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『アリス・イン・ワンダーランド』のトリビア──ミア・ワシコウスカやアン・ハサウェイのキャスティング秘話、ジョニー・デップの役作りetc.

  • 2024.10.18

アン・ハサウェイは当初、アリス役をオファーされていた

ALICE IN WONDERLAND - Johnny Depp as the Mad Hatter, Mia Wasikowska as Alice, Anne Hathaway

ディズニーで『不思議の国のアリス』の実写映画化の企画が持ち上がったとき、ティム・バートン監督よりも先にオファーを受けたのはアン・ハサウェイだった。それも主人公アリス役の依頼だったが、出世作である『プリティ・プリンセス』(2001)などで似たような役を何度も演じていたこともあり、一度は出演を断った。だが、バートン監督と仕事をしたい気持ちは抑えがたく、ハサウェイはワンダーランドの白の女王役を喜んで引き受け、すべてのシーンを約2週間で撮り終えた。

ALICE IN WONDERLAND - Anne Hathaway as the White Queen, 2010.

ハサウェイは白の女王について「パンクロックのヴィーガン平和主義者」と表現し、ブロンディのデビー・ハリーと往年のハリウッドスター、グレタ・ガルボをインスピレーションにしたという。ちなみにバートン監督がキャラクターのイメージとして思い描いていたのは、イギリスの料理研究家ナイジェラ・ローソンだそう。

ミア・ワシコウスカの大抜擢

ALICE IN WONDERLAND - Mia Wasikowska as Alice, 2010.

19歳のアリス役に抜擢されたのは、当時まだハリウッドでは無名だったミア・ワシコウスカだ。オーストラリア出身で10代から俳優として活動していた彼女は、まずロンドンにオーディションテープを送り、その後にロサンゼルス、さらにロンドンで3回のオーディションを経て出演が決まった。一方で、バートン監督のファーストチョイスは故カート・コバーンの一人娘フランシス・ビーンだったそうだ。だが、彼女は学業を優先して辞退したと母のコートニー・ラブが「デイリー・メール」のインタビューで明かしている。

ALICE IN WONDERLAND - director Tim Burton, Mia Wasikowska as Alice, on set, 2010.

熱心にアピールしていたリンジー・ローハンをはじめ、ジェニファー・ローレンスアマンダ・サイフリッドカーラ・デルヴィーニュらもオーディションを受けていたが、バートン監督は決め手となったのは、ワシコウスカの「オールドソウル(年齢を超えた賢さや洞察力のある人物)」だと語っている。「観客は彼女の目を通してすべてを目撃することになるので、それを繊細に表現できる人物が必要だった」という。監督の期待に応え、ミアは当時20歳の若さながら超大作の主人公というプレッシャーをものともせず、堂々と演じている。

マッドハッターのインスピレーション

ALICE IN WONDERLAND - Johnny Depp as The Mad Hatter, 2010.

ワンダーランドに再び迷い込んだアリスは、かつてお茶会に同席したマッドハッターと再会する。演じるのはバートンの盟友で、本作が7度目のコラボレーションとなったジョニー・デップだ。あらゆるものからインスピレーションを受けて入念な役作りをする彼は、今作もバートン監督と事前にスケッチやアイデアなどをやりとりしながら、いつも以上にカラフルかつ独創的なマッドハッター像を作り上げていった。

服装、肌、髪、性格、言葉のアクセントは彼の感情を反映して変化する。デップはマッドハッターについて「感情がとても顔に出やすくて、ムードリングに似ている」とインタビューで語っている。また、原作中の「僕はMで始まるものを調査している」というマッドハッターの言葉に興味を引かれて調べた結果、19世紀の帽子職人は制作工程で使用する水銀(mercury)中毒に陥ったという事実を知り、オレンジ色の髪や奇妙な行動の原因は水銀中毒と中毒による神経障害と解釈して演じた。

そんなデップ色の強いマッドハッターは、イギリス英語とスコットランドのグラスゴー訛りを話す。前者は明るく穏やかな側面、後者はより暗く危険な側面を表すものとして1988年から90年代に放送したコメディ・シリーズ「Rab C. Nesbitt」(原題)を参考にしたそうだ。

ヘレナ・ボナム=カーター演じる赤の女王は、2つのキャラクターをマッシュアップ

ALICE IN WONDERLAND - Helena Bonham Carter as The Red Queen, 2010.

ワンダーランドを恐怖で支配するヴィラン、赤の女王。本作では、気に入らない者をすぐ打ち首にする『不思議の国のアリス』のハートの女王に『鏡の国のアリス』に登場する白の女王の姉、赤の女王を組み合わせて1つのキャラクターになっている。演じたのは当時、バートン監督のパートナーだったヘレナ・ボナム=カーターだ。

役のインスピレーションは、なんと2007年に生まれた監督との第2子の娘だという。赤の女王はCGIで極端に頭を大きくした姿になっている。その容姿やわがまま放題の性格について、ヘレナは「赤の女王はまるで赤ん坊のよう。大きな頭で暴君だから」と説明している。

バートン監督にとって初のグリーンバック撮影

ALICE IN WONDERLAND - Mia Wasikowska as Alice, 2010.

意外に思えるが、CGIを多用した本作はバートン監督が初めてグリーンスクリーンを使って撮影した作品だ。本編の90%を占めるが、長時間グリーンの空間で仕事をしたキャスト、スタッフは吐き気を催すなど健康状態に問題が生じ、かなり厳しいものだったという。撮影中に何か困難が生じることはむしろ好きだというデップでさえ、グリーンバックの撮影については「疲れる」「1日の終わりには頭が真っ白になっていた」と振り返っている。そんな過酷な環境を監督は、ラベンダー色のレンズの眼鏡をかけて、40日間の撮影を乗り切ったそうだ。

美術と衣装でオスカー受賞

ALICE IN WONDERLAND, 2010.

本作は、第83回アカデミー賞で美術賞と衣裳デザイン賞を受賞している。美術のロバート・ストロンバーグは、ジェームズ・キャメロン監督の『アバター』(2009)に参加し、CGIを多用する製作現場に慣れていた。プリプロダクションの最初の4カ月間は、バートンが購入したアーサー・ラッカム(1907年出版の原作本の挿絵画家)の家というアイデアを交換し合ったという。所縁のある特別な場所に触発されたユニークな発想の数々は、採用されなかった案の数が1万を超えるほどだったそう。赤の女王と白の女王それぞれの城は、ウォルト・ディズニー・ワールドにあるシンデレラ城に似せたデザインにしてある。

また、アリスの体が伸び縮みするシーンでは、ミアの体を小さく見せるための広大なセットと大きく見せるためのミニチュア版を制作するなど、バートン監督のヴィジョンを忠実に再現した才能はオスカー受賞という形で評価され、その後は自身も『マレフィセント』(2014)で監督デビューした。

ALICE IN WONDERLAND - Mia Wasikowska, Michael Sheen, Johnny Depp, Alan Rickman, Matt Lucas, Tweedledum, Anne Hathaway, Helena Bonham Carter and Stephen Fry, 2010

衣裳を手がけたのは、本作で3度目のオスカー受賞を果たしたコリーン・アトウッド。映画の冒頭でアリス役のミアが着ているブルーのドレスは、1951年のアニメ版を想起させる。アリスを「非常に現代的なキャラクター」と解釈した彼女は、大きく膨らませたフープスカートやコルセットを敢えて避けた。コルセットやストッキングを身につけないアリスが、母親と口論になる場面もある。アトウッドは、「WWD」の取材で「彼女は自分の人生を違った見方で捉えていた女の子であり、服装や服に対する考え方が少し自由だったということ以外は何も伝えたくなかった」というのが理由だと明かしている。

画期的だったのは、アリスの体の伸縮に着衣は連動しないという発想だ。アリス自身が工夫して何重にも巻きつけたリボンでアンダースカートを持ち上げたり、マッドハッターに作ってもらった小さなドレスを着たり、赤の女王からは黒と白、赤のドレスを与えられる。マッドハッターについては、デップと綿密な打ち合わせを重ねたという。1860年代の典型的な帽子職人のスタイルをもとに、糸巻きで作った弾帯と針山で作った指輪など、仕事道具をモチーフにしているそうだ。

Text: Yuki Tominaga

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