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ハナレグミさん「ひらめきに迷わず手を伸ばしたい」/アルバム『GOOD DAY』インタビュー

  • 2024.10.29

魅力的な詩やメロディーを、自分の感覚でどう表現できるのかに挑みたい

━━前作のリリースから3年。永積さんにとってはどんな時間でしたか?
 
新型コロナの状況が刻一刻と変わっていくなかで、試行錯誤しながら音楽活動をしていたと思います。でも、ネガティブなことばかりでもなくて、そこから始まったこととか、面白い経験も多かったなと思います。
 
 ━━この1、2年でライブ活動なども元通りになってきたのかなと思いますが、自粛期間を経験したことによって、向き合い方に変化がありました?
 
そうですね、改めて、音楽ができることのありがたみっていうか。自分がこうやりたいと思えることをね、制限なくやれることのありがたさっていうのは、すごく痛感しましたね。
 
 ━━そうすると、今回のアルバム『GOOD DAY』は、前作とは異なるモチベーションで制作されたのですか?
 
コロナ禍の最中に出会った人に、参加していただいたという意味では、確かにあるのかもしれませんね。いろんな人と音楽を作りたいなっていう欲求は元々あったのですが、改めて自分の頭の中に浮かんでることを形にしたいっていうだけじゃなく、いろんな発想の人とディスカッションというかセッションしながら、想像もしなかったようなところに楽曲が進化し、深まっていく時間がやっぱり好きで。それを今回は思いっきりやれたかなっていう感じはしますね。
 
 ━━自分の居心地の良い場所からあえて離れてみたい、という感覚なのですかね?
 
ここ数年の経験で、今こうやって音楽できてることって、本当に幸せなことなんだなって強く思ったので。自分のひらめきとか、衝動的なものに、迷わず手を伸ばしていっていいなって、思うようになれましたね。

━━今回のアルバムには、iriさん、高桑圭(Curly Giraffe)さん、マヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)さんなど、個性豊かなミュージシャンの方々が参加されていますね。
 
アルバムに向けてこういう人たちとやってみようっていうようなことじゃなく、 本当、過ごしてくなかで出会って、魅力的だなって感じた方に、曲を作ってもらえないかという話をしている過程で、アルバムが完成したという感じですね。
 
 ━━全曲のソングライティングに関わることにこだわっていないということなのでしょうか?
 
そうですね。ソロのミュージシャンの強みっていうか、豊かな部分って、どんな人とも演奏ができるし、どんな発想も形にできる自由さがあるなと思っていて。自分で作詞作曲することだけにこだわるっていうよりも、 歌うことの比重が結構大きいです。魅力的な詩やメロディーを、自分の感覚でどう表現できるのかに挑んでみたいっていうのが、やっぱりあって。それらをつなげる役割として、自分の作った楽曲を収録して、アルバム全体を楽しんでいただけたらという気持ちが強いですね。

料理のレパートリーはおもに3つです(笑)

━━永積さん作詞・作曲の「チキンカチャトラ」は、料理を題材にした楽曲なのですか?
 
15,6年前くらいに閉店したのですが「カチャトラ」というイタリアンレストランが恵比寿にあって、毎晩ミュージシャンが集まり急遽セッションが始まったりだとか、そこに行けば誰かと語らえるような自由な雰囲気の店だったのです。僕はそこで本当にたくさんの刺激をもらいました。だから、いつかお店に向けて、1曲作りたいなっていうか。自分が通っていた頃の景色を描けたらいいなと思って完成させた楽曲です。曲の途中に、お店の音が聞こえるんですけど、それも実際のレストランの音を使用していて、思い出に花を添えられたのかなって。
 
 ━━ちなみに、永積さんはお料理が得意な印象があるのですが。
 
嫌いではないんですが、そんなにレパートリーはないですね。基本的に、チャーハン、ゴーヤチャンプルに生姜焼き(笑)。それぐらいですかね。
 
 ━━でも、その調理法に強いこだわりをお持ちのような(笑)。
 
そんなことないです。適当です。 この3つさえあれば飽きずに生きていけるからですね(笑)。料理ってこう、無心になれる瞬間が最高じゃないですか。普段、レコーディングやツアー、インタビューなど、お仕事でいろんな方とお会いする機会が増えていくと、ひとりの時間が重要になってきて。そういう時に、自分のチューニングを整えるうえで、料理って最適だなって思うのです。ついつい楽だから外食することも多いのですが、 それだと食べた記憶があんまり残らないんですよね。また、チューニングが切り替わらないというか。食材と向き合わないといけない時間を作ることによって、パフォーマンス力がさらに上がるような気がします。
 
 ━━ぜひ、そのお料理のレパートリーをSNSなどにアップしてください! また、本編ラストに収録された8分におよぶ楽曲「Wide Eyed World」は、何気ない日常を描いているようでありながらも、そこに<自分だけがいない>不思議な感覚を与える仕上がりですね。
 
この楽曲の<僕のいない世界の君が見てみたい>っていう思いは、 子どもの頃からあるかもしれませんね。でも、それは悲しい意味ではなくて。子どもの頃って、誰々ちゃんが自分がいないときにどういう表情をしているのかな?とか考えるじゃないですか。そういう感じなんですよね。つまり、好きな人とかの全部知りたくなる感覚をつなぎあわせ完成させたものなのですけど。その作業を進めていくうちに、わからないを信じる感覚って、自分のなかで大事にしていることかもしれないなって思うようになりました。たとえば、ライブでも決まった進行で、決まったエピソードを伝えるだけでは、自分のなかで感動がないっていうか。だから、いつも何かが入り込む隙間を用意するようにしています。時には、ミスをしてしまうこともありますが、思いもよらなかった奇跡が起こることもあるし、だからハプニングを期待している自分がいる。それが<わからないを信じてる>っていう歌詞にもつながったのかなって。
 
 ━━まもなくスタートするツアーにおいても、さまざまな奇跡が起こりそうですね。
 
今回のアルバムでも、新しい挑戦をしたアレンジとかサウンドが多いので、それをライブで再構築して、CDなどの音源とは異なるニュアンスを届けられたらなと。楽曲を発表したら、それで作品が完成するわけではなくて、ライブなどでどんどん成長していくことが本当なのだと思う。だから、このアルバムのリリースをきっかけに、何か新しいことが始まるんだなっていうワクワク感がいっぱいですね。

━━楽しみにしております。最後に、永積さんの最近の暮らしぶりをお伺いしたいのですが。カメラにハマっていらっしゃるとか?
 
以前にも刊行したことがあったのですが、また自分が撮影した写真集を作りたいなと思っていて。写真は、音楽で伝えきれない部分を補完してくれている感覚がありますし、また撮影することで受け取れるものも多い気がしていて。最近は、自分で現像することにも興味を持っています。
 
 ━━スマートフォンに画像を保存することがスタンダードになっていますが、手に残るものとして保存することも大切ですよね。
 
同じものを見ても手に触れることで感覚が変わる。それが面白いんですよね。
 
 ━━音楽もそうですよね。気軽に耳にできるデジタルの良さもありますが、実際にCDやレコード、ブックレットなどを手にして伝わる特別な何かがあるような気がします。
 
それってすごく重要なことだと思います。手触りで、音楽を感じていただくことが自然というか。より作品の世界と密接につながることができると思います。
 
 ━━今回のアルバム『GOOD DAY』は、まさに手に取ったからこそ伝わる世界があると思います。
 
そういう作品であってもらいたいですね。

アルバム『GOOD DAY』

ハナレグミ
¥2,970/ビクターエンタテインメント
now on sale

通算9作目となるオリジナル・アルバム。ドラマ主題歌として書き下ろされた「MY夢中」など、先行リリースされた話題曲を含む内容。1日を軽やかな気持ちで過ごせそうな楽曲ぞろい。また、ボーナス・トラックにはJR東海「会いにいこう」キャンペーンのテーマソング「会いにいこう」を収録。

PROFILE

ハナレグミ/永積 崇のソロユニット。1974年東京生まれ。97年にバンド、SUPER BUTTER DOG としてメジャー・デビュー。2002年よりハナレグミが始動。2024年10月24日より全国9箇所でのライブハウスツアー、12月には東京と神戸にてホールでのライブが決定!  

text:Takahisa Matsunaga
 
リンネル2024年12月号より
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