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アジアで存在感を増すミカの素顔──「活躍の場によって、自分の表現を変えようとは思わない」

  • 2024.10.22

ハワイで生まれ育ち、16歳のときにボーイズ・グループINTERSECTIONのメンバーとして日本でデビュー。その後、中国最大級のオーディション番組「創造営(CHUANG)2021」に出演。今や中国でも絶大な人気を誇るトリリンガル(英語・日本語・中国語)のアーティストであり、ファッション界からの注目度も高い。

そんなミカ(mikah)の経歴だけを聞くと、どんなに華やかで煌びやかな世界に囲まれている人物なのだろう、と想像する人も多いかもしれない。だが、一度彼の歌声を聴けば、その印象はいい意味で裏切られる。透明感がありながら広がりを感じさせる彼の音楽には、どこか孤独でメロウな世界観が漂う。「子どもの頃から移住が多かったこともあり、早い時期から独立しなければならなかったという経験が、僕の曲作りや自己表現に影響を与えていると思います。もちろん家族や友達が周りにいてくれますが、それでも根底にある孤独感を表現したいという気持ちが大きい。“寂しさ”が今の僕と音楽とのつながりかもしれません」

ハワイに住んでいた頃から、センチメンタルな曲調やR&Bを好んでいたという。「環境や日常に満足はしていましたが、メランコリックな曲に、逆に希望をもらっていました。好きだった曲はThe Knocksの『Classic feat. Powers』。夜に一人で寝転んで星を眺めながら、こういった想いを巡らせられるような音楽を聴いて、自立した未来を夢見ていたように思います」。スカウトの紹介を受け、ハワイで行われていたオーディション企画に参加したことをきっかけに、アーティストの道へと足を踏み入れたミカ。その道のりは決して平坦ではなかった。

「僕はシャイな性格なので、最初はあまり乗り気ではなかったのですが、母の勧めでオーディションに参加しました。その頃はまだ、作曲や歌の経験はなくて。15歳で今の事務所に入り、ダンスや歌のトレーニングを受けて、最初はいわゆるアイドル的な活動から始めました。トレーニングの中には、自分の好きな曲を歌うという課題もあり、そこから少しずつ好みのテイストが見えてくるようになりましたね。それに伴い、よりアーティスティックな表現をしてみたいという気持ちが芽生えて、自分でお金を貯めてパソコンやレコーディング機材を買って、作曲を始めました。曲作りの楽しさに目覚めて以来、“アーティスト”になりたいという思いが自ずと膨らんでいったんです」

ミカが現在、主な活動拠点としている中国では、歌詞に重きを置いたスローテンポなバラードが非常に成熟している。その音楽性は、ミカとも深く通じるものがある。「オーディション番組をきっかけに中国で活動するようになり、中国の音楽を調べていくうちにバラードに出合いました。今まで自分が好きだと思っていた悲しげでスローなテンポや、思い出や愛にまつわる歌詞が、中国では一つのジャンルとして確立されていることを知り、強く共感しました。比喩的だったり、ポエティックだったり、リスナーそれぞれが自分らしい解釈をできる曲が好きなんです」

グローバル向けに発表する英語曲で初のソロMVとなったシングル『MAYBE I’T S ME』(9月27日にリリース)では、MV制作にも携わった。この作品は、アイドルからアーティストへと向かうミカの今を反映している。「商業的ではなく、アーティストとしてのクリエイティビティを表現したMVにしたかったんです。実験的かつ抽象的な部分が、サウンドにも表れていると思います」

雑誌撮影やブランドとのコラボ、パリコレへの参加など、ファッション業界での活躍も目覚ましいミカ。だが、音楽においては、自分自身よりも、曲をメインに打ち出していきたいという思いが強いと語る。「自分の中では、ファッションと音楽を完全に切り離しています。どちらもクリエイティブな仕事ですが、自己表現の方向性は違う。ただ、恐れずに挑戦するというスタンスだけは共通しています」

ミカは今、業界も国境も自由に超えて、表現者として新たな地位を築き上げつつある。彼は、“アジア”や“欧米”といった括りを意識することはほとんどないという。「業界や地域によって多少の違いはありますが、僕はそういったことをまったく気にしていません。大切なのは、自分が何のために、そしてどんな曲作りをしたいかということ。もちろん、それぞれから影響を受けることはありますが、自分が音楽をする理由はどこにいても変わりません」

その考えには、彼自身のルーツが大きく影響している。「ハワイでは多様な文化が混在しています。僕自身も日本人の母とドイツ人の父のもとに生まれ、それぞれに異なるルーツを持つ友人たちとともに育ちました。周りの人たちが聴いている音楽もバラバラ。だからこそ、今でも新しく出会う文化も受け入れることができて、いろんなジャンルの音楽を聴くことができるのだと思います。そういう環境で育ってきたことを、とても幸運に感じています」

多様な文化や考えを内包するミカという存在は、ダイバーシティが叫ばれる現代において、異なる背景や価値観を繋ぐ架け橋となるだろう。そんな彼に、最後にどんなアーティストになりたいかを尋ねた。「好きな音楽をやるために、アーティスト性を追求しています。活躍の場によって自分の表現を変えようとは思わない。僕の音楽が好きで、共鳴してくれる人たちに、これからも喜んでもらいたいと願っています」

Photos: Akihito Igarashi Text: Airi Nakano Editor: Yaka Matsumoto, Saori Nakadozono

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