1. トップ
  2. 恋愛
  3. 43歳シングルファーザーの大きな葛藤「恋愛したい」「だけど僕は男として生きてはいけない」

43歳シングルファーザーの大きな葛藤「恋愛したい」「だけど僕は男として生きてはいけない」

  • 2024.10.21
学生時代から付き合っていた妻が結婚後7年目で病気で亡くなった。その後、付き合った女性もいたが、娘に拒否されて再婚はあきらめた。娘が最も大切ではあるのだが……40代のシングルファーザーは悩んでいる。
学生時代から付き合っていた妻が結婚後7年目で病気で亡くなった。その後、付き合った女性もいたが、娘に拒否されて再婚はあきらめた。娘が最も大切ではあるのだが……40代のシングルファーザーは悩んでいる。

シングルマザーの苦労ぶりは話題になりやすいが、シングルファーザーにもさまざまな悩みや苦労がある。再婚を考えるも、子どものために踏み切れない人もいるようだ。

妻に突然、先立たれた43歳男性の葛藤

学生時代からの付き合いで気心が知れた妻を、結婚7年で失ったケンジさん(43歳)。妻は誰よりも彼を理解してくれていたという。

「20歳から付き合って、大学内でもいつも一緒にいました。彼女といると自分がとても前向きになれる。彼女も同じように思っていてくれて、二人でそれぞれ自分の夢に向かっていこう、そして人生をともに歩もうと決めていました」

卒業後、それぞれの道を歩き始めたが、関係は問題なく続いていた。二人とも他の異性に気持ちが移ることはなかったという。

「他の女性に誘われてデートしたことはあるんです。でも妻といる時ほど楽しくなかった。妻も他の男性と食事くらいはしたことがあったけど、あなた以外は考えられないと言ってくれた」

30歳になる前にはと言われ、彼女の29歳の誕生日に結婚した。その時すでに妻は身ごもっていた。結婚して半年ほどで娘が産まれた。

「妻は1年ほど育休をとって仕事に復帰しました。僕もなるべく早く帰って家事や育児をしました。とはいえ、手伝う程度でしかなかったかもしれないけど。ただ、夜はなるべく妻を寝かせるように気を遣った。二人で小さな命を育てていこうと頑張りました」

妻が突然、倒れて……

夫婦とも実家が地方だったため頼れる親戚もなかったが、同僚や先輩たちが気を配ってくれたと、彼は当時を思い出したのかしみじみと語った。

「それなのに結婚7年、娘が小学校に入学してすぐ、妻が突然、倒れたんです。出勤途中の駅のホームで。くも膜下出血でした。数日後、意識が戻らないまま旅立ちました。僕も娘も何がなんだかわからなかった。本人が一番悔しかったんじゃないでしょうか」

妻を失ってから、ケンジさんは何のために生きているのかわからなくなった。もちろん娘のために家事や調理はこなしたが、深夜になるとため息をつき、酒をあおって眠る日々だった。

「1年くらいたったころでしょうか、娘が『お父さん、参観日に来てくれる?』と涙目で言うんです。そういえば学校行事にはほとんど参加していなかった。仕事と家事で必死だったし、それ以上に自分だけの悲しみに浸って、娘のことを考えてやれなかった」

ようやく目が覚めた彼は、娘を抱きしめて二人で泣き、そのあと二人で笑った。ケンジさんはそうやって少しずつ立ち直っていった。

妻と死別して7年、娘は中学2年生に

妻が亡くなって7年。娘は中学2年生だ。今ではたまに夕飯を作ってくれることもあるが、娘には「普通の」子ども時代を送らせてやりたいから、自分の生活を優先しなさいと伝えている。

「娘は大好きなバレーボールを頑張っているみたいです。僕は今でも妻が恋しい。正直言うと、女性の優しさに飢えているところもあります。いくら妻が恋しくても、もう彼女と触れ合うことはできない……」

2年ほど前、友人に誘われた食事会で、ある女性と出会った。彼女も離婚経験者だが子どもはいない。ぽつりぽつりと話すうち、少し心が柔らかくなった。その後、何度か彼女を食事に誘った。

「互いに心許す関係になり、肉体関係ももちました。焦らないけど、結婚を視野に入れて考えてほしいと言ったんです。すると彼女は、結婚するなら娘さんが成人してからのほうがいいんじゃないかと言い出して」

それとなく娘の気持ちを探った。娘に「好きな人はいないのか」と聞くと、すぐに察したのか「お父さんには好きな人ができたの?」と問い返された。

「いや……ともごもご言っていると、『私のお母さんは一人だけだから』と娘がプイと部屋を出て行った。難しい年頃ですしね、彼女が言うように、今は無理だろうと思うしかなかった。それを彼女に伝えると『やっぱり』って。

『でも、ごめんね。私は再婚したいの』とフラれてしまいました。その後、彼女は同じようにバツイチだけど子どものいない人と再婚したそうです」

恋愛がしたい、だけど男として生きてはいけない

恋愛がしたい。いずれ結婚につながるような、心と心が行き交うようなしみじみと深い交流をもちたい。彼は心からそれを望んでいるのだが、そうするにはやはり娘の存在が大き過ぎた。娘の気持ちを無視してまで恋に突っ走ることはできない。亡き妻のためにも。

「きっとあと10年くらいたてば娘も分かってくれるんでしょうけど、僕はそれまで男として生きてはいけないんでしょうかね。娘のためにはそれが一番いいと思うけど、僕にも心が癒やされる存在が必要だし、大人の女性と大人の時間を過ごしたいと思うこともあるんです。

こういう率直なシングルファーザーの声って、なかなか聞くことができないから、みんなどうしているんだろうと思うことはありますね」

娘が最優先だと思いながらも、一人の人間として、男としての正直な欲望も隠せないケンジさん。大きな葛藤と迷いを抱えていることがひしひしと伝わってきた。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。

文:亀山 早苗(フリーライター)

元記事で読む
の記事をもっとみる