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酒に頼ってコテッと眠るのは睡眠とはいえない…8時間睡眠でも"疲労感"がとれない人が大抵している悪習慣

  • 2024.10.22

朝まで連続して眠っているのに、すっきりと疲れがとれないのはどうしてか。漢方家の櫻井大典さんは「体の休養ができても、頭の疲労がリセットされていないのではないか。これも立派な『不眠』のひとつだ」という――。

※本稿は、櫻井大典『こころゆるませ漢方養生』(扶桑社)の一部を再編集したものです。


CASE2 「平均的な睡眠時間を取っていると思うのですが、 疲れが回復している気がしません」

日頃から最低6時間は睡眠時間を取っています。
余裕があれば、22時から朝の6時まで、しっかり8時間連続して眠る日もあるのですが、目覚めは決してよくありません。体が重だるく感じ、慢性的な疲労感があります。
どうしたらすっきりと疲れを取ることができるでしょうか?

頭が「疲れた」という感覚を記憶しています

お話を聞くと、疲労と疲労“感”の違いに原因があると感じます。

疲労というのは、肉体的な疲れのことです。22時から最低6時間、ときには8時間眠れていてしかも途中で目覚めることがない、という状況からシンプルに考えると、体はしっかり休養ができていて、回復されている、と捉えてよいと思います。でも、なぜか疲れているように感じる。これは“疲労感”です。

体に疲れはさほど残っていないのに、頭が「疲れた」という感覚を覚えていて、それが朝まで残っている、ということ。つまり、頭はリセットされていないというわけです。

では、頭の疲労がなぜ起こっているのか、その疲れを取り除くためには何をすべきか、というところに視点を持っていきましょう。中医学の観点から見ると、どうもこの状況は、実際にはあまり深く眠れていないのではないか、ということが考えられます。実はこれもれっきとした「不眠」の一つ。

簡単な目安として、朝起きたときにスッキリと目覚められているなら、多少睡眠時間が短かったとしても、しっかり熟睡できて睡眠時間も取れたという認識でよいです。でも、目覚めがよくないということであれば、いくら睡眠時間が長かったとしても、眠りが浅く熟睡できていなかった、もしくは、睡眠の質が良好ではなかった、と判断します。

寝起きのすっきりしない人
※写真はイメージです
体に栄養を運び、精神を安定させる「血」が不足しています

どうして眠りが浅くなってしまうのか、その原因はいろいろとあるのですが、一つの大きな要因としては、「血けつ」の不足が考えられます。「血虚けっきょ」という状況ですね。

中医学で言う「血」は、全身に栄養を運ぶほかに、精神を安定させるという重要な役割も持っています。その「血」が不足しているわけですから、こころは不安定になるし、脳に栄養も届けられません。すると、休息を取っても、頭の栄養は不足していますから、疲労感が取れずに残ってしまう、ということになるわけです。

とくに今回の状況においては、「血虚」の中でも、「肝」という臓器の「血」が不足している、「肝血虚かんけっきょ」の可能性が高く考えられます。

中医学における五臓の「肝かん」という場所は、血を貯めておく貯蔵庫です。体内で「血」がつくり出されると、すべては「肝」に貯められます。そこから必要としている場所へ送り出されるという仕組みで、「肝」はいわば「血」の源泉のような場所。つまり「肝血虚」という状態は、「血」の貯蔵量が不足しているということ。脳がいくら「血」を欲していても、その脳に送り出してあげるだけの十分な「血」が体内にストックされていないわけです。

また、「肝」は全身の臓器がスムーズに働くように調整をする、空港における管制塔のような役割も持っています。筋肉の動きを指示してスムーズに肉体が動くように調整していたり、必要な臓器へ「気」や「血」を巡らせるように指示を出したりするほか、情緒などにも大きく関わっています。そのため、「肝血虚」に陥ると、この司令塔の役割にも支障が出て、正常な指示を出せなくなったり、「肝」の働きで安定していた情緒も不安定になったりします。

「肝」の働きを守るために目を養生する

中医学で「肝」は目につながると考えていて、目の酷使は「肝血かんけつ」を大量に消費しますから、一度テレビやスマホ、パソコンの使用時間を見直してみるのがよいでしょう。

仕事でどうしても必要という場合は、休日ぐらいは見ないようにするなどの工夫を。

また、女性の場合は、月経で毎月大量の「血」を失っていますから、ほうれん草、にんじん、黒豆、ごま、牛乳など、「血」になりやすい「補血ほけつ食材」を日頃から積極的に摂ることがおすすめです。


CASE3 「眠れないため、 どうしても睡眠を取りたい場合はついついお酒の力を借りてしまいます」

昔から寝つきが悪く、ベッドに入ってから1〜2時間はゴロゴロしています。
この眠れない時間が不快で、あるとき、お酒をいつもよりも多めに飲んだらそのままコテッと眠ることができたため、今でもついついこの方法をとることがあります。
睡眠薬に頼るよりはマシなのかなと思っていますが……。
お酒の力で眠ることは、やはりよくないのでしょうか?

飲酒にはドラッグと同じ依存性があると認識を

夜中に当然のように酔っ払いが騒いでいるなど、日本はアルコールにとても寛容な国ですが、アメリカなどの諸外国では、アルコール販売や飲酒場所は厳しく規制されています。つまりそれほどアルコールを危険視しているということ。日本ではドラッグ関連のニュースが流れると大騒ぎしますが、それ以上に交通事故でも暴力事件でも、アルコールに起因するものの方が、実は頻発していますよね。そのぐらい精神に悪影響を与えています。

僕としては、アルコールの身体的、精神的依存性はドラッグと同じぐらいある、と認識してほしいと思っています。

酒を飲んで寝る
※写真はイメージです

最初に脳の構造からお話ししましょう。脳という臓器は、中心に向かっていくほど原始的で、外側に向かっていくほど人間的な働きを司る構造になっています。いわゆる中心は欲望や衝動などで、外側がそれらを抑制する働きを持っています。眠るときは外側から徐々に眠っていきます。飲酒して眠るというのは、外側の抑制する働きを、酒の作用で抑制することになります。

抑制の抑制、それはつまり興奮です。お酒を飲むと気分が高揚するのは、そういう仕組みです。さらに飲み進めて、脳の中心に近い呼吸中枢ぐらいにまで酒の作用が到達すると、呼吸までも抑制することに。つまり、死に至る可能性があるわけです。飲酒で命を落としている方、決して少なくはないですよね。だから、酒で眠る、ということは決してよいことではない。それは睡眠ではなく、“昏睡”なのです。

さらに、飲酒は快楽を伴うので、薬よりもやめづらいから厄介です。いろいろな不調が出ても、「眠れたし、まぁいっか」と、依存性が高い。そのあたりも、僕が冒頭でドラッグと同じぐらいという認識を、と話した所以です。

お酒を控えるための万能漢方薬はありません

僕の漢方相談でも、飲酒に関するお悩みは多いです。みなさん「お酒はやめられない」とおっしゃいます。けれど、お酒を控える、量を減らす、という本人の行動以外で解決するような万能な漢方薬は、この世にはありません。「不調をなんとかしたい」とおいでになっているわけですが、その不調もその悩みも、作り出したのはその人自身です。

これまで送ってきた生活であったり、摂取してきた飲食物だったりが、今の不調を作り出している。それを変えたいと思うのであれば、その習慣を見直すしかありません。……と、実は、飲酒に関するお悩みには、厳しめにアドバイスをしています。そのうえで、飲酒量だけではなく、食事面も含んだいろいろな提案をして、できることから始めることをおすすめします。

まず、アルコール以前に、冷たいものの飲みすぎがよくないので、例えば氷たっぷりのハイボールを毎晩飲んでいるならば、まず氷は抜きましょう、と。それに慣れてきたら、量を少しずつ減らす、おつまみに冷や奴や刺身はやめて、温かい煮物などに替える、というように順を追って、です。

白い背景にウイスキーグラス
※写真はイメージです

以前、めまいに悩む患者さんがいましたが、話を伺うと毎日の飲酒量がものすごい。体内の水分指標の目安である舌苔もべっとりと分厚くて、明らかに摂取している水分量が多いのですね。水を吐き出す作用のある漢方薬も併用しながら、とにかく飲酒量を減らすように努力を促し、2年かかりましたが、ようやくめまいはなくなりました。

櫻井大典『こころゆるませ漢方養生』(扶桑社)
櫻井大典『こころゆるませ漢方養生』(扶桑社)

「え〜ビールを毎日飲みたい!」って? いいんですよ、飲んでも。僕も嗜む程度に飲む日はあります。でも、空きっ腹にキンキンに冷えたアルコールが臓器にどれだけ大きな負担をかけているかも、認識しておいてほしいのです。

実は僕も昔から、眠る前につい考え事をするなどして寝つきが悪く、寝るためにこれまで本当に多くのことを試してきました。その中で、穏やかな音楽や、もう何度も聞いて内容もオチも知っているバラエティ番組の音声を流して眠るのが、自分がリラックスできてスムーズに眠りに入れると気づきました。それ以来、1時間ほどタイマーをかけて、音声を聞きながら眠るのが習慣です。何が合うかは人それぞれですから、お酒以外の方法も模索してみてください。

櫻井 大典(さくらい・だいすけ)
漢方家
国際中医専門員、日本中医薬研究会会員。漢方薬局の三代目として生まれ育つ。カリフォルニア州立大学で心理学や代替医療を学び、帰国後はイスクラ中医薬研修塾で中医学を学ぶ。中国の首都医科大学附属北京中医医院や雲南省中医医院での研修を修了し、国際中医専門員A級資格を取得。 これまで年間数千件の健康相談を受け、のべ4万件以上の悩みに応えてきた。相談者の話をじっくり聞き、不調の根本的な理由を探し、相談者の体質やライフスタイルに合わせたアドバイスをしている。Xで発信されるやさしいメッセージと、簡単で実践しやすい養生法も人気を集め、フォロワー数は18万人を超える。

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