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追悼・大山のぶ代さん ドラえもんを通じて日本中に届けた愛、友情、絆

  • 2024.10.22

Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね【第1211回】

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。

「偉大な声優が、またひとり旅立ってしまった……」

声優・俳優として活躍した大山のぶ代さんが逝去されたニュースを耳にした時、こんな風に思った方も多いのではないでしょうか。

1956年に俳優デビュー。1979年には、アニメ「ドラえもん」の主人公・ドラえもんの声を担当。以降、2005年に勇退するまで26年にわたりドラえもんを演じ続け、自他ともに認める代表作となりました。

訃報を受けてインターネット上に書き込まれたファンの声を見ると、今でも「ドラえもん=大山のぶ代」と脳内に焼き付けられている人が、いかに多いことか。もちろん、私もそのひとりです。

そこで今回は、大山のぶ代さんをクローズアップ。大山さんの代名詞とも言えるドラえもんの魅力と、『映画ドラえもん』シリーズの中から八雲ふみねが選ぶ名作3作品をご紹介します。

大山のぶ代さん ※写真提供:アクターズ・セブン
大山のぶ代さん ※写真提供:アクターズ・セブン

愛らしくてエモい「ドラ声」は永遠!

「こんにちは。ぼく、ドラえもんです。」

茶目っ気たっぷりに自己紹介する、未来からやって来たネコ型ロボット、ドラえもん。アニメシリーズが世代を超えて愛されるようになった大きな要因は、やはり大山のぶ代さんの声の影響力でしょう。

独特のハスキーボイスと愛嬌たっぷりのキャラクタービジュアルが相まって、今では日本のみならず世界中で愛される存在となりました。

大山のぶ代さん演じるドラえもん、通称“のぶドラ”の中で、私が好きな言葉は「のび太く〜ん」です。怒ってる時もご機嫌な時も、この一言だけで、のび太への愛情が垣間見えるのが魅力的でした。

それから、「ふふふ」という笑い声。文字で表現するならば、「ふぅ〜ふぅ〜ふぅ〜」といった感じでしょうか。

元々球状のま〜るいスタイルなのに、さらに背中を丸くさせて笑う姿があまりにも可愛らしく、キュンキュンしたものです。

冒頭の「こんにちは。ぼく、ドラえもんです」というセリフも笑い声も、大山さんのアドリブから誕生したもの。そのイマジネーションをかき立てる豊かな声の演技が、「ドラえもん」を国民的アニメにまで成長させたと言っても過言ではないでしょう。

そう言えば、「どら声」という言葉があります。

「太くて濁った声」「だみ声」を意味し、どちらかというとあまり良い印象ではない言葉ですが、大山さんの声は「ドラえもん」の「ドラ声」。

ひと声聞けば、すぐにドラえもんと大山さんの姿が目に浮かんできて、なんとも言えない温かい気持ちに包まれてしまう。ある意味、究極の癒しボイスなのかもしれません。

なんでも若い世代の中には、「どら声」という言葉の意味を、「大山のぶ代さんが演じるドラえもんの声=ドラ声」だと勘違いしている人がいるとか、いないとか。

言葉の意味を変えてしまうほど世間に浸透した、大山のぶ代さんの「ドラ声」。私たちの脳裏に刻まれた子どもの頃の思い出と共に、いつまでも鮮やかに生き続けることでしょう。

今こそ観たい!大山のぶ代版『映画ドラえもん』シリーズ

ドラえもん、のび太とその仲間たちの冒険をダイナミックに描いた劇場長編アニメーション『映画ドラえもん』シリーズ。1980年に第1作が公開されてから、2004年公開の第25作まで、大山のぶ代さんがドラえもんの声を担当。春休み映画の大本命として、ファミリー層を中心に人気を集めました。

通常のアニメとは違った魅力に溢れていて、世代を問わず楽しめる『映画ドラえもん』シリーズ。90分前後という長時間でも子どもたちを飽きさせないストーリー。大人が思わず涙してしまうエピソードの数々。そして、大きなスクリーンでこそ堪能したいスペクタクルな映像美。

ファンの数だけ“推し作”があり、その魅力について語らずにはいられない!

そんな名作揃いの『映画ドラえもん』シリーズの中から、八雲ふみねが選ぶ3作品は……。

※『映画ドラえもん のび太の恐竜』(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日 発売元:小学館
※『映画ドラえもん のび太の恐竜』(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日 発売元:小学館

■『映画ドラえもん のび太の恐竜』

1980年に公開された、『映画ドラえもん』シリーズの記念すべき第1作。私も子どもの頃から何度も観ている、『映画ドラえもん』シリーズの中でもイチオシの作品です。

本作は、のび太と恐竜の子・ピー助による友情物語。ドラえもんのフォルムを現在の作画と比べてみると、シンプルかつ可愛らしい。

大山のぶ代さん自らが歌う主題歌も、心に響くこと間違いなしですよ。

※『映画ドラえもん のび太の宇宙開拓史』(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 1981 発売元:小学館
※『映画ドラえもん のび太の宇宙開拓史』(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 1981 発売元:小学館

■『映画ドラえもん のび太の宇宙開拓史』

劇場アニメーション映画シリーズ第2作にあたる『映画ドラえもん のび太の宇宙開拓史』。ある日、のび太の部屋が宇宙船のドアと繋がってしまったことから始まるSFアドベンチャーです。

のび太が勇者的な立場となって活躍することが多いため、ドラえもんは一歩下がったポジションから、のび太を見守ることが度々ある映画版。しかし、決して活躍どころが少ないわけではなく、ドラえもんの持つ優しさや包容力がよりダイレクトに伝わってきます。

そんな感動が味わえるのも、大山のぶ代さんの緩急自在な演技があってこそと言えるでしょう。

※『映画ドラえもん のび太のワンニャン時空伝』(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2004 発売元:小学館
※『映画ドラえもん のび太のワンニャン時空伝』(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2004 発売元:小学館

■『映画ドラえもん のび太のワンニャン時空伝』

ドラえもん映画シリーズ第25作にして、大山のぶ代さんをはじめとしたテレビ朝日系第1期声優メンバーが参加する最後の長編アニメ映画となった『映画ドラえもん のび太のワンニャン時空伝』。

3億年前の地球に存在したイヌとネコの国「ワンニャン国」を舞台に、ドラえもんやのび太たちの活躍を描いた本作。

思えば、『映画ドラえもん』シリーズは、種族を超えた絆や友情、そして共生がテーマとなっている作品が多く、観終わった後で考えさせられることも度々あります。そういったことも、ドラえもん映画が愛され続ける所以のひとつではないでしょうか。

20年前の作品とは思えない、まだまだ色褪せない名作です。

末筆ではございますが、謹んで大山のぶ代さんのご冥福をお祈り申し上げます。

※『映画ドラえもん のび太の恐竜』(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日 発売元:小学館
※『映画ドラえもん のび太の恐竜』(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日 発売元:小学館

<作品情報>
映画ドラえもん のび太の恐竜(1980年公開)
DVDリリース

声の出演:大山のぶ代、小原乃梨子、 肝付兼太、たてかべ和也、野村道子、加藤正之、千々松幸子、横沢啓子、加川三起、青木和代、井上和彦、宮村義人、島宇志夫、加藤精三

原作・脚本: 藤子・F・不二雄
監督: 福冨博
脚本: 松岡清治
音楽:菊池俊輔
(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日
発売元:小学館

※『映画ドラえもん のび太の宇宙開拓史』(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 1981 発売元:小学館
※『映画ドラえもん のび太の宇宙開拓史』(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 1981 発売元:小学館

<作品情報>
映画ドラえもん のび太の宇宙開拓史(1981年公開)
DVDリリース

声の出演:大山のぶ代、小原乃梨子、 肝付兼太、たてかべ和也、野村道子、加藤正之、千々松幸子、菅谷政子、杉山佳寿子、小山茉美、塚田恵美子、内海賢二、柴田秀勝、今西正男、北村弘一、二見忠男、山田栄子、桜本昌弘

原作・脚本: 藤子・F・不二雄
監督:西牧秀夫
音楽:菊池俊輔
(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 1981
発売元:小学館

※『映画ドラえもん のび太のワンニャン時空伝』(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2004 発売元:小学館
※『映画ドラえもん のび太のワンニャン時空伝』(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2004 発売元:小学館

<作品情報>
映画ドラえもん のび太のワンニャン時空伝(2004年公開)
DVDリリース

声の出演:大山のぶ代、小原乃梨子、野村道子、 たてかべ和也、肝付兼太、高村章子、千々松幸子、青木和代、林原めぐみ、関智一、江川央生、飯塚昭三、山口奈々、かないみか、古川登志夫、青森伸、大滝進矢、緒方賢一、島田敏、菅原淳一、大平透、阪脩、島谷ひとみ、渡辺宜嗣、泉谷しげる

原作: 藤子・F・不二雄
監督: 芝山努
脚本:岸間信明
音楽:堀井勝美
主題歌:島谷ひとみ「YUME 日和」
(C)藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 2004
発売元:小学館

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