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ファッション愛を地球愛へ、服との新しい付き合い方とは?

  • 2024.10.21

衣類は私たちの暮らしに欠かせないものであると同時に、ファッションは私たちに着る喜びをもたらし、ときには自信をも与えてくれる。そして心地よく身に纏いたいものであるからこそ、そのファッション愛を地球に向けることも大切なのではないだろうか。

2023年に認定された9月24日「みんなでつくろう再エネの日」に合わせ、今年2024年9月22日に東京・渋谷にてイベントが開催。気候変動解決のために再生可能エネルギーの普及やサステナビリティに尽力するオピニオンリーダーたちが集結し、多角的に捉えた12のトークセッションが行われた。

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そんななか、「気候変動とファッション産業 〜現在地を知り自分たちの選択肢を知る〜」と題したトークには、サステナブルライフクリエイターでモデルの前本美結をモデレーターに、unistepsの古島真子、エシカル協会の末吉里花、SHIINA organicの露木しいなが登壇。

従来の直線的なサプライチェーンから脱却し、循環型経済への移行が求められるなか、一活動家として、そして一消費者として、課題とどう向き合い、エシカルでサステナブルなファッションを手に入れていけるのかが話し合われた。

真に気持ちのいい服って?ものづくりのストーリーに目を向けて

地球環境や働く人に対しての負担が多いファッション産業の現状を変えていくべく、さまざまな取り組みが行われている潮流のなかで、2010年代から日本でも「エシカルファッション」という言葉への認知度が広がり始めた。

では、そもそも、ファッション産業における「エシカル」という概念とは?

これは、ファッションの製造・消費・廃棄において倫理的、社会的、環境的に責任ある行動をとることを指す。環境負荷を減らし、労働者の権利を守り、動物福祉に配慮し、透明性のあるサプライチェーンを構築することなどが含まれる。

だが、まだ取り組みは道半ば。エレン・マッカーサー財団の最新レポートによると、ファッション産業は依然として大きな環境負荷をかけており、特に廃棄物と温室効果ガスの排出に関する問題は深刻。毎秒、約3~4トントラック1台分の繊維廃棄物が埋め立てまたは焼却されており、年間約5,000億ドル(約72兆円)相当の価値が、ほとんど使われないまま廃棄されているという。

さらに、ファッション業界による温室効果ガスの排出量は、航空業界や海運業界を合わせた量よりも多いことや、劣悪な労働環境や人的資源の不当な搾取など含めて、甚大な環境被害を受けるグローバルサウス(グローバル化による負の影響を被るアジア、アフリカ、中南米などの新興・発展途上国や地域)の諸問題に、私たちは無自覚にも加担している可能性が高い。そして、その事実を日本で暮らすわたしたちが目にすることができない“不透明さ”も、この問題をより複雑にする。

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「今、自分が着ている服を、誰が、どこで、どのようにして作ったかをご存知でしょうか?」オーディエンスにそう問いかける前本。

「環境、人権、健康、動物福祉など、さまざまな問題を抱えているファッション産業ですが、その問題の大きな原因となっているのが、サプライチェーンの長さと不透明さです」

「サプライチェーンとは、原材料の調達、製造、在庫管理、配送、販売、消費と、大きく6つの流れに分けられますが、どこに誰が関わっているかを辿ることは非常に困難であり、インドや中国のコットンからできた布が、バングラデシュで服になり、日本で消費されるという流れが当たり前になっています」

「それゆえ、2013年4月にバングラディッシュで起きた『ラナ・プラザビル崩壊事件』(ファストファッションブランドの服が作られていたビル内の縫製工場が崩れ、1,127人が亡くなり、2,500人以上の負傷者がでた)のような悲劇にも繋がりかねません」

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こうしたサプライチェーンの不透明さを問題提起し、専門機関と協働しながら、消費者にとってもより身近に感じてもらうべく取り組むのがunistepの古島だ。

「大学生のときにエシカルファッションに出会い、オーガニックコットンを栽培する農園など、たくさんの生産現場を訪問しました。そして、卒業後に服づくりとビジネスを学ぶべく繊維専門商社に入り、そこで服づくりのあらゆる工程をみていく中で、いかに服一枚が出来上がることが尊いことであり、適正価格とはなんなのか、透明性を実現するにどうすればいいのかを考えるようになりました。そこで、unistepsでは服の生産現場に消費者が触れる機会を作りたいと思い、国内外でスタディーツアーをやっています」

消費者行動で変えられる、サプライチェーンの透明性

地球にも優しい消費行動をサポートするツールとして今日本で注目が集まっているのが、サステナビリティやエシカルの視点からファッションブランドを評価するプラットフォームファッション「Shift C(シフトシー)」だ。

オーガニックやリサイクル素材の選定や、製造過程の透明性、労働環境や自然環境への影響などを評価基準とし、ブランドの “エシカル度”を5段階で確認できる。世界最大級のエシカル評価機関である「Good On You(グッドオンユー)」のデータベースを連携させ、現時点で約5,800のファッションブランドのエシカル度が掲載されている。

日本では、株式会社UPDATERがGood On Youとパートナーシップを締結し、Shift Cを運営。unistepsは日本ローカライズに関するアドバイザーを担っている。不透明だったところを可視化していくツールの必要性について、古島はこう説く。

「私個人としては、不必要なものは買わないことを基本方針としつつ、本当にほしいと思ったものを適切に買うようにしています。古着も買うけど、たまには新しいものも買いますし、頑張って取り組んでいるブランドを応援する気持ちで買うこともあります」

「しかし、2年前くらいにたまたま商業施設ですごく好みの服を見つけたのですが、ネットで調べても、どの程度エシカルなブランドなのかが判断できず、悩んだ結果、買えない経験をしました。納得感を得られず買えないことは、非常にもったいないこと。新しくローンチしたShift Cというサービスでは、人・地球・動物に対するブランドの取り組み具合を評価しており、5段階の指標で確認することができます。納得感を持って服を選ぶことの手助けになるのでは」

サーキュラーなエシカルファッションは身近に

イノベーティブなブランドを応援していくのも選択肢の一つである一方で、サーキュラーなファションを実現するヒントは、実はもっと身近なところにも潜んでいる。

地域の服の交換会に参加したり、友人や家族とワードローブをシェアしたりすることも、エシカルファッションを体現する立派なアクションの一つだ。循環するものづくりを意識しながら、オーガニックコスメをつくる露木にとって、サーキュラーファッションは幼少期から当たり前にあったことのようだ。

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「今でこそ、環境活動家という肩書きをもらって活動していますけど、昔から2歳年下の妹が私より身長が高かっため、基本的に服はいつも妹の“お上がり”をもらってきました。そうした経験もあり、今も誰かからもらった服を着ることがほとんど。服が足りないと思ったときは、『いらない服があったらダンボールで送って』と友人に連絡をすることもあります」と露木は話し、会場を笑わせた。

もう着ないけど、捨てたくもない――そんな愛着のある服を顔の見える相手が大切に着てくれるのであれば、誰にとってもウィンウィンなのではないだろうか。

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2015年にエシカル協会を立ち上げ、持続可能な未来を見据えた責任ある消費行動を日本全国に普及啓発してきた末吉は、活動の真価をこう話す。

「エシカルという正しさを押し付けるのではなく、正しいと判断されるものがなんなのかをみんなで考えながら実践し、トライ&エラーのプロセスこそが、必要な行動変容や社会変革を起こしていく上で大事だと実感しています」

「時代が変わり、昔、良いとされてきたことが悪くなったりなど、価値観が多様化している今だからこそ、エシカルを伝える意味があります」

「この10年、企業は『環境に配慮したものづくりをしても、消費者は環境に関心がないから売れない』と言い、一方で消費者は『選択肢がないから買えない』という鶏と卵の議論がずっと続いています。そこで、消費行動の深掘りをし、『お金を払って購入する』という従来の消費行動を見直し、消費の定義を『買って、利用して、手放す』ところまでを包括的に消費として捉える必要性を感じています。すると、企業の打ち出し方も、消費者のマインドも変わってくるのではないでしょうか」

前本美結:高校3年間をインドネシア・ジャカルタで過ごしたことをきっかけに環境問題や貧困問題に触れ、社会問題に興味を持つ。現在は、エシカル・サスティナブルを軸にしたライフスタイルと、社会問題にまつわるモノ・コトを発信しながら、モデル・講演・PR・イベントプロデュースなどを行う。また、六本木にてZ世代の社会問題解決に取り組む友人達とコミュニティカフェ “um”(アム) を運営。
古島真子:モリリン、デロイト・トーマツ・コンサルティング を経て2022年から一般社団法人unistepsでサステナブル・ファッションを軸に活動中。2024年2月、株式会社ColorfulBosaiCreation(カラフル防災クリエイション)を設立。2011年東日本大震災後は定期的に岩手県・陸前高田を訪問。
末吉里花:一般社団法人エシカル協会代表理事。2015年にエシカル協会を設立。講座や講演、政策提言、教科書執筆などを通じて、エシカルの考え方やエシカル消費の普及啓発に取り組んでいる。中央環境審議会循環型社会部会委員、消費者教育推進会議委員など、政府政策検討委員や企業・自治体などのアドバイザーを務める。
露木しいな:環境活動家。高校3年間を「世界一エコな学校」と言われるインドネシアの「Green School Bali」で過ごし、2019年6月に卒業。2018年にポーランドで開催されたCOP24(気候変動枠組条約締約国会議)、2019年にスペインで開催されたCOP25に参加。現在は、肌が弱かった妹のために口紅を開発、SHIINA organicを立ち上げ、気候変動についての講演会などを行う。
TEXT 大庭美菜:フリーランスライター・エディター。NHKの報道記者としてキャリアをスタート。2020年に『VOGUE JAPAN』のエディターに。気候変動やジェンダー平等、ウェルビーイングなどさまざまな社会課題について議論・発信するプロジェクト「VOGUE CHANGE」のローンチメンバー。2023年より地域主導型の環境保全団体Jane Goodall InstituteのExective Directorに就任。日本支部の再構築とユースのグローバルアクションプログラムRoots & Shootsを日本各地に広める取り組みをしている。取材協力/一般社団法人Media is Hope
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