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松本まりかさん(40)美談にしたくない下積み時代「“遅咲き“だからこそ伝えたいことがある」

  • 2024.10.20

透明感溢れる美しさとキュートさが共存し、唯一無二の圧倒的な存在感を放つ女優の松本まりかさん。2018年に「あざとかわいい」でブレイクし、40歳を目前にしてゴールデン・プライム帯でドラマ初主演を果たした後も、輝きを増しながら快進撃を続けています。決して華々しい女優人生ではなかったと語る松本さんに、スポットライトを浴びるまでのこと、40歳を前に起こった心境の変化や恋愛観など、ありのままの人生について語っていただきました。

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松本まりかさんprofile

1984年生まれ。2000年NHKドラマ「六番目の小夜子」でデビュー。2018年のドラマ「ホリデイラブ」でブレイクし、大きな注目を集める。以降多くの舞台やドラマに出演し、2023年4月には「ミス・ターゲット」でゴールデン・プライム帯連続ドラマ初主演を果たす。現在出演中のテレビ東京系ドラマ「夫の家庭を壊すまで」、2024年5月より公開の映画「湖の女たち」でも主演を務めた。

このチャンスを掴めなかったら、応援してくれた人達に申し訳ないと思った

ドラマ「ホリデイラブ」に出演した2018年以降は、取り巻く環境がガラッと変わりました。業界にいた年数だけは長かったので、このチャンスをつかめなかったら、私はお世話になったたくさんの方に顔向けできないと感じて。今まで私を応援してくれた人達に申し訳ないし、そんな愚かなことはできないと思ったんです。

「とにかく今は知名度を上げる時だ」と覚悟を決めて、多くの番組に出演させていただき、忙殺される5年間を過ごしました。そんな目まぐるしい変化の中で、まだまだ発展途上の未熟な自分の言葉が、想像以上の影響力を持って広がり始めているという事実も知りました。「インタビュー記事を見て、心が救われました」と言われる度に、責任の大きい仕事なんだと痛感。だけど、急激な立場の変化に自分の気持ちが追いつかず、戸惑うことも多々ありましたね。

拭えなかった空虚感、39歳で巡り会えたドラマ主演が見える景色を変えてくれた

注目されるようになってからの5年間は、気持ちは置き去りのまま沢山の仕事をしていました。正直、”これが求めていた幸せなのかどうか”もわからず、心から笑えることも無かったんです。多忙な毎日を過ごしていても「幸せも感じられなければ、笑顔にもなれないんだ」と気づいてからは、「何かが足りない」という空虚感をずっと抱えていました。

そんな時、人生をもう一回見つめ直したい、本質を捉えてからスタートしたいと思ったタイミングで出会えたのが、ドラマ『ミス・ターゲット』。役者になって24年、40歳を目前にして初めて決まった、ゴールデン・プライム帯枠での主演でした。現場を統率できるわけでも、演技がずば抜けて上手なわけでもない。そんな私が主演を務めるのであれば、「誰よりもこの役に向き合っている」という自負を持つために努力するしかない。現場に集まっているメンバー全員が生き生きと、本当にやってよかったと思えるドラマにしたかった。だから撮影が始まるまでの数ヶ月、自分が捧げられる時間は全て演技の勉強に振り切りました。

役作りは”セリフの読解”で、台本の本質を読み解いていくこと。監督に意見を聞いたり、役者の友人にセリフ合わせに付き合ってもらったりしながら、「なぜこの人は、このタイミングでこんな発言をするんだろう?」と何度も討論しました。言葉の表層を拾うことはできますが、セリフの奥にある本当の想いや人物の心情を理解すると、前後のシーンの表情、間の取り方、役者同士の距離感などが全然違ってくるんです。今まで感性を頼りに芝居をしてきたので、それは甘えだったなと。1から勉強し直して、役を徹底的に掘り下げました。

そんな風に取り組んだら、すごく愛に溢れた現場になって、人を笑顔にする作品になったことを実感したんです。そして39年間生きてきて、初めて心から幸せを感じることができました。それまでは、愛とか夢とか、そういうことを斜に構えて捉えていたところもありましたが、「目の前の人を幸せにして、笑顔にしたい」と素直に思えるようになった。それは私にとって大きな変化でした。真っ向から作品に向き合い、経験の全てをつぎ込んで挑んだからこそ見えた景色だと思っています。

”遅咲き"だからこそ、下積み時代を美談にせず「時間をかけなくていいよ」と伝えたい

遅”咲き”、と言われたからには、「咲かなきゃ」と思っています。そして咲くからには美しく綺麗に、力強く咲きたいです。よく”下積み時代の苦労”について聞かれるのですが、苦労したという自覚はないんです。当然のことだと思っていたし、それを美談にしたいとは全く思わなくて。正直、もっと早く色々なことに気づいて花開いていたかったなと思うし、やっぱり20代で色々な役をできたほうがいいですよね。私はここに辿り着くまでに本当に時間がかかっちゃったけど、20代で売れていたら、あともう20年面白いことができた。でも、どんなに願っても20代には戻れないわけで。じゃあ私が人生でこんな風に時間をかけて、今ここに辿り着いた意味は何だろうと考えると、「時間をかける必要なんてないよ。自分が本当に生きたいと思う道を生きてほしい」って伝えることだなと。

私はずっと支えてもらってきた人生だったから、ここからは還元してお返しするフェーズ。影響力のある立場になってしまった以上、良い影響を与える人でありたい。そして自己研鑽を続けながら、24年かけて築いたものを多くの人に伝えていきたいと思っています。もしその言葉でハッとしたり何か気づきがあるなら、早く自分の人生を豊かにしてほしいし、目的や使命感をもって心から幸せを感じてほしいんです。「私の人生、こうやって生きていきたい」と強い意思を持って歩める人が1人でも増えたら、これまでの24年間は無駄じゃなかったと思えるような気がします。

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撮影/古水良(cheek one) ヘア・メーク/佐々木七海(cheek one) スタイリスト/後藤仁子 取材・文/渡部夕子

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