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忘れられないほど美しく残酷、スウェーデンの絵本で命の大切さを知る。

  • 2024.10.24

日が暮れるのが日増しに早くなってきたスウェーデンの秋日。夏のアクティビティを終え、冬支度にかかるこの季節は天気の悪さと共に闇夜が長くなり始める。また1年の一大イベントでもあるクリスマス前に辛抱をする時期でもあるため読書にはもってこい。

人気ジャンルはやはり秋の夜長にぴったりなミステリー。刑事ものや探偵ものにスリルが加わった話がトップリストに上がる。デジタル時代の恩寵も受けてか、はたまた作業をしながらでも本を読めるのと同じ感覚からなのか、最近ではジャンルを問わず、オーディオブック(聴く本)の勢いもすごい。

またこの時期にはノーベル文学賞も発表されるので、受賞作品とその作家のほかの作品が注目される。発表に伴い、ブックフェアなどを始めとした各種の本にまつわるイベントには事欠かない時期でもある。

これらすべてを挙げているとキリがないので、今回はスウェーデンの絵本について紹介したい。

北部ウメオ市にある「Bildmuseet」(ピクチャーミュージアム)が北部のヴェステルボッテン州図書館等と協賛して1年に一回発表している「Årets Svenska Bilderbok」(Swedish picure book of the year, 今年のスウェーデンの絵本)という賞がある。

選ばれた作品はオリジナルの絵がミュージアムの一室に飾られ、作者自身の朗読を聴きながら作品を堪能するという企画も用意される。

もちろん絵本自体も何冊か置いてあるのでその場で絵本も同時に楽しめるのだ。

2024年の受賞作品は『Alla Äter Alla」(アーラ、エーテル、アーラ)』(すべてがすべてを食べているの意味)、作者は物語も絵も同一作家のAron Landahl (アーロン・ランダール)によるものだ。

「自然の中は誰も安全ではいられない。誰もが食べ物を欲している。やるかやられるか?」

という意味合いから始まるこの絵本は血を吸ってお腹がいっぱいになった蚊が逆にトンボに飲み込まれ、そのトンボが今度はヒキガエルに食べられ、そのヒキガエルは次に蛇の餌食へ......と動物たちが捕食し、捕食され、お互いを消費する世界を描いている。死と再生の象徴でもあるウロボロスの表紙をはじめとする印象的な見開きには、動植物が緻密に描き込まれている。食物連鎖という事実を踏まえ、かつビンテージのポスターやルソーを始めとする芸術家などとも絡みがあり、フィクションやファンタジーも交差する。受賞の動機にもなった「忘れられないほど美しいだけでなく残酷でもある」この絵本。機会があるようならぜひご一読あれ!

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