、言い方が良くないかもしれないけど、時間の無駄です。「変えられないこと」の犠牲者になってしまってはダメだと思う。

コンプレックスを乗り越えようとするから、つらくなってしまう。無理に克服しようとせず、どのように向き合えばいいか、変えられることに時間やエネルギーを費やすことのほうがよほどポジティブですよね。たとえば人と会うときに低身長が気になるなら、厚底の靴を履けばいい。自分が鏡を見た時に低身長であることに落ち込むのなら、もう全身を見るのをやめて、身長以外の自分を見ようと決める。そうやって、悩まない工夫をしていくほうがいいのではないでしょうか。

コンプレックスがあっても人生は続いていくんです。私も指が2本でも、あの手この手を使ってここまで生きてこられた。瓶の蓋が硬くて開けられない日は、誰でもいいからその場にいる人に「開けて」と頼みます。そうやって誰かの力を借りてもいいはずでしょう?

恥ずかしいなら隠してもいいし、克服しなくてもいいんです。堂々とすることで得られる自由もあるし、隠すことで守ることのできる自由もある。どちらも大事だし、素晴らしいと私は思います。

すべての人の人生に「タッパー」がいる

――自分の足りなさにばかり目がいってしまい、もっと頑張らなきゃ、と一人で空回りしてしまうこともあります。

三上: その気持ちもわかりますよ。でも私の場合は、パラリンピックの取材をしたときに考え方が変わりました。

視覚障害の水泳選手は、ターンやゴールのタイミングを目で見て知ることができない。そのため、タイミングを教える「タッパー」という人たちがいます。プールサイドに立っていて、ターンのタイミングがきたら、スポンジのようなものがついた棒で、選手の頭をポンと叩く。タッパーがいなければ、選手は泳ぐこともできません。タッパーにとっても選手は大切な存在で「選手が目標に向かって頑張る、その通過点に自分がいられることが幸せ」と思っていらっしゃるそうなんです。その関係性って、とても素敵。そう思ったとき、どの人生にも、それぞれのタッパーがいるのではと思うようになりました。

一人で何でもできる人なんて、いない。一人で頑張って評価されているように見えても、必ず通過点で、誰かの力を借りているのではないでしょうか。「あの子が資料の準備を手伝ってくれたから、私がプレゼンの場に立つことができる」「呼び込みをしてくれた人がいるから、イベントをすることができる」など、日々の出来事から、人生のさまざまな節目に至るまで。そう思うと、おのずと周りの人たちへの感謝の気持ちが湧くし、自分一人で何かを完璧にやり遂げなければいけない、なんてことはないんですよね。

©講談社

「気持ちがざわつく自分」に気づくことが大切

――30代に入ると、結婚や出産などのライフイベントを迎える人も増え、SNSで友人の投稿を見るのがつらい、気持ちがざわざわしてしまう、という人もいます。三上さんはSNSを見て、気持ちがざわざわ、もやもやすることはありますか?

三上: あります。まさに、私も同じ。結婚したいし、子どもが欲しい。でもパートナーがいないし……まあそれは頑張れよって話なんですけど。私は恋愛対象が男性ですが、男性同士のカップルが子どもを持つにはハードルがありますからね。

人との違いも含めて自分のことを許して、好きになったつもりだったけれど、この年齢になって改めて、子どもを産めないし、家族を持てないのかな、って考えると、まだ自分にがっかりしてしまう一面がありました。特にここ1、2年かな。だから、その気持ちはすごくわかります。でも、一番大切なのは、そういう「ざわざわ、もやもやしてしまう自分」がいると気づいていること。自覚があれば、自分を守る準備をすることができるから。

はっきり言って、何より大事なのは自分自身です。もちろん友達の幸せな報告を見て「おめでとう!」と思うのは尊いことだけど、それがあなたを傷つけるなら、ミュートにしてしまえばいいと思う。それで友情が終わるわけではないですもんね。

自分以外の人生が眩(まぶ)しく見えることはあります。家族でキャンプに行けるんだ、素敵だね。不妊治療終わったんだ、おめでとう。でも……いいな、羨(うらや)ましいな。それでも私が生きているのは「私」の人生だから。後で振り返ったときに、良い人生だったと思えるようにすることにフォーカスするほうがいい。誰かの幸せ報告は、その人の人生において大切なこと。私は、私の人生で素晴らしいことを見つけなきゃ。

いつか自分もこういう家庭を持ちたいな、とか、子どもを持てなかったとしても、次の世代の子どもたちに向けて、私は何ができるだろうと、今は考えています。羨ましいという感情をどうポジティブに変えて、自分の財産にしていけるかが大切ですね。

■塚田智恵美のプロフィール
ライター・編集者。1988年、神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後ベネッセコーポレーションに入社し、編集者として勤務。2016年フリーランスに。雑誌やWEB、書籍で取材・執筆を手がける他に、子ども向けの教育コンテンツ企画・編集も行う。文京区在住。お酒と料理が好き。

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